80. セ リ    芹

 

   数少ない日本原産の野菜のひとつでセリ科、日本各地,東南アジア,オーストラリアまで広く分布している。その性質がひとところにせまって(集まって)群生するので、せまりの中略で「せり」の語が出来たという。「古事記」(712年),「万葉集」(8世紀末)にも名前が出ており、昔から利用されていた。

 

   春、早く萌(も)え出た若芽はとくに香りがよく、その歯ざわりと美しい色彩は、ひとしお早春の息吹きを感じさせてくれる。近年、水田を利用して大量栽培を行ない冬野菜として出荷されている。これは、親株のつるを2節ぐらいに切り刻んで水田にまき、次第に、水を深くして芽を伸長させ収穫する。春の七草のひとつで、アクが少なくビタミンA,B2,C,カルシウム,リン,鉄など各種のビタミン,ミネラルが含まれている。浸し物や和え物,すき焼や鍋物、そして、吸い物,雑煮などの青みとしても用いられる。2020年の収穫量は1,070t、構成比は、①宮城39.6%,②茨城23.0%,③大分13.3%、そして秋田,高知,山形,熊本…と続く。

 

選び方と保存 葉の色が濃く折れたり黒ずんでいない新鮮なもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬 12~3月。

 

七草セットはいつからか

 

   正月七日に七草粥(ななくさがゆ)(七草については,歳時記に記載があります)にして食べると、万病を治し悪魔を除くといわれている。「せり,なずな,ごぎょう,はこべら,ほとけのざ,すずな(かぶ),すずしろ(大根)」。近年、七草粥は健康志向の料理として見直されており、年々人気が高まっている。七草セットにしてパック詰めになったもの、刻んでフリーズドライ化をしたもの、レトルトパックのお粥タイプも出回り簡便さが受けている。この七草セットはいつ頃から始まったのだろうか? 聞き取りをした中で、東京シティ青果株式会社の藤田取締役より次の話がありました。「昭和57年(1982)にイトーヨーカドーのバイヤーより要請があって、セリ場で大根,セリなど7種はなかったが集めてパック詰めをして出荷した。翌年は茨城県の出荷組合に委託、そのあと昭和60年に入ると各地から出荷されるようになり、今の主力産地は大分,佐賀となっている」。