18.エダマメ 枝豆 Green soy beans

 

   東アジアが原産でマメ科、東アジアの複数の地域で野生ツルマメからの栽培化が進行し、日本も起源地のひとつである(2008~2010年の考古学的研究による)。縄文時代中期の紀元前4000年後半より日本列島での栽培が見られることがわかっている。栽培が伸びたのは各地でしょうゆやみそ造りが普及し始めた、鎌倉から室町時代にかけてです。大豆の未熟果を野菜として用いる場合に枝豆といい、これが庶民に広まったのはさらに遅く江戸時代である。旧暦の9月13日の名月にススキに添えて供えたことから「月見豆」の別名もあり、本来の旬(しゅん)は秋であった。戦後、とくに昭和40年前後より大都市での消費が増大している。

 

   栽培には温暖で多湿な条件を好み、生育適温は25~30℃、比較的低温に耐えるが生育のためには15℃以上が必要である。大豆は本来、秋になって日が短くなって始めて、花を着け実がなるが、枝豆には夏になって、温度が高くなると花をつける品種を栽培する。品種には奥原早生,白鳥,鶴の子,サッポロミドリなどで、外観を重視する消費動向からさやが鮮緑に見える表面の毛が短く白色のものの需要が伸びている。新潟県特産の「茶まめ」は、マメの薄皮が薄茶色でふくよかで味がよい。山形県の「だだちゃ豆」は、マメが茶色でしわがあり甘味と香りが強い。枝豆の消費は盛夏の7~9月が圧倒的に多いが、一部の根強い都市消費に支えられ、周年栽培が行われている。

 

   新鮮な姿で、ちょっと塩気があってコクのある枝豆の味は、ビールのツマに最適でおやつにもよい。鮮やかな緑とおいしくゆでるにはサヤを塩でもみたっぷりのお湯でゆでて、うちわであおいで余熱をとること。塩はすぐにサヤから移るので控えめにするのがよい。水分が少なくほかの野菜類より栄養価が高い、「畑の肉」といわれるのは栄養成分が動物性たんぱく質に似ていることから。良質の蛋白質を多量に含み、ビタミンA,B1,C,カルシウムも豊富である。

  

   中国を中心とした冷凍物の輸入は多く、2001年では国内収穫量が77,500tに対して、輸入・冷凍物が77,199tと国内生産の49.9%を占めた。その後2002年の中国産冷凍ほうれん草の残留農薬問題、2006年には残留農薬への規制・ポジティブリスト制度の影響、2007年の12月に発生した中国製冷凍ギョーザの中毒事件により減少をしていたが、2009年以後は微増、そして微減に転じている。2022年の収穫量は65,200t、構成比は、①北海道13.5%,②群馬11.0%,③千葉8.9%,④埼玉8.2%,⑤山形7.6%、そして秋田,新潟,神奈川,兵庫…と続く。

 

選び方と保存   鮮やかな緑色で変色がなく、実のよく入っているもの。枝つきは枝と枝の間隔が短くてサヤがたくさんついているもの。保存は冷蔵庫へ、ゆでたものは冷凍保存も可能。

旬   7~9月。

*2022年の国内収穫量が65,200t,輸入(冷凍)が65,716tと全体の中では輸入が50.2%と半分を占めている。輸入物(冷凍)の構成比は、台湾37.0%,中国30.0%,タイ 28.3%と続く。

 

茶豆

 

   外側の産毛(うぶげ)と内皮が薄茶色なことから名前が付いたもので、ふつうの枝豆よりも味が濃く、独特の香りがあるのが特徴で、二大産地は山形県鶴岡市のだだちゃ豆と新潟県新潟市の黒崎茶豆である。だだちゃの由来は、庄内地方では「主人,おやじ,お父さん」の意味がある。1996年ころから首都圏を中心に豊かな風味と味が口コミで広がり消費が増加している。

 

大豆イソフラボン

 

   女性は更年期になって女性ホルモンがなくなると、血圧やコレステロール値があがる。ところが豆腐や納豆などの大豆製品を食べている地域ではあまりあがらない。これは大豆のイソフラボンが女性ホルモンの代わりに働くことで、血管系の病気(心筋梗塞(こうそく),高血圧,動脈効果,脳卒中…)から守ってくれると考えられる。ほかにもイソフラボンは骨からカルシウムが溶け出すのを防いで骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を予防したり、男性特有の前立腺ガンの軽減作用を持つ。

 

遺伝子組み換えと大豆

 

   生物は細胞からできており、その細胞の核の中に染色体があり、この染色体に遺伝をつかさどるDNAという物質が含まれている。遺伝子組み換えとは、ある生物がもつ有用な遺伝子をほかの生物のDNA配列の中に組み入れて新たな性質を加える技術で、これにより品種改良の短縮とその可能性を大幅に高めることが期待されている。さらには収穫量を大幅に増やすことから世界の食糧危機を克服するとして注目をされている。

