117. ニガウリ  苦瓜 ゴーヤ

 

   熱帯アジアが原産のウリ科の野菜で、わが国へは江戸時代初期の「多識篇」(1631年)に記載があることから、それ以前に中国から伝わり、独特の苦味(にがみ)があることから名前が付いた。果物のレイシに似るので別名ツルレイシ,レイシ,ゴーヤ(沖縄県ではゴーヤーと語尾が伸びる),ニガゴリ。東南アジア,沖縄などの高温多湿の所でよく生長し重要な夏野菜として利用されている。沖縄を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)が放映されたが、この中で郷土料理やニガウリが何回も茶の間に流されたことから、一気にニガウリが普及するとともにスーパーでの定番野菜の地位を獲得した。

 

   つる性で長さ2m位になり、巻きひげで他の作物にからみつく。このきゅうりに似た、こぶ状の突起がたくさんある若い果実の種子部分を取り除いて食用とする。果形は長形種,中長形種,短太種とあり、果皮は濃緑色,緑色,短緑色,黄白色,白色ととりどりである。ビタミンCがきゅうりの10倍(100g中に120㎎)と多く加熱してもこわれない、また独特の苦味(モモルデシン)は胃液の分泌を盛んにし、消化もよくなるので夏バテ防止に効果があり、ほかにも血糖値の改善や疲労回復,美容効果がある。一般的な料理はゴーヤチャンプルーで、卵,もやし,玉葱,キャベツ,豆腐,豚肉などと一緒に混ぜて炒めたもの。ほかに漬物、酢の物,汁の実とする。苦みの軽減には鰹節と一緒に使うことで、鰹節のだしがらにゴーヤの苦味成分が吸着する。また熱水で3分程度茹でるとよい。最近、サラダ用の苦みの少ない品種も開発されている。

 2020年の収穫量は17,900t、構成比は、①沖縄39.8%,②宮崎14.5%,③鹿児島10.8%,④群馬10.6%、そして長崎,熊本,茨城,大分,栃木…と続く。

選び方と保存 長さ15㎝前後で太く、緑色が濃く全体の色が均一なもの、過熟になると内部の種が真っ赤に色付く。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。細く輪切りにして冷凍もできる。

旬 7~8月。


 

ゴーヤーの日・5月8日

 

 ゴー(5),ヤー(8)の語呂合せと、5月からゴーヤー(苦瓜)の出荷が増えることからゴーヤーを広く知ってもらい、もっと食べてもらおうとJA沖縄経済連と沖縄県が1997年に制定した。沖縄で当たり前に食べられているゴーヤの本土での普及拡大をめざす日です。ちなみに、数字の並びを反対にした8月5日は「裏ゴーヤーの日」とされており、この間は美味しい旬の季節です。

緑のカーテン

 

 ニガウリは暑さと強い日ざしに強くよく伸びるので、家の壁面や窓辺で育てて夏の間、太陽光を遮断し植物の蒸散による気化熱を利用して、建物内の温度上昇をおさえてくれる緑のカーテンには最適の植物です。記録に残る猛暑の2010年、各地で効果がありました。加えてゴーヤなら夏の収穫が楽しみ、ビタミンCが豊富で夏バテ防止にもなる。ほかにも、ツルが伸びて巻き付く植物がよく、ヘチマやアサガオ,そして香りのよいヨルガオもお勧めです。

ウリミバエの根絶

 

 ウリミバエは体長わずか8ミリの害虫だが、ニガウリ,カボチャ,スイカ,パパイヤ,キュウリ,ピーマンなどの野菜に卵を産み付けると、瞬(またた)く間にウジが沸き腐ってしまう。わが国へは大正8年(1919)に沖縄最南端の八重山諸島に侵入した。その後島から島へと北上を続けて昭和45年には久米島へ、そして昭和47年(1972)には日本への復帰に沸く沖縄本島でも発見された。この為、すぐに沖縄産の青果物の持ち出しは制限された。この解決のためにはウリミバエを根絶するしかなく、そのために「不妊虫放飼(ほうし)法」がとられた。これは放射線・コバルト60を当てて不妊化した雄を大量に自然界に放し、生殖能力を持つふつうの雄が雌と交尾する機会を奪う。すると次に孵化する雌の総数が減る。これを繰り返すことによって最終的に雌雄とも根絶やしにする。

 

 1975年の久米島から始まって、宮古島,沖縄本島と根絶し、最後の八重山群島が1993年に駆除確認調査が終わった。沖縄本島では冷却麻酔した成虫をヘリコプターでまくという方法をとり、この中で県内に放された不妊虫は530億匹,費用は170億円,延べ32万人が投入された。これにより、野菜などの出荷禁止措置が解除された。現在も再侵入に備えて不妊化したウリミバエを野外に放している。

 

イモゾウムシと不妊虫放飼法

 

 イモゾウムシは、熱帯,亜熱帯に広く分布する体長3~4mmのサツマイモやエンサイ(空心菜)の害虫で、とくにサツマイモが食べられると異臭と苦味が出て、食用や飼料用に利用できなくなる。 日本では奄美大島以南の南西諸島,小笠原諸島だけにいて、植物防疫法により沖縄のさつまいも等は本土に持ち込めない。2008年には鹿児島県の指宿市で発見された。この根絶のために、ウリミバエ根絶事業で開発された不妊虫放飼(ほうし)法が2001年から沖縄県の久米島で実施中である。