57. サツマイモ薩摩藷,甘藷 Sweet potato

 

   中南米のメキシコ,ペルー,コロンビア原産で、ヒルガオ科に属する。栽培の歴史は古く、紀元前1万年から8千年前のペルーのチルカ谷遺跡から炭化したさつまいもが出土している。コロンブスがアメリカ大陸を発見した際にヨーロッパに持ち帰り、1492年スペインのイサベラ女王に献上している。その後、広く世界に分布した。

 

   わが国へは中国から1605年に琉球へ、そして1609年に薩摩へ、1734年に江戸へ伝えられた。日本全土に広がったのは亨保年間で、とくに1732年(亨保17年)の飢饉のときその価値を発揮したことから、徳川幕府は、青木昆陽を採用してこの栽培の普及に力を入れた。さつまいもの名は、このとき薩摩(鹿児島)から種いもを取り寄せたことによる。別名甘藷,琉球芋,唐芋、英名はスイートポテト、また、市場では産地の鹿児島=薩摩藩の旗印が

 

なので、まるじゅうと呼んでいる。

    栽培は種芋をビニールハウス内に植えると多数のつるが伸びてくるので、葉の数が7~8枚ついた苗を畑に植え付ける。つる性の野菜で、枝分かれした茎葉は地面を低くはい、葉で光合成したでん粉を地下の貯蔵組織である塊根に貯える。適温は萌芽期で地温が30℃,生育期で25℃前後、保存の適温は12~15℃,湿度85~90%である。長期の供給をはかって地下穴に7~8月ごろまで貯蔵するものと、キュアリング後に倉庫貯蔵するものとがある。さつまいものでん粉含量は20~25%が普通で、このほかじゃがいもに比べ、糖質やビタミンCが多く水分が少ないのでカロリーが高い。さつまいもを切ると出てくる白い乳液はヤラピンといい便通を促す働きがあり、また繊維質が多いことと相まって腸の活動を助け便秘に効果がある。アクが強く皮をむくと変色が早いので、切ったらすぐに水にさらすとよく、皮はきんぴらなどに料理するとよい。また、レモンスライスと一緒に煮ると色がよく仕上がる。

 

   黄金千貫(こがねせんがん・でん粉や焼酎の加工用、お菓子用),ベニハルカ,紅あずま,高系こうけい14号,シロユタカ(でん粉や焼酎の加工用),シルクスイート,べにまさり,安納あんのうイモ,タマユタカ(干し芋加工用),パープルスイートロード,紅赤(通称金時),山川紫(果皮は濃紫紅色,果肉は紫色でポリフェノールの仲間のアントシアニンが豊富、甘味は少ないので色を生かしてお菓子用),ベニハヤト(カロテンが豊富なオレンジ芋、お菓子,天ぷら用),種子島ろまん(種子島紫から紫色の濃い系統を選抜したもので食味もよい)などがある。


 生産量は昭和31年をピークに減少しているが、消費の中身を見ると青果用が増加、アルコール用が減少となっている。2022年の栽培面積は32,300ha,収穫量は710,700t、収穫量構成比は、①鹿児島29.5%,②茨城27.3%,③千葉12.5%,④宮崎11.0%、そして徳島,熊本,静岡,大分,高知,埼玉,神奈川,長崎,石川…と続く。

選び方と保存  色が均一で肌がなめらかでずんぐりとした太め、ひげ根のあとの少ないもの。細長いものは繊維が多いので避ける。保存は9℃以下になると低温障害を受け、腐敗致死してしまうので注意。ポリ袋に入れて冷暗所へ。

旬  9~3月。

 

べにはるか

 

   独立行政法人農業技術研究機構九州沖縄農業研究センターで、いもの外観が優れた九州121号に、いもの皮色や食味が優れた春こがねを交配して育成された。名前の由来は、食味やいもの外観が既存品種よりも「はるか」に優れることによる。高系14号より、いもの皮色,形状や大きさのそろいが優れ、センチュウや立枯病にも強いが収量は変わらない。鹿児島県の食用の奨励品種として普及に移されており、大分県,千葉県や茨城県でも栽培されている。生いもの切り口から出る白色の液(ヤラピン)が多く、いもの表皮に付着すると外観を損なうので、収穫時にはヤラピンが付かないように注意する。貯蔵すると粘質でねっとり型なので焼き芋から浸出液(ドリップ)が出る場合がある。スーパーなどの店頭で焼き芋として大量に売られ、評判がよい。茨城県JAなめがたでは他の産地との差別化をはかって「紅優甘(べにゆうか)」と命名,他産地でも紅天使,甘太くん,紅美人,紅優香,紅密芋などの名前で販売されている。2019年には「ベニアズマ」と交代をして、生食用のトップとなった。2021年の栽培面積は6,699ha、構成比は、①茨城50.4%,②千葉21.4%,③鹿児島9.0%,④熊本5.4%、そして大分…と続く。

