20.ビ ワ 枇杷

 

 中国および日本が原産でバラ科、日本の野生種は小果なので現在の栽培種は大果の中国原産である。びわは、色,形,味ともにいかにも東洋的風趣に富み、果実が楽器の琵琶(びわ)に似ているとか、葉が琵琶を連想させるところから、枇杷と呼ばれるようになったといわれる。樹は耐寒力は柑橘類よりはるかに強いが、厳冬の11~2月に花を開くので幼果が低温にあって凍害を受けやすく、冬の気温の厳しい地方(-3℃以下に下がらないこと)では、生産が安定しない。また、軟らかく傷みやすいことから、袋かけの作業が必要でほかにも摘果,出荷など多くの労力を必要とする。

   2023年の栽培面積は840ha,収穫量は2,310t、収穫量構成比は、①長崎24.4%,②千葉20.3%,③香川7.3%,④鹿児島7.3%、そして愛媛,兵庫,大分…と続く。2021年の品種別栽培面積構成比は、①茂木43.0%,②長崎早生15.0%,③田中13.1%,④なつたより11.8%,⑤大房11.6%、そして瑞穂,富房,涼風,山川…と続く。5年前の2016年と比べたときに栽培面積は70.0%と減少、そのなかではなつたよりだけが増えている。

選び方と保存  橙黄色でしなびがなくうぶ毛がしっかりとついているもの、保存は涼しい所へ、冷蔵には弱くヘタの部分が黒ずんでくる。

旬  5~6月。

 

(1) 長崎早生

 

 長崎県果樹試験場で昭和28年に、本田早生の花粉を茂木に交配して育成、昭和49年に命名された。果実の大きさは40~50gと茂木よりやや大きく、果皮の赤みも強い。糖度は12度くらい,産地は鹿児島,長崎,大分,熊本,愛媛、熟期は5月下旬で茂木より10日~2週間早い,ハウスでの利用が多い。

 

(2) 茂木(もぎ)

 

 江戸時代末期の天保,弘化(1830~1847年)のころに、長崎県出島町の唐人屋敷ヘ奉公にいっていた茂木町の三浦シヲという女性が、中国産のびわの種を持ち帰り、自宅ヘまいたのが初め。形は細長く、果皮は花粉でおおわれて指の先で容易にはぎとれる程薄いが、橙黄色の果肉は厚く果汁が多く酸味が少なく、甘味が多い。開花は11月中旬から始まり、盛りは12月下~1月上旬で、2月上旬には終る。

 果実の大きさは40g程度,糖度は11度,現在でも茂木町を中心に長崎半島が主産地で、2021年の栽培面積は329haとびわ全体の43.0%を占めてトップとなっている。産地別栽培面積は①長崎60.1%,②香川12.6%,③和歌山10.6%、そして鹿児島,大分,愛媛…と続く。熟期は5月下~6月上旬。

 

(3) なつたより

 

 長崎県果樹試験場で長崎早生(本田早生×茂木)に大果品種の福原早生(瑞穂×中国種)を交配して2009年に品種登録された。名前はビワが初夏の訪れを告げる果物であることをイメージして命名された。果実の大きさは60~70gと大きく果皮色は薄めの橙黄で、肉質が柔らかく糖度は12度くらいと食味がよい。産地は長崎、熟期は5月下~6月上旬。

 

 

(4) 大房

 

 農林省園芸試験場興津支場で大正6年に、田中に楠を交配して育成、昭和42年に命名された。千葉県下での適応性が認められ、早出し用として栽培されている。果実は大きく60~80gにもなり、果肉は緻密で締まって輸送性がよい,ただ硬過ぎるとも言われる。糖度は11~12度とやや淡泊である。産地は千葉、熟期は5月下~6月上旬。

 

 

(5) 田中

 

 田中芳男男爵が明治12年に、長崎で食べたびわの大きな種を持ち帰り自宅で育てたのが始まり。開花は盛りが12月下~1月上旬、果実の大きさは60~70gと茂木種よりひとまわり大きく、円倒卵形でずんぐりとして、果皮は濃橙黄色で果粉でおおわれている。果肉は果汁が多く,柔らかく食味がよいが、早採りをすると酸が多く味が悪い。糖度は12度くらい,産地は千葉,香川,愛媛,兵庫、熟期は晩生(ばんせい)で6月中~下旬。

 

 

(6) その他

 

①希房(きぼう)…千葉県暖地園芸試験場で「種なしビワ」を目指して1985年に、田中と長崎早生を交配して育成、2006年に登録された。果皮は橙黄色でやや赤味を帯び、果重は70g程度とやや軽いが、果心部に直径1cm程度の空隙(くうげき)が残るのみで種のない分だけ果肉が多い。肉質が柔らかく糖度は11,5度、食味はよい。温室栽培専用の品種として育成され、種なしにするために植物生長調整剤,ジベレリン200ppmの浸漬処理を2回する必要があり、栽培労力が増え、生産コストが増加する。産地は千葉、熟期は5月下旬。