6. アスパラガス Asparagus

 

 南ヨーロッパ・地中海東部原産で、ユリ科の多年草。まつばうど,西洋うどともいう。ヨーロッパでは紀元前から栽培され、わが国へは江戸時代の天明年間(1781~88年)に観賞用として渡来したが、本格的な栽培が始まったのは、明治時代に気候風土のあった北海道に導入されてからである。缶詰用のホワイトアスパラガスが栽培の中心であったが、1970年代からグリーンアスパラガスの消費が増大している。北海道では昭和50年で5,000haの栽培面積があり全国一の生産を誇っていたが、その後の斑点病,土壌病害そして円高と輸送技術の発達による輸入物の増加によって大幅に減少、2021年には1,060haとなってしまった。

 

 萌芽(ほうが)した若い茎葉を土寄せして軟白したものを、ホワイトアスパラガスといい、缶詰めなど加工用に、また、軟白しない自然の状態で緑色に色付いたものを、グリーンアスパラガスといい、生食向けに利用される。毎年根株は地中に残り前の年に地下部に蓄えられた養分によって、翌年の春から初夏にかけて萌芽する。冷涼な気候を好み寒さに強く、生育適温は16~20℃の比較的低温部にあり、5℃前後から萌芽を始め10℃を越えると一斉に萌芽をするようになり、1日に5~10㎝も伸び収穫量が増大する。低温でゆっくり伸びたときが、味がよく、1本の中で一番甘味が強いのは穂先で、次が基部,中央部の順である。露地物の穂先はちょっと曲がっている、これは風が吹くからで風が吹く方向は寒いので伸びが悪い為である。これに対して、風の吹かないハウス物はまっすぐである。冬の寒い地方は根株がよく休眠できるので春の萌芽がよく、よいものができる。雌雄異株で、雄株の方が早生(わせ)性で多収でよいものができるが、栽培初期から雄株のみを選んで植えることは難しい。播種(はしゅ)後、2年目から20年近く収穫が続けられる。

 

 栄養的にはグリーンの方がすぐれ、ビタミンA,B1,B2,C,ニコチン酸、そして抗酸化作用(発ガン抑制)のあるアスコルビン酸,アスパラギン酸,ケルセチン,ルチンなどを多く含んでいる。ホワイトはビタミンA,ニコチン酸を含まずB1,B2,Cの量も少ない。アスパラは収穫後、素早く処理しないと組織が繊維に変化して、俗(ぞく)に歯がたたなくなり栄養価が下がる。品種はガインリム,スーパーウェルカム,ウェルカム,ラスノーブル,グリーンタワー,バイトル…。2022年の収穫量は26,000t、構成比は、①北海道13.5%,②熊本8.9%,③佐賀8.7%,④山形7.5%、そして福岡,栃木,長崎,長野,福島,秋田…と続く。

 

選び方と保存  濃い緑色で、穂先が締まって太く茎の部分にはりのあるもの。保存はポリ袋に入れて立てたまま冷暗所へ、またさっと固めにゆでて冷凍保存も可能。

旬  国産の出回り始める3~8月。

*世界の生産量は882,4万トン、1位は中国の768.4万トンで全体の87.1%を占める。上記のグラフには、ケタが違うので入れていません。ちなみに日本は、82.6万トンです。(資料:GLOBAL NOTE 出典:FAO国連食糧農業機関

 

(パープル)アスパラガス

 

 最近出回るようになったのが紫色品種のアスパラガスで、これはポリフェノールの一種であるアントシアニン色素が多く含まれている。グリーンアスパラガスより糖度が高く、さらにやわらかいのが大きな特徴。ただし、加熱すると紫色は失われグリーンアスパラガスと変わらない外見になるので、生のままサラダにするか焼くか、電子レンジで調理をすると色彩が生かせる。

立茎(りっけい)栽培

 

 ふつうの露地栽培では60日間前後の収穫後は茎をそのまま伸ばして翌年の株を養成するが、立茎栽培では、収穫後に株養成をして伸びてきた茎(立茎)の一部を収穫するもの。親木の日陰で育つので、淡い緑色が目印となる。この栽培方法は1989年に佐賀県の農家が、春芽収穫後に茎葉の過繁茂防止も兼ねて出てきた夏芽を間引いて収穫したところ、翌年の春の収量が減らなかったことから始まったもので、収量が飛躍的に伸びることから今では各地で行われている。農林水産省の野菜生産出荷統計2003年では、北海道の露地物の平均収量が230kg/10aに対して佐賀県は2,220kg/10aと発表されている。2022年では北海道も立茎栽培が増えて318kg/10aに対して、熊本県が2,320kg/10a,福岡県が2,100kg/10aと発表されている。

ホワイトアスパラの食べ方

 

 特有の甘さとほろ苦い風味が特徴で、皮を厚めにしっかり剥(む)く。それから鍋に水、塩を入れて沸騰させ、そのときに剥いた皮を入れてアスパラの香りのついたゆで汁を作る。そこにアスパラガスを固い根から入れて約10分ゆでる。火を止めてそのまましばらくおき、余熱で中心部まで火を通して、できあがり。それからゆで汁にはアスパラに含まれるミネラルやビタミン、疲労回復に効果があるアスパラギン酸まで溶け出しているので、スライスベーコン,キャベツ,レタス,缶詰のコーンなどの食材を入れてひと煮立ちさせ、スープにするとおいしい。

 

アスパラギン酸

 

 アスパラギン酸はタンパク質構成アミノ酸のひとつで、元気を維持するための大切な栄養素であるカルシウムやマグネシウム等のミネラル運搬作用があり、体液バランス(電解質平衡)を保持し、代謝を活発化・疲労回復へとつながっていく。そして尿として排泄されるアンモニアは、体内で循環系に入ると毒性を発揮するが、アスパラギン酸はこのアンモニアを体外に排泄し、中枢神経系を守る働きを助ける効果がある。多く含まれる食品としてアスパラガス,のり,小麦胚芽,大豆,マグロ,うなぎなど。

 

アレロパシー  Alleiopathy 他感作用

 

 植物が特殊な化学物質(アレロパシー物質)を出して、同種の植物が生育しないようにしたり、逆に生育を助けたり、また、他の植物が生育しないようにすること。アレロパシー物質を出す植物としては、セイタカアワダチソウ,ヒマワリ,ヒガンバナなどがよく知られている。最近、アスパラガス自体が生産する物質にアレロパシー作用があることがわかってきた。この物質はアスパラガス自体と土壌中にも分泌されて、同じ場所に再度栽培すると生育が劣る。このため、改植するときは前回のうね間にすると軽減される。

 *童謡詩人,金子みすゞがヒガンバナのことを読んだ詩の一部分です。

地面のしたに すむひとが、線香花火をたきました。あかい あかい ひがんばな。