 

 

 

ベニアズマ

 

   農林水産省農業研究センターが皮色・形状に優れた関東85号に、肥大性及び肉質に優れたコガネセンガンを交配して昭和59年に登録された。ベニアズマの名は、いもの皮色と普及が予想される地域を表す。果皮はきれいな濃赤紫色で肉食は鮮やかな黄色、肉質は粉質でホクホクしていて食味はきわめてよい。初期生育は良好で早期肥大性があり、早掘りマルチ栽培で良質多収だが、貯蔵性がやや悪い。1995年から収穫量が高系14号と入れ替わってトップ(生食用)を占めていたが、2019年には「べにはるか」と交代をして、2番手となった。茨城県JA行方なめがたでは、昭和59年にベニアズマを他の産地との差別化をはかって、「紅こがね」と命名,販売している。そして、2012年から新たに6~8月の定温貯蔵芋を「熟成紅こがね」という商品名で出荷開始。長期間貯蔵することで、芋に含まれるデンプンが糖に変化する「糖化」現象が進み、甘さが増加してしっとりとした食感 に変化する。ベニアズマの2021年の栽培面積は3154ha、構成比は、①茨城43.7%,②千葉36.8%、そして愛知,愛媛,長崎,群馬…と続く。

 

高系14号

 

   高知県の農事試験場で昭和20年、ナンシーホールとシャム種の交配として育成され、高系14号と命名された。この品種から芽状変異で生まれた派生系統は多く、鳴門(なると)金時,土佐紅,五郎島(ごろうじま)金時,宮崎紅,紅高系,ベニサツマ,紅コトブキ,ことぶき…などがあげられる。果皮は紅色で長紡錘形、肉色は淡黄で甘味がありおいしい。早期肥大性に優れて早掘りの食味は非常によく、安定した収量性を示すが、サツマイモネコブセンチュウや立枯病に弱く、栽培条件によってはいもの形状の乱れや丸いもの発生が見られる。温暖な沿海砂壌土地帯や土の軽い洪積台地に適し、西日本の主力品種。1990年までは収穫量がトップ(生食用)であった。2021年の栽培面積は2,870ha、構成比は、①徳島33.1%,②鹿児島26.3%,③宮崎16.8%,④石川6.6%、そして高知,熊本,千葉,香川,愛媛…と続く。

 

 

安納(あんのう)いも

 

   鹿児島県の農業試験場熊毛支場作物研究室が、種子島(たねがしま)の安納地区の農家から貰ったさつまいもの改良研究をしている中から、品質や形状,大きさの優れているものだけを選別して次の種芋とすることを何年も続けてきた。その中から育種登録されたのが、安納紅,安納こがねである。掘りたての新鮮なものよりも、3週間から1カ月以上熟成させると最も糖度が上がり美味しくなる。そして、ゆっくりと時間をかけて焼くとまるでクリームのように甘くネットリとした食感となる。栽培はやや難しく収穫量もやや少ないが、種子島(たねがしま)では年に数千tも生産される人気品種でもある。皮の色が薄茶色のものが安納紅、この変異種で皮の色が白っぽいものが安納こがねである。食味は両方とも同じとも、こがねの方がやや上品な甘味とも言われる。

 

  さらに、果肉の色がオレンジ色に近いものが中種子(なかたね)町を中心に栽培され安納みつき、ややピンクに近いものが南種子町を中心に栽培され安納もみじと呼ばれている。しかし、両者とも商標であって、品種としての厳密な違いははっきりしていない。

 

シルクスイート

 

