19. エノキタケ   榎茸

 

 晩秋、エノキ,ケヤキなど広葉樹の枯れ木に寄生的に発生するキシメジ科のきのこで、自然のものは高さ10㎝,カサの径5㎝位で株状に群生をする。なめこほどではないが、カサの表面は粘性があり、別名ナメタケ,ユキノシタとも呼ばれる。中央部は褐色,周辺部は黄色,ヒダは白色で、茎は細く黒いビロード状の毛が特長となっている。

 

 えのきたけの栽培には、長野県更埴(こうしょく)市の教員,長谷川五作氏が昭和の始めに研究を開始、昭和6年にびん栽培を考案したが戦時中だったため伸びなかった。これはオガクズと米ぬかの培養基(菌床/きんしょう)を、びんに積めて種菌を植え、適温,適湿下で生育させるもの。戦後、地下壕暗室を利用して栽培を開始、昭和28年に23tを出荷、積雪の中野,飯山地方に普及した。今ではしいたけを抜いてきのこの中では一番である。市販のえのきたけは施設園芸で、人工的に栽培してモヤシにしたもので、色は淡く茎はもやしのように伸びる。長野県が主産地で、各種の鍋物,吸い物,茶碗蒸し,お浸し,和え物,酢の物,天ぷら,すき焼きなどに料理される。

 

 栄養的には、ビタミンB1,B2,ニコチン酸が多い。蛋白質はえのきたけ特有の風味成分として含まれ、グルタミン酸,アラニン,ロイシンなどである。またグアニル酸(しいたけにとくに多い)も含まれ、これはグルタミン酸(昆布のうま味)と合わさって、さらに強いうま味を出す。2022年の収穫量は126,321t、構成比は、①長野59.3%,②新潟15.0%、そして福岡,大分,熊本,宮城,山形…と続く。(シイタケのところにキノコの年間収穫量のグラフがあります)。

 

選び方と保存 栽培物はカサの大きさがよく揃い軸部のしっかりしたもの、白い可食部が長いもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬 10~3月。

韓国産エノキタケとリステリア菌

 

 2020.3.11 米カリフォルニア州やハワイ州で、リステリア菌感染が原因で4人が死亡,30人が入院した。リステリア菌に汚染された韓国産のエノキタケを食べたことが原因と思われる。米疫病対策センター(CDC)によれば、4人の死亡はカリフォルニア,ハワイ,ニュージャージーの3州で報告された。症状は、頭痛,首の凝り,意識の混乱,平衡感覚の喪失,発熱,筋肉痛,けいれんなど。妊婦の場合は流産や死産,早産につながったり、新生児の命にかかわる感染症を引き起こすこともある。症状は一般的に、原因となった食品を食べてから1~4週間後に表れる。この感染症は抗生剤で治療できる。自主回収の対象となるエノキタケは「韓国産」の表示があり、緑色のラベルが付いたビニールで包装されている。

 

*リステリアによる食中毒…リステリアは、他の一般的な食中毒菌と同様に加熱により死滅するが、4℃以下の低温や、12%食塩濃度下でも増殖できる点が特徴。