 

   1994年に世界で初めての遺伝子組み換え食品はアメリカで誕生したフレーバー・セーバー・トマトと呼ばれるもので、実をやわらかくする働きを抑えることで完熟状態でも日持ちがよいのが特徴。一番多く栽培されているのは種子や農薬を作っているアメリカのメーカー、モンサント社が1996年に商品化した、除草剤(*注)がかかっても枯れない性質を導入した大豆で、この開発によって、農家を悩ませてきた害虫退治や雑草取りによる手間やコストが減って、使用する農薬も減り、収穫量が増えるようになり、栽培面積は年々増加して2019年には世界の大豆の作付面積の74%にもなっている。ほかにも害虫に強い性質や除草剤の影響を受けない性質を導入したトウモロコシ,ナタネ,ジャガイモまた、健康によいオレイン酸を多く含む大豆やβ(ベーター)カロテンを多く含むコメなども開発されている。

 

(*注)モンサント社(現バイエル)の除草剤「ラウンドアップ」の影響を受けないよう遺伝子操作を施したもので、ラウンドアップの成分のグリホサートは安全性が高く、土に落ちても微生物で分解される。

(*) 2019年における主要作物の総栽培面積に対する遺伝子組み換え品種の割合は、トウモロコシで31%,ナタネで27%,ワタで79%となっている。(バイテク情報普及会)

 

 

大豆

 

   ヨーロッパへ伝えたのは1712年にオランダの植物学者ケンペルで、ドイツでは大豆が肉に匹敵する量のたんぱく質を含んでいることから「畑の肉」と呼ばれ各地で試作をされたが、大豆の発育に不可欠な根粒菌がヨーロッパの土には存在しなかった為に、当時は定着しなかった。今では根粒菌を持込む技術が確立し、幅広い地域で栽培が可能となった。米国には1829年に伝わったが、本格的な栽培は1800年代後半に家畜飼料用として始まった。2022年の世界の生産量は3億4,886万tで、ブラジル,アメリカ,アルゼンチンの3国で80.5%を占めている。搾油用として大豆油,家畜の飼料用が中心で大豆を食べる食習慣があるのは,アジアの日本や中国あたりと少ない。肉や卵は必須アミノ酸をバランスよく含む栄養価の高い良質のたんぱく質だが、大豆のたんぱく質もこれに負けない良質のうえに消化吸収率は、納豆で91%、豆腐では95%ととても効率がよい。加えて大豆は、脂質の改善にも効果があり、体内にコレステロールを運ぶ悪玉のLDLを抑え、体内のコレステロールを回収する善玉のHDLを増やす働きをする。

 

根粒菌

 

   マメ科植物(インゲン,エンドウ,ソラマメ,ダイズなど、野草ではクローバー,レンゲソウなど)の根にこぶのような根粒を形成し、この中には根粒菌(こんりゅうきん)という細菌がいて、宿主のマメ科植物から栄養をもらうと共に、根粒菌は空気中の窒素をアンモニア態窒素に変換して、宿主へと供給するという共生関係が成立している。こうしたことから地力の低いところでも栽培が出来る上に、栽培後は根が残ることから窒素肥料をやらなくてもよく育つ。ただし、インゲンは根粒菌がつきにくいので窒素肥料を与えるとともに、マメ科を栽培していない畑や造成地では根粒菌が少ないのでやはり窒素肥料が必要である。

 

ジャックと豆の木 イギリスの民話

 

 ジャックは母親にいわれて牛を売りにいくが、途中であった男の豆と牛を交換してしまう。家に帰ると怒った母親は豆を庭に捨てるが、次の朝にその豆は天まで伸びていた。ジャックは豆の木を登り雲の上にある巨人の城につくと、金と銀の入った袋,金の卵を産む鶏,魔法のハープを盗んで帰る。追ってきた巨人は急いで地上に戻ったジャックが豆の木を斧で切ったので、落ちて死んでしまう。金持ちになったジャックと母親は幸せにくらす。

 

 「ジャックと豆の木」という観葉植物が人気だが、マメ科の常緑高木で樹高40m、一般名はモートン ベイ チェスナッツ,ブラックビーン,オーストラリアビーンズなどと呼ばれ、原産地はオーストラリアで非耐寒性。葉は光沢があり樹皮は粗く内側に香りがあり、秋には直径5cmほどの種子が3個以上はいった莢が実る。種子は生では有毒だが、オーストラリアのアボリジニたちは、水に浸してから煎るか、すりつぶすかして食べる。この種子に含まれるカスタノパーミンという物質が、エイズに効果があると言われている。