30. カボチャ   南瓜 Pumpkin

 

   原産地は北アメリカ南部,中央アメリカ,南アメリカ北部とされるウリ科の野菜で、コロンブスのアメリカ発見以後ヨーロッパに伝えられた。日本かぼちゃ,西洋かぼちゃ,ペポかぼちゃ(主に飼料用だがズッキーニはこの仲間)に大別される。

 

   日本かぼちゃは北アメリカ原産で、紀元前5000年のメキシコの遺跡から種が発見されている。 かぼちゃの中ではもっとも早く、天文10年(1541年)にポルトガル船が大分県に漂着し、領主の大友宗麟にかぼちゃを献上した。このときの産地カンボジアがなまって、和名となった。九州ではボウブラ(かぼちゃのポルトガル語のアボブラがなまった)、関西ではカボチャ,南京(なんきん)、関東では唐茄子(とうなす)と呼ばれ、関東以南の暖かい地方に適する。果形は偏平で縦に深い溝があり、果肉は粘質で水分が多くあまり貯蔵がきかない。煮くずれしないので伝統的な日本料理には重宝がられている。品種には黒皮,白菊座,小菊,会津などがある。

 

   西洋かぼちゃは南アメリカのペルー,ポリビア,チリ北部などの高原地帯が原産で、江戸時代末期の文久3年(1863年)にアメリカから導入されたが、普及は明治の始めに北海道へペポカボチャと共に再導入されてからで、関東以北の温度の低い北海道,長野,群馬などでとくに美味なものができる。果形は心臓形,紡錘形をして、果肉は粉質でほっくりした甘味があり栗かぼちゃともいわれ貯蔵がきく。品種には古くはデリシャス,ハッバード(マサカリカボチャ)などで、最近はデリシャスの中から改良された早生品種のえびす,みやこが中心で、これらは中間地帯や暖地でも大量に作られている。その後、品種も多様化の傾向にあってくり将軍,くりゆたか,味平,こふき,味皇,くりあじ,りょうおもい,果皮の白い雪化粧,白爵などと急増中、ここにきて新しい品種として粉質系のほっこり,ほっこり133なども栽培されている。また冬場はニュージーランド,メキシコなどでもえびすやみやこが作られ、国内産の端境期と健康志向から輸入量が増えている。2001年では140,652tと国内生産の38%を占めていたが、2002年の中国産冷凍ほうれん草の残留農薬、2007年の12月下旬の中国製冷凍ギョーザの中毒事件などにより、輸入野菜全般に対する不信感があって微減となっていたが、国内物の不作などもあって2010年より一服状態。一方、2022年の国内収穫量は182,900t、構成比は、①北海道51.4%,②鹿児島3.8%、そして長野,茨城,長崎,宮崎,神奈川,沖縄,群馬…と続く。

 

   生育適温は17~20℃で、日照不足はよくない。あまり土質を選ばず連作も可能で作りやすい作物である。野菜の中では炭水化物が多く、約15%を含み、夏の有色野菜として栄養価が高くビタミンA,Cの重要な供給源で食物繊維も多く、健康野菜としてもっと利用したいものである。とくにビタミンAは粘膜を丈夫にして風邪への抵抗力をつけるので油を使ってカロテンの吸収を高めるとよい。ほかに炭水化物(でん粉)は西洋かぼちゃが日本かぼちゃより多く、単位重量当りのカロリーも約2倍ある。昭和40年代を境に日本かぼちゃから西洋かぼちゃへ嗜好の変化とともに生産も変わり、今では西洋かぼちゃが95%強を占めている。

 

   ペポカボチャは北アメリカ原産で、明治の始めにアメリカから導入され北海道で飼料用として栽培されたが、食用,観賞用もあり、種類が多く色や形がいろいろで近年増加している。代表格がズッキーニで、ほかにそうめんかぼちゃともいわれる金糸うり(1㎏前後でまくら 型、半分に切ってゆでるとそうめん状になり酢の物とする),ひょうたん型のバターナッツ,お尻のとがったハート型のエイコンスカッシュ,首がまがった形のクロックネック、色鮮やかで形のおもしろいおもちゃかぼちゃ、ほかにもバナナスカッシュ,テーブルクイーン,スイートポテトなどが知られる。 ミニかぼちゃとしてサカタのタネからプッチィーニという果実は200~300g,淡黄色で縦縞のオレンジ色が入ったかぼちゃが1997年より売り出されている。上部を輪切りにして種を取り、電子レンジで5分程度の加熱ですぐ食べられ甘くておいしい。外皮が黒緑色なのが協和種苗の坊ちゃん,タキイ種苗のほっこり姫,サカタのタネの栗坊である。

 

選び方と保存   ヘタの茎が枯れて皮が固く緑の色が濃く鮮明でつやがあり、もって重たいもの。カット売りは果肉の色の濃いもの。自分でカットするときは、ヘタが一番硬いので、裏返しておしりから包丁を入れるとよい。保存は丸ごとなら風通しのよい冷暗所で1~2カ月は可能、切ったものは固めにゆでて冷凍も可能。

