53. コマツナ    小松菜

 

   わが国が原産のアブラナ科の葉菜類。ヨーロッパで生まれたアブラナ科の仲間が中国に入り「漬菜(つけな)」として分化し、その中でハクサイ,カブ,タイサイなどが生まれわが国へ渡来した。小松菜はこのカブから派生したと思われる。東京都江戸川区小松川の特産で、江戸時代・元禄(1688年)のころは葛西(かさい)菜(な)と呼ばれていた。その後、八代将軍吉宗(1716~1745)が鷹(たか)狩(が)りの途中、御膳所となった家で馳走になったもちの清まし汁(お雑煮)の中に香りのよい青菜が入っており、美味であったため青菜の名をきいたがとくになかったので、「ここは小松川なので小松菜と名づくるがよい」と命名を賜(たまわ)ったともいわれている。冬に多いので冬菜,雪菜、また春先のものはうぐいす菜とも呼ばれる。

 

   カブと同じ種類で長大円形の葉を持ち、葉柄は細くうすい。適温は20~25℃だが耐寒性に富み、東京付近でも一年中播種でき、早い時で3~4週間,発育の遅い冬でも2~4カ月ほどで収穫できる。1~2度霜を受けたものは、葉が厚くなり見栄えは悪くても柔らかく格段にうまい。各地に地方品種があり、福島の信夫菜(しのぶな),新潟の大崎菜,兵庫・大阪の黒菜,熊本の熊本菜,札幌の札幌菜などがよく知られている。

 

   緑黄色野菜として栄養価の高いことから健康野菜として消費が伸びており、かつての関東地方を中心とした栽培から今では全国的な栽培となっている。カロテンが多く、ほかにビタミンC,カルシウム,鉄分にも富む。このカロテンの吸収率を高めるためには油を使った料理法がよく、色の褐変を防ぎビタミンCの損失を避けて短時間で料理をする。ほうれん草のようにアクがないので煮ても炒めてもおいしく食べられ、汁の実,浸し物,各種の和え物,炒め物,煮物,漬物などにする。また、東京では正月の雑煮菜(ぞうにな)として利用される。2022年の収穫量は120,100t、構成比は、①茨城20.9%,②埼玉11.4%,③福岡9.2%,④東京7.0%、そして群馬,神奈川,千葉,京都,大阪…と続く。

 

選び方と保存   葉がみずみずしく大きさが揃って、緑の濃いもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ、さっとゆでて冷凍保存も可能。

旬   10~4月。

コンフリー  onfrey

 

  コーカサス西部が原産でムラサキ科、ヨーロッパでは「草の牛乳」と言われる。別名ヒレハリソウ,ロシアムラサキ。根がジャガイモ状になり家畜が喜んで食べるところから、戦前に家畜の飼料として導入されたが普及はしなかった。草丈は3050㎝位で、葉は大きくだ円形で厚みがあり濃緑色、土地を選ばず荒れ地でも育つ。細胞の新陳代謝を盛んにするビタミン12をはじめとして栄養が豊富に含まれ、強壮,疲労回復,胃腸病に効果がある。若葉はお浸し,和え物,天ぷらやジュースにする。厚生労働省は、2004年6月、コンフリーを含む食品を摂取してピロリジジンアルカロイドによる肝障害(肝静脈閉塞性疾患で、肝硬変又は肝不全)を起こす例が海外で多数報告されているとして、食品としての販売を禁止した。農林水産省でも、「コンフリーを飼料に使用しないよう注意されたい」という通知を出した。

 

葉物の保存

 

 小松菜,ほうれん草,春菊などの保存は、収穫後も呼吸をしていて葉の表面から水分がどんどん蒸発していくので乾燥は禁物、それと、生育している時の姿勢を保つことがストレスを与えず、呼吸も低く抑えられる。簡単なのは、①袋入りなら、乾燥しないように上をセロテープで止めて冷蔵庫の野菜棚に立てて入れる。できれば、②袋入りの上を開けて、冷たい水をかけてセロテープで止めて冷蔵庫の野菜棚に立てて入れる。さらには、③冷たい水にくぐらせて、ベーパータオルか新聞紙で包んでポリ袋に入れて冷蔵庫で立てて保存するのがベストです。そうは言っても、葉物は傷みやすく、ビタミンCの損失も早いため、できるだけ早めに食べるのが一番です。アスパラガスは一度、根元をカットしてから同様にします。

