59. サヤエンドウ    莢豌豆 Sugar pea

 

 中央アジアから中近東が原産と考えられているマメ科の野菜。古代ギリシャ時代には乾燥豆として利用され、さやを食べるようになったのは10世紀以降にヨーロッパ中部で改良されてからである。わが国へは中国から7~8世紀に遣唐使によって持ち込まれたと推定され、「和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)」(931~938年)にはノラマメとして記載がある。しかし栽培はあまり盛んではなかったようで、これは多分大豆という優れた豆があったからであろう。明治以後、栽培が漸増したが、昭和60年以降は小さいので収穫に手間がかかり収量もあがりにくいことなどから、生産は伸び悩み気味となっている。

 

 栽培には、育成地のヨーロッパに似た冷涼な気候を好み、15~20℃を適温とするが、低温には耐え5℃で発芽し、10℃前後の冬期によく生長する。北海道以外の各地で、秋まきして越冬作物とされるのは、この耐寒力を利用したもので、逆に25℃以上の高温や乾燥には弱い。また、連作をすると障害が発生しやすく酸性土も嫌う。「ツタンカーメンの豆」といわれる花もサヤも紫色で、赤茶色の豆がある。古代エジプトのツタンカーメン王の墓の発掘で、副葬品の中から発見された種子が3千年の時を越えて発芽したといわれているが、「学術的な」記述はなく真偽のほどは定かではない。1930年代に「ツタンカーメンのエンドウ」として園芸業者が種子を売るのに利用したと言うのが本当のようである。

 

 さやと豆の利用の仕方によって次のように分かれる。 ①さや用種…さやの小さい絹さやえんどう(さやの長さ5~6㎝、小ぶりで美しい緑色とシャキッとした歯ざわりが好まれる。さやをこすり合わせると表面のロウがすれて、キュッと絹ずれに似た音がすることからこう呼ばれている)と大さやえんどう(オランダサヤは長さ10㎝と大きく、さやの色は黄色がかった緑色で肉質は柔らかい、主に関西に多い)の2種類がある。 ②むき実用種…グリーンピース用で、生のまま缶詰めにする時と乾燥種子を水で戻して柔らかくして缶詰めにする時がある。 ③まめ用種…みつ豆の材料には、この中の褐色の種皮の品種を使う。 ④スナップエンドウ…スナックエンドウとも呼ばれ、米国で改良されわが国に1970年代末に導入された。種子がある程度大きくなってからさやと種子を食べるものである。さや独特の香りが乏しいが塩ゆでをしてそのまま食べたり、マヨネーズをつけたり、天ぷらその他いろいろに使う。近年、中国から輸入されるとともに国内でも栽培が増えている。

 

 栄養的には、糖質,蛋白質,ビタミン類などに富む保健野菜で、濃緑の色彩が愛好され、煮合せ,和え物,卵とじ,天ぷら,吸い物の実,五目ずしの彩(いろど)り,スープの実,サラダに、そしてバター炒めにして付け合わせとする。2022年の収穫量は19,300t、構成比は、①鹿児島25.8%,②愛知7.7%,③福島5.5%,④熊本5.3%、そして和歌山,広島,静岡,長崎,三重,兵庫…と続く。

 

選び方と保存  濃緑色で厚さが薄く実入りの目立たないもので、サヤがピンと張って鮮度がよいもの、しなびや変色,黄ばんでいないこと。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ、さっとゆでて冷凍もよい。

旬  3~6月。

*2022年の国内収穫量が19,300tに対して、輸入の生鮮品が483t(ペルー39.5%,タイ28.5%,中国 22.2%,グアテマラ9.0%)と冷凍品が10,743t(中国57.8% ,アメリカ17.2%,ニュージーランド16.2%)となって、冷凍品を含んだときに全体の中では輸入が36.8%を占めている。

 

メンデルの法則

 

 オーストリアのメンデル(1822~84)が1865年、エンドウを使った実験の結果、遺伝の法則を「植物の雑種に関する実験」として発表したのは有名な話である。しかし、当時はこの卓越した成果もすぐには認められず、1900年(明治33年)に再発見され注目された。

 

 遺伝現象を解析したもので次の3つがある。

①優劣の法則…遺伝形質には優勢と劣勢がある。

②分離の法則…孫の代に親の形質が分離して出る。

③独立の法則…二対の対立形質は独立して遺伝する。