27. カイワレダイコン 貝割れ大根

 

   わが国でアブラナ科のダイコンの種子を密にまいて、軟白栽培したもの。ふた葉が開いたころが、ちょうど貝を割ったように見えるところからカイワレ,貝割れ菜とも呼ばれる。昭和53年に水耕栽培したものを、パックに入れて大量販売されるようになって急速に広まった。それ以前は、排水のよい砂地で密植栽培したもので、料理屋などの業務用が中心であった。シャキシャキした歯ごたえと独特の辛味を生かしてサラダ,料理の付け合わせ,めん類の薬味に、また吸い物に浮かした緑と白のカイワレダイコンは新鮮なさわやかさがある。

 

選び方と保存   葉が新鮮で緑色が濃く茎の長さ,太さが一定なもの。古くなると葉先に黒い斑点がでたり黄変する。保存はパックのまま冷蔵庫へ。

旬   一年中。

 

O-157 (病原性大腸菌)

 

   1996年7月に大阪でO(オー)-157病原性大腸菌による集団食中毒が発生、患者数は9,000人を超え児童3人が死亡し社会的に大きな影響を与えた。調査の結果、「カイワレ大根が原因である可能性は否定できない」との発表がなされた。さらに1997年3月に今度は一般家庭でO-157による食中毒が発生してカイワレ大根から菌が検出された。これを機に全国各地のスーパーでは店頭からカイワレ大根が姿を消し、出荷量は8割もの減少となる。

 

   大腸菌は、健康な人の腸や動物の腸管の中にいてほとんどのものは無害だが、このうちのいくつかは人に下痢や腹痛などを起こすことがあり、病原性大腸菌と呼ばれる。この中でO-26,O-111,O-128,O-157などは腸管内でベロ毒素という出血性下痢や溶血性尿毒症症候群(急性腎不全,溶血性貧血)の原因となる毒素を作るため、腸管出血性大腸菌と呼ばれ、1996年8年8月6日法定伝染病に指定された。「O-157」とはO(オー)抗原 (細胞壁由来)として157番目に発見されたもの。

 

   O-157 は1982年(昭和57)、アメリカ・米国オレゴン州とミシガン州でハンバーガーによる集団食中毒事件の原因菌として見つかったのが最初で、その後世界各地で見つかっている。国内での感染源としては井戸水,牛肉,牛レバー刺し,ハンバーグ,牛角切りステーキ,牛タタキ,ローストビーフ,サラダ,カイワレ大根,シーフードソース,シカ肉,キャベツ,白菜漬け,そば,メロンなど。海外では、ハンバーガー,ローストビーフ,ミートパイ,アルファルファ,レタス,アップルジュースなど多岐にわたっている。

 

HACCP (ハサップ)

 

   HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)とは危害分析(HA),重要管理点(CCP)と呼ばれる衛生管理の手法。これは米国航空宇宙局(NASA)が、宇宙食の開発に当たって、高度に安全性を保証する方式として確立したもので、食品の生産・製造・加工・消費のなかで発生するおそれのある微生物汚染等の危害を分析し、重点的に管理する事項を決め、これが守られているかを常時監視するもの。

 

   家庭の調理における「危害分析」とは食中毒原因と防止方法を考えることで、「重要管理点」とは調理の際に注意を払うべきポイントで、①食品の購入,②家庭での保存,③下準備,④調理,⑤食事,⑥残った食品、それぞれの中でチェックをしていくこと。

 

トレーサビリティー

 

   1996年7月に大阪でO-157病原性大腸菌による集団食中毒が発生、続くBSE問題、雪印事件などにより食べ物に対する安心感が崩壊してしまった。こうした中で解決のひとつとしてトレーサビリティー(生産から消費までの全行程を特定できること、各段階で情報が蓄積されていて問題発生時にアクセスできること)が上げられる。

①2000.7.2

雪印乳業集団食中毒事件…大阪工場の低脂肪乳を飲み六千人を超える食中毒症状が発生、原因は製造過程での手抜きやルール違反など、食品工場では考えられない「安全」軽視の管理実態が明らかになった。

②2002.1.23 雪印乳業の子会社の雪印食品の関西ミートセンターが2001年10月、オーストラリアからの輸入牛肉約14tを国産牛肉の箱に詰め替え、業界団体に買い取らせていた。

③2003.12.24 米国においてBSE(牛海綿状脳症…牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病)が疑われる牛が発見され、同年12月26日に確定,輸入の禁止をする。

④2004.4.16 ハンナンが2001年12月から翌年5月にかけてBSE対策の国産牛肉買い取り事業で、輸入牛肉約36tを偽装し業界団体に買い取らせていた。

 

食の安心・安全

 

①2002年、中国産の冷凍ほうれん草からクロルピリホスなどの残留農薬が確認され、スーパーなどが店頭から撤去されたり、飲食店が使用を自粛するなどの影響が各地に広がった 