 

青菜に塩

 

   青菜に塩を振りかけると浸透圧の差から水分を失ってしおれてしまう。元気のあった人が、急にしょげるさまを言う。

 

   青菜をゆでるときに食塩を入れるのは、ナトリウムイオンという食塩の成分が緑色を保つ効果があることから、わが国では塩を入れるのは常識・塩神話のように言われ、料理の本にも書いてあるが、入れなくても大きな変化がないとも言われる。それより大事なことは、①沸騰したたっぷりの湯を使うことで、野菜を入れた時に温度が下がるのを止め、ゆでる時間を短かくして加熱による色あせを防ぐとともに、ゆでると湯の中にシュウ酸などが溶け出し色も味も悪くなってしまうのも防ぐ。②ゆでたらすぐに冷やし、ザルにあげて水気を切る。これにより、葉緑素のクロロフィルが黄緑色のフェオフィチンに変化して色がわるくなるのを防ぐことになる。ぜひ、皆さんも比べて、教えて頂きたいものです。

 

盛り塩

 

   客を引き込む縁起物として、料理店の店先に「盛り塩(もりじお)」がされる。これは神道では神に捧げる神聖な供え物として神棚に盛り塩を供える風習があり、仏教では葬式後に塩を撒く風習がある。塩が生命力の更新や清浄といった意味合いからである。これが一般に広まり、そのあとに中国の故事が話の面白さもあって、結びついたと思われる。  

 

   中国の故事…昔、中国の武帝(ぶてい)(紀元前156~紀元前87年)という王は絶対的な権力を持ち、三千人もの美女をかこっていたと言われ、毎晩牛車で彼女たちのところを訪ねていた。女性の中には賢い女性が居り、自宅の前に牛の好きな塩を置いた。牛車が止まり牛は足を止めて塩をなめ続け、その女性は皇帝から寵愛(ちょうあい)を受けた。この話から、盛り塩は客を招く,福を招くと言うようになった。

 

草食動物と塩

 

 全ての動物は生きていく為に塩(塩化ナトリウム)が必要で、その役割は、体液の浸透圧の維持,体液量の調整,食べ物の消化吸収,神経伝達などである。野生で暮らす肉食動物は、獲物から塩を補給する事ができるが、草食動物は食べる草の中に塩がほとんど入っていないので、塩が含まれた土を食べたり、象は岩塩を探し求めて大規模な移動をする。この性質を利用して、放牧された牛やトナカイを集める時に、塩を使って集めることもある。

 

 牧場で飼っている牛も、毎日、塩のかたまりをなめているが、とくに乳牛は乳の中に塩化ナトリウムが排出されるのでより多くの塩を必要とする。

 

牛とげっぷ

 

 牛は4つの胃袋を持ち、胃の中に入れた餌を口の中に戻して(反芻(はんすう)動物/ヒツジ,シカ,キリン…)、牧草などの植物性繊維を微生物の助けを借りて栄養の吸収効率を格段に高めている。この消化の過程で生成されるメタンガスをげっぷとおならとして排出するが、その量は毎日1頭当たり/160~320リットルにも上り、そして地球上には約15億頭の牛がいる。このメタンガスは、二酸化炭素,フロンなどと並ぶ温室効果ガスのひとつで、地球温暖化の約20%はメタンガスに起因し、またそのうちの約20%は家畜によるもの(排泄物からの排出も含む)と試算されている。メタンにはCO2の28倍もの温室効果があることがわかっており、二酸化炭素に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きい。だから厳密にいうと、温室効果ガスを減らす方法は化石燃料を減らすだけではなく、牛肉を食べる量を減らして家畜を減らせばメタンの発生量は減る。