   群馬県伊勢崎市のカネコ種苗が、春こがねに紅まさりを交配して生まれた実生を育成して2012年から種苗の販売が開始されたばかりの新しい品種、現在品種登録出願中となっています。外観は紡錘形で表皮の色や果肉の色などはべにはるかと同じ濃い紅色の皮に、中がクリーム色をしています。焼き芋にすると、収穫してすぐはやや粉質で少しホクホクした感じに、十分に貯蔵されたものは水分が多く絹(シルク)のようにしっとり滑らかな舌触りになる。くどすぎない上品な甘さと適度なねっとり感があり、まるでスイートポテトを食べているようだと評判がよい。産地は千葉,茨城。

 

紅赤(べにあか) 通称金時(きんとき)

 

   埼玉県の山田イチ氏が明治31年(1898)、八房の中から見いだした芽条変異系統である。一般には金時の名前で呼ばれているが、埼玉県では「川越イモ」の別名があるほどの有名な品種である。果皮は紫紅で美しく長紡錘形、肉色は黄色で粉質、きめがこまかくホクホクして味がよいので、きんとんやあん,てんぷらの材料に向く。ただ、収量が少なく栽培の難しい品種である。 

 

 

べにまさり

 

   独立行政法人農業技術研究機構九州沖縄農業研究センターで、皮色,食味に優れた九州104号に、外観と食味に優れる九系87010-21(ベニオトメ×高系14号)を交配して育成され、2001年に登録された。果皮は赤、肉色は淡黄で紡錘形、高系14号より標準栽培で収量が15%,早堀栽培で25%上回り、多収かつ早堀適性があり保存性も高い。甘味が強く食味に優れ、肉質は粘質でねっとり型なので、焼き芋や蒸し芋に向く。茨城県での栽培が増えている。

 

 

クイックスイート

 

   独立行政法人農業技術研究機構作物研究所がベニアズマに九州30号を交配して育成、2002年に登録された。果皮は赤紫、果肉は黄白で紡錘形をしている。収量はベニアズマとほぼ同じ、貯蔵性,食味ともベニアズマと高系14号の中間である。大きな特長はでん粉粒が亀裂の入った特異な形をして、ベニアズマなどのでん粉の糊化温度が約70℃に対して20℃程度低い50℃で糊化する。これはベニアズマに比べ半分程度の時間で、蒸しいもの糖度が最高値に達する。このため、普通のさつま芋のように長時間加熱しなくても甘味が引き出せることから、電子レンジ調理でも食味が落ちない。店頭ではこのサツマイモ・クイックスイートが専用の袋に入って売られており、袋のまま電子レンジに入れて十分間待つだけで、ほっかほかのお芋ができあがる。

 

 

パープルスイートロード

 

   独立行政法人農業技術研究機構作物研究所が、九州119号を母に数品種の混合花粉を交配したもので、食味や外観品質に優れた青果用の紫さつまいもが2002年に登録された。紫さつまいもに含まれるアントシアニン色素が抗酸化・高血圧抑制作用などの働きがあることから注目され、様々な加工品が開発されて販売されている。そうしたなかで、アヤムラサキなどの在来の品種にはない粉質でホクホク感のある食味といもの形が揃ってきれいなことが特徴。ロード(Lord)は王様の意味。

 

すいおう

 

   農研機構九州沖縄農業研究センターが茎葉飼料用の「ツルセンガン」の突然変異個体から育成した系統で、茎葉部の食味を重視した。種苗登録は2004年、葉が大きく翠(みどり)色で、その翠色が濃厚なことから「すいおう・翠王」と名付けられた。これは、「エレガントサマー」と並んで葉柄が食べやすい品種。従来のサツマイモの茎葉は、アクが強く苦味があるため食材としては敬遠されがちでした。しかし、このすいおうの茎葉はそのままサラダ,煮物,炒め物とインゲンやアスパラと同じように利用できる。また、ほかにも佃煮,きんぴら,煮びたし,酢のものなど用途が広い。栄養価はほうれん草と比べてビタミンCが少し低いが、あとは鉄,カルシウム,β‐カロテン,ビタミンE・Kなどがほかの葉菜に比べて豊富で、さらにポリフェノールやルテインも含まれている。収穫は6~9月までの葉物野菜の少ない時期で重宝する。産地は九州を中心に、岡山,千葉,山形でも栽培、茎葉は粉末にしてお茶やもち,パン,パスタなどの製品の原料に利用されている。

 

キュアリング Curing

 