旬   北海道産が出回る8~10月、そして輸入物・ニュージーランド産が出回る2~4月。

そうめんかぼちゃと、

ゆでてほぐしたところ。


 

ニュージーランドのかぼちゃ

 

   ニュージーランドで生産される輸出用のカボチャはほぼ100%がわが国向けで、2~5月までの4カ月にかけては他の産地を押さえて2022年までは、入荷量の1位を占めて年間で見ても5万t前後の輸入量であった。2023年はメキシコが1位と入れ替わった。気候は年間を通して温和で、季節による寒暖の差が少ない。牧羊を中心として農業経営が行われており、かぼちゃ栽培も大型機械による一貫作業によってこれらの牧草地とトウモロコシとのローティション(輪作)で行われている。

 

坊ちゃんかぼちゃ

 

   協和種苗が1998年に発表した品種で、これは、小果でリンゴ型の(鈴成錦2号×みやこ系)×強粉質の来歴不明の小葉短節系の組み合わせ。果実は約500gのミニサイズ,果皮は暗濃緑色で浅い縦縞溝に条斑が入る、食味は粉質で普通のカボチャに比べてたんぱく質,ベータカロテン,糖質が約3~4倍も含まれ、ホクホクで甘く使い切りが出来て便利です。ラップしてそのまま電子レンジで8分加熱することで、皮やわたの部分も丸ごと食べられる。また、煮物や中身をくり抜いて肉詰めにしたり、グラタンの材料を流し込んだり、丸ごと使った「プリン」や、「パンプキンアイス」などのお菓子作りも楽しい。赤皮で果肉が鮮やかなオレンジ色のねっとり甘い「赤い坊ちゃん」,白皮の「白い坊ちゃん」も育成されている。ミニかぼちゃの2020年の収穫量は404t、構成比は、①北海道33.9%,②神奈川21.3%,③熊本14.4%,④愛知4.2%、そして福岡,岡山,大阪,滋賀,千葉…と続く。

 

鹿ケ谷(ししがたに)かぼちゃ

 

   文化年間(1804~1817)に津軽からかぼちゃの種子をもらい京都の鹿ケ谷付近で栽培され、当初は普通の菊座型をしていたが数年栽培する内に現在のようなひょうたん形となった。明治の中頃には栽培面積が70haにも及んだが、収穫期が遅いことや病気に弱く収量が少ないことから昭和に入って激減した。果実は2~3㎏のひょうたん形で表面にこぶが発生、果皮は幼果では深緑色だが完熟すると表面に白い粉をふきだいだい色に変わる。

 

コリンキー

 

   サカタのタネが2000年に発表した生食(せいしょく)用のかぼちゃで、直径15cm,長さ18cm前後の紡錘形をして重さは500g前後、果皮果肉ともオレンジイエローをしている。かぼちゃは栄養価が高く人気があるが、調理に手間がかかるといった難点もあった。コリンキーは無味無臭で柔らかくサラダや浅漬け、スープ、ジャムなどに利用する。

 

ストライプペポ

 

   ぺぽかぼちゃの品種で、タネを食用とするもの。農研機構北海道農業研究センターが育成、登録は2014年です。西洋カボチャのタネは硬い殻をむいて中身を取り出す手間がかかるが、これはタネを覆う殻がないのですぐに利用できる。果皮に縦縞(ストライプ)のあるペポカボチャであることから命名した。現在、カボチャのタネは菓子類の食材として多くは海外からの輸入でまかなわれているが、食の安心・安全への関心が高まる中で国産のカボチャ種子の需要が高まっている。全国一のカボチャの産地・北海道和寒(わっさむ)町で商品化に取り組んでおり、2013年より本格栽培を初めて、毎年10t程度のタネの収穫を目指している。

 

種間雑種

 

   西洋かぼちゃと日本かぼちゃとの雑種で、代表的な品種に新土佐がある。草勢が強く耐暑性や貯蔵性がすぐれ、戦後は食用とされたが現在では栽培されていない。しかしきゅうり,メロンなどの台木として使われ、なかでもきゅうりにブルームを発生させない台木用カボチャが注目されて利用されている。 

 

キュアリングとかぼちゃ

 

  キュアリングとは、「治癒(ちゆ)させる」という意味でサツマイモやカボチャでは広く行われている。果柄部の切り口を乾かすことにより菌の侵入を防ぎ、果実の腐敗を防ぐので貯蔵性が増す。収穫後7~10日間、日陰で風通しのよい所に置き、果柄がコルク化すると完了。追熟させることででんぷんが糖に変わって甘みが増してきます。キュアリング処理後は風通しのよい日陰で貯蔵、しかし貯蔵温度が高いとホクホク感がなくなり、腐りやすくなるので注意が必要です。