②2006年、残留農薬への規制・ポジティブリスト制度が施行された。これは、「農薬等が残留する食品の販売等を原則禁止する制度」で、これらの残留基準値が定められていない食品については、毎日食べても健康に影響がない基準値(0.01ppm)が設定され、この値を超える食品については、販売・流通等が禁止される。

③2007年、12月下旬から2008年1月にかけて、中国製冷凍ギョーザを食べて下痢や嘔吐(おうと)などの中毒症状を訴え、メタミドホスなど有機リン系殺虫剤が検出された。 

④2011年4月下旬、「焼肉酒家えびす」の複数の店舗において「和牛ユッケ」などに菌が付着していたと想定され、腸管性出血性大腸菌O-111により5名が死亡する集団食中毒が発生。

⑤2012年7月下旬、北海道で白菜の浅漬けを原因とする腸管出血性大腸菌O-157による集団食中毒が発生、7人が死亡した。

⑥2014年7月下旬、静岡市の花火大会の露店で売られた冷やしキュウリを原因とする腸管出血性大腸菌O-157による集団食中毒が発生、過去10年間で最大規模の449人になった。

 

*今の環境(生産現場の高齢化,消費人口の縮小,輸入野菜・果物の増加,食品のディスカウント化,外食産業の中での低価格化…)の中では、これまで以上に私たち消費者が自分のため・子供たちのために見守っていく必要がある。

 

農業のあり方

 

   野菜や果物、米を作ったときに、一緒に出来る物がある。それは自然の風景であり、ホタルやカエル、トンボであり、田畑にそよぐ涼しい風である。工業生産では決してあり得ないことである。この自然環境を守るためには、私たちが購入して食べるという行為を通して応援していく必要がある。そしてそれが、国内生産の拡大につながり、輸入農産物の拡大を止め不安の解消を図るものである。もっと、消費者と生産者の距離を近づける必要があることと、農業政策としても今、必要としている。現実に、ドイツなどでは農村の美しい自然環境を守るために、国が助成をしている。

 

チェルノブイリ原発事故

 

   1986.4.26 旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号機(RBMK・黒鉛減速軽水冷却沸騰水型)で、定期点検で出力を停止する途中に実験が行われ、爆発事故は起きた。わずか数秒の間に2度以上の大爆発が起き、原子炉は壊れ、核燃料はこなごなになってふき上げられた放射能は、遠くの国々にまで運ばれ、地球全体に放射能が飛散した。チェルノブイリ原発周辺は30kmに渡って人の住めないところとなり14万人が避難、事故を起こした4号機はコンクリートで固められ「石棺(せきかん)」と名づけられた。事故による初期の死者(1986年)は、原発の運転員と消防隊の隊員たち31人だったが、数年、あるいは数十年もたってから、放射線被曝(ひばく)によるガンなどさまざまな病気にかかる人が増えるとともに病気に対する抵抗力を弱め、老化を早める結果となっている。放射線汚染はウクライナだけでなく、隣のベラルーシ,ロシアまで広がり、とくに深刻なのが子どもの甲状腺ガンの増加被害でありそして、今も汚染された土地に人が住み、汚染された食べ物を食べている人がいる…。また、この事故は原発の安全性が崩壊するとともに欧州など世界中で原発反対の機運を生んだ。

*外務省はロシアのウクライナへの軍事侵攻をうけて、ウクライナの地名の呼称変更に関しロシア語に由来する「チェルノブイリ」を、ウクライナ語の「チョルノービリ」に変更したと発表した。2022.3.31

 

東日本大震災と原発事故

 

   気象庁が命名した正式名称は「平成23年 東北地方太平洋沖地震」ですが、報道では被災地域を考慮して「東日本大震災」,「東北関東大震災」と独自に呼んでいた。4.1 に政府は今回の地震災害に対して「東日本大震災」と閣議了承をしました。

 

   2011.3.11 三陸沖を震源に発生、国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した。津波と火災で多くの被災者が出ると共に、東京電力福島原子力発電所では原子炉が緊急停止をしたが、冷却装置がすべて稼働しない状態になって12日に爆発が発生、放射性物質(ヨウ素131,セシウム137など)が漏洩(ろうえい)して20km圏内は避難指示が出た。21日には食品衛生法の暫定基準値を超える放射性物質が見つかり、福島,茨城,栃木,群馬各県のホウレンソウ,カキナ、福島県の原乳に対する出荷停止を、さらに23日、福島県のコマツナ,キャベツ,ブロッコリー,カリフラワー,カブなどの出荷停止を指示した。原発の外へ漏れ出た放射性物質が大気中を漂い、大地に降っている。セシウム137ならば半減期は約30年で、長く大気にとどまり土壌に残って放射線を出し続ける。環境中の値が基準より低くても、影響がまったくないわけではない。この先には、環境と健康の被害を最小にするための長い闘いが待っている。いま、みんなの力が試されている、がんばろう東北,がんばろう日本‼‼