   元来、「治癒(ちゆ)させる」という意味でサツマイモに広く行われている、貯蔵前処理方法。収穫後、高温多湿下(温度32℃,湿度85~95%)に5~6日間おいて、収穫のときできた傷口や表皮下にコルク層を発達させるもので、これにより病菌の侵入による腐敗を防ぎ貯蔵性を高めると共に、貯蔵中の目減りが少なくなる。しかし、処理温度が高すぎるとコルク層が荒く病菌の侵入が防げず、低すぎると腐敗を促す。処理後は適温の13℃で貯蔵する。

  

さつまいもと緑変

 

   さつまいもには、ガンや生活習慣病・老化の原因といわれる活性酸素を除去してくれるクロロゲン酸が含まれている。このクロロゲン酸は、天ぷら粉に含まれているアルカリ性の重曹やベーキングパウダーと反応をすると緑色の色素が出来る。特にさつまいもの天ぷらに発現しやすく、ごぼう、ウドでもうっすらと発生することがある。また、冷蔵庫の中で食品が腐敗細菌等により分解されてアンモニア(アルカリ性)のうすい気体が発生し、これと反応をして緑変することがある。 

 

オナラとさつまいも

 

   オナラには2種類があり、①音は大きいが匂(にお)わない…繊維質の多いさつまいも,ごぼうなどを食べていると腸内で醗酵活動が盛んとなりガスを発生する。②音は小さいが匂いがすごい…蛋白質などの肉類が多いと、体内で腐敗物質の硫化水素,アンモニア,スカトール,メルカプタンなどが作られ悪臭のもととなる。

このように、肉食動物の便には有害なものがあるので、早く体内から排泄する必要があり腸が短いが、逆に、草食動物は有害成分が少ないので腸が長く、長い時間をかけていろんな栄養を吸収する。

 

焼き芋の始まり

 

   江戸時代後期の寛政年間(1789~1801年)に町内の木戸番が内職として、焙烙(ほうろく)(素焼きの土鍋)で蒸し焼きにした蒸しいもを売りだした。おいしいことと値段がとても安かったことから、たちまち冬のおやつとして評判になった。そのうちに、焙烙では間に合わなくなり、やがて鋳物の大きくて浅い平鍋を使うようになった。そして戦後の昭和25年、サツマイモの統制が解除されて現れたのがリヤカーに鉄板製の箱に小石を入れ、それでいもを焼く「石焼き芋」であった。

 

   焼き芋屋の看板・売り口上も初期は「栗(九里)」に近いという「八里半」から、それがやがて「栗よりうまい十三里」と“栗(九里)より(四里)うまい”ことから九里と四里を足したものとなった。さらにこれの上をいくものとして「栗よりうまい十三里半」ともいわれる。

 

*江戸では治安維持のため、町々には木戸が設けられて朝と夜に開閉をしたが、これを担当したのが木戸番(きどばん)で、「番太郎」または「番太」と呼ばれた。彼らの手当は町内から出ていたが、内職として木戸番屋で雑貨や駄菓子などを売ることを許されていた。火の用心も仕事なことから火を使う事が許されて、焼き芋は彼らの専売のようになっていた。

 

焼き芋と甘味

 

   さつまいもはでん粉を麦芽糖に分解する糖化酵素、β(ベーター)-アミラーゼを多く含んでおり、この酵素は調理するときの加熱で活発に働いて、多くの麦芽糖を作る。これが一層甘味を増す。このためには外側からゆっくり加熱することが必要で、この条件を満たしているのが石焼き芋である。アミラーゼという酵素が働く温度範囲

(65~85℃)を長く維持することができるうえ、適度に水分も減少して絶妙な味が生まれるとともに、皮の焦げた香ばしい臭いが加わる。電子レンジでは酵素の働く時間が短いので甘味が少ない。

 

   家庭で作るおいしい焼き芋…さつまいもを洗い、オーブントースターに入れ、15分スイッチを入れたら一度ひっくり返して、更に15分間スイッチを入れる。これだけで簡単にホッカホカの焼き芋が出来上がります。

   

さつまいもと皮

 

   さつまいも,じゃがいも,大根,人参,ごぼうなどの根菜類の皮の近くには、栄養素とうま味がいっぱい。特にさつま芋の皮には、食物繊維(整腸作用があり便秘解消や動脈硬化・高血圧の原因となって心臓疾患を起こすコレステロールを低下させる),ヤラピンという成分(でん粉を消化する酵素),カルシウム,ガスの発生を押さえるミネラル,アントシアニンという目によい色素、そしてガンや生活習慣病・老化の原因といわれる活性酸素を除去してくれるクロロゲン酸が含まれている。できればさつまいもは皮をキレイに洗って料理をすると共に、焼き芋も皮のままで食べたいものです。

