25.ほしがき   干柿

 

 市田,甲州百目,平核無,刀根早生,三社などの渋柿を原料にして、果皮をむいてイオウで燻蒸(くんじょう)をして乾燥させる。乾燥の仕方には、つるしたままの自然乾燥と重油などを燃やす火力乾燥(天候に関係なく安定した生産ができ、製品の仕上りがきれいで衛生的)があるが、8割方が自然乾燥である。


         長野産 市田柿(パック入り)                  長野産 市田柿(化粧箱)


               福島産 あんぽ柿     山形産 蔵王つるし      宮城産 ころ柿

 作り方や産地により、あんぽ柿…山梨,福島,宮城,つるし柿…山形,ころ柿…長野,市田柿…長野など様々の名前が付いている。乾燥の度合いによって、大きく次の2種類に分かれる。

 

①あんぽ柿…水分の含有が50%前後,皮をむいてからの乾燥日数が17日間くらいで、形,色とも元の状態を保ちふっくらと水分を多く含んでいる。それゆえに品傷みも早く、日持ちも悪い。

 

 ②ころ柿(枯露柿)…水分の含有が2530%前後,皮をむいてからの乾燥日数が2535日間くらいで、昔は転がし柿といった。これはすだれやむしろの上で、ころころ転がしながら形を整えて作ったもので、これが転じてころ柿となった。このとき、白い粉を付けないようによくもんで紅色のまま仕上げたものを紅枯露(べにころ)柿という。乾燥のあとは、果肉の硬さや水分のムラをなくす為に手でもんで、再び乾燥をすると出来上がりとなる。市田柿もこの仲間。

 

  干し柿の白粉は、果肉の中からしみ出した果汁が乾いて中のブドウ糖が析出したもの。食物繊維が100g中,14gと多いことから優れた機能性食品でもある。 人手がかかることから生産は横ばい状態であったのが、 東日本大震災による原発事故の影響で福島産が出荷自粛 をしたために生産量が半減をしてしまった。その中で、 たねなし柿の主産地であるの和歌山が共同の加工場を新設して出荷を始めている。ほかに中国からも輸入されている。 

 2021年の生産量は5,891t、品種別生産量構成比は、①市田50.5%,②甲州百目15.4%,③平核無9.7%,④刀根早生6.0%,⑤三社4.4%,⑥愛宕3.3%、そして大和百目,西条,四つ溝,横野,早生西条,勝平,紅柿,武田…と続く。5年前の2016年と比べたときに生産量が増加しているのは、刀根早生,西条などで、その他は減少している。産地別生産量構成比は、①長野50.5%,②福島13.4%,③山梨9.4%,④和歌山6.7%,⑤愛媛5.7%,⑥富山4.5%、そして山形,新潟,島根,奈良,鳥取,石川…と続く。

 

福島と干し柿

 

 2011.3.11 三陸沖を震源に東日本大震災が発生、国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した。津波と火災で多くの被災者が出ると共に、東京電力福島原子力発電所では原子炉が緊急停止をしたが、冷却装置がすべて稼働しない状態になって12日に爆発が発生、放射性物質(ヨウ素131,セシウム137など)が漏洩(ろうえい)して20km圏内は避難指示が出た。21日には食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が見つかり、福島,茨城,栃木,群馬各県のホウレンソウ,カキナ、福島県の原乳に対する出荷停止を、さらに23日、福島県のコマツナ,キャベツ,ブロッコリー,カリフラワー,カブなどの出荷停止を指示した。

2012・2013年産のあんぽ柿と干し柿について、福島県は国の規制値(1Kg当たり/100ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された為、県内6市町(福島,二本松,伊達,桑折,国見,川俣)に対し加工を自粛するよう要請した。生の状態では全て規制値を下回ったが、加工後には、あんぽ柿で規制値の約1.5~8.9倍、干し柿で約2.8~14.5倍の濃度になった。この影響を受けて2010年までトップの生産量を誇っていた福島県が、2011年では43.5tとほぼゼロに近い状態となってしまった。我が国全体の生産量も2006年の9,700tから2011年は4,892tと50.4%と半分まで減少。2013年12月より、放射性物質の検査態勢が整ったことなどを受けて一部での出荷が再開、そして、2016年からは全ての地域からの出荷が可能になった。今後の動きを注視したい。

 

燻蒸(くんじょう)処理

 

 硫黄(いおう)で約15分の燻蒸をすることによって、発生する亜硫酸ガスが果実表面の水分に吸収されて、強い還元性を現わし、それによって果色の黒変防止,カビの繁殖を抑制,乾燥の抑制などの効果がもたらされる。これによって果肉中に残留する亜硫酸の量は、食品衛生法で30ppm以下と定められている。最近、福島県では無添加あんぽ柿、硫黄燻蒸をやめて90~100℃の熱湯浸漬を20~30秒行うことによって、表面に付いているカビ菌などの殺菌を行い、さらに、遠赤外線乾燥によって食味と色調の改善を図っている。