 

10月13日はさつまいもの日

大学芋

 

   名前の由来は諸説あり、①大正時代に、東京の神田近辺の大学生が好んで食べていた。②昭和初期、不況の中で学費に困った東大生が作って売った。③現在の東京大学の赤門の前で屋台が売り始めたところ、大学生たちが喜んで買ったなど。

作り方はサツマイモを一口大の乱切りにして水に漬けてアク抜きをしておく、中心まで火が通るように160度程度の中~低温の油でじっくりと揚げる、砂糖と水を少し糸を引くくらいの粘り気が出るまで煮詰めた蜜をからめすぐに氷水に通して冷やすと、蜜がきれいに固まる。仕上げにゴマを振りかけて出来上がり。

 

女性と便秘

 

   便秘は女性特有の妊娠に関係する、黄体ホルモンの影響が大きいと言われます。女性は妊娠をするために栄養を蓄えなくてはならず、栄養と一緒に大腸の腸壁から便の水分も吸収されて便が硬くなってしまいます。便が長時間大腸にあると、腸内で悪玉菌によって腐敗し、発がん物質や人体に有害な物質を大量に発生させ、さらに発がん促進物質の二次胆汁酸が長く大腸にとどまる。さつまいもなどの食物繊維は体の中で分解されないので、便の素になり、膨らんで便の量を増やすことになる。

 

芋 俵 いもだわら

 

   江戸中期の明和・安永年間(1767~1733年)に起源のある江戸落語のひとつで、別名、芋屁(いもへ),芋どろ。あらすじは、三人組の泥棒が店に忍び込もうと思案する。一人が芋俵に入って他の二人が「少しの間、店の前に置かせてください」と頼み込む。店の方ではいつまでたっても取りにこないから、迷惑して俵を店の中に入れる。夜になって店が閉まったら芋俵から出て心張り棒を外し、二人を店に入れ、盗みを働こうという計画。ここまではよかったが、小僧が俵を中に入れる時、逆さに立ててしまったから、中の男は出られなくなる。そのうちお腹がすいた小僧と女中が、俵の芋をちょいと失敬して食べようと、小僧が俵に手を突っ込む。逆さだから、お尻を触られ、くすぐったいのを我慢する、とたんに、「ぶーっ」、「おや、なんと気の早いお芋だ」。 

 

芋づる式

 

 畑に埋まるサツマイモ芋の蔓(つる)を引っ張ると、次々と芋が連なって出てくる事から生まれたもの。明治になって政治の中心となったのは薩長の藩士たちでした。とくに薩摩(鹿児島)は、西郷隆盛・大久保利通をはじめとしてたくさんの人間が大量に政府の要人になった事から、人々はこれを皮肉って、特産のサツマイモとかけて表現するようになった。

 

 

ほしいも・干芋

 

 農林水産省/2019年の資料では干し芋用の原料供給量が36,626t、歩留まりを37%(農水省が使っている指標)で計算すると干し芋が13,552t程度とみられる。主力産地は茨城県で、安価な中国産の輸入も増減がここにきて激しい。ほしいもの原料は、農林省関東東山農業試験場で昭和35年に登録されたタマユタカが多収で作りやすいことから主力品種となっているが、年により裂開いもが多発したり製品の歩留まりの低下が問題になっている。ほかに泉13号,タマオトメ,ヒタチレッド,九州118号などがある。最近はねっとり型の焼き芋が好評の、べにはるかで作った干し芋も増えている。焼き芋の時は果肉の白さが目立つが、干し芋にするときれいな黄金色となる。

 

 2006年の輸入量は23,325tと国内生産の61.7%を占めていたが、同年の残留農薬への規制・ポジティブリスト制度、2007年の12月下旬の中国製冷凍ギョーザの中毒事件を契機として減少している。2020年で国内生産量が13,551tに対して中国を主とした輸入が8,830tと全体の中では輸入が39.5%を占めて、減少傾向である。

 

*国内生産量は農水省の甘味資源/蒸し切りの生産量を3.7で除した数値/この数値は農水省へ確認済み。