118. ニ ラ 

 

 中国が原産のユリ科,日本には古く弥生時代に入ったといわれ、万葉集(8世紀末)などに名前がよく出て来る。加美良(かみら),古美良(こみら),美良(みら)などと呼ばれ、にらになったといわれる。宮中の女房言葉で「ふたもじ」というのは、ネギ(古名はキ)を「ひともじ」と読んだことに対して言ったもの。中国では特有のくさみと鮮やかな色を生かして料理に欠くことのできない素材だが、わが国では家庭菜園などでわずかに作られていた程度で、消費が増え始めたのは1960(昭和35)年代後半から、ギョウザなどの中華料理が普及したためである。その後、1975~1980年にかけて急増したが最近はやや減少している。生育の適温は20~25℃で寒さに強く、種子をまいて1年近く根株を充分に養成する。そして葉の生長はこの貯蔵養分によってまかなわれ、収穫後20日間程で伸びるので、期間中に4~5回の収穫をする。品種は次の通り。

①大葉ニラ…栽培の中心となっており、葉幅が広く柔らかく品質がよい。代表種はグリーンベルトである。軟白栽培したものは黄ニラと呼ばれている。

②小葉ニラ…葉は細くて小柄だが丈夫で、低温の伸びがよい。

③花ニラ…とう専用種。

 

 ニラはビタミンA(カロテン),C,E,カルシウムなどが多く、ビタミンAには粘膜を保護してウイルスや細菌の侵入を防ぎ、病気ヘの抵抗力を高める働きがあり、緑黄色野菜の優等生である。臭いの成分はメチインで、にんにく特有の臭気を持つアリインは含まれず、B1の多い食品と一緒に食べると効果的といった記載は間違いである。昔は薬用が主で、整腸,疲労回復,感冒の予防などに用いられた。中華料理の素材のほか、鍋物,みそ汁,お浸し,卵とじなどに料理される。

 2022年の収穫量は54,300t、構成比は、①高知26.3%,②栃木15.3%,③茨城12.5%、そして宮崎,大分,北海道,山形,福島,群馬,千葉…と続く。

選び方と保存 葉の緑が濃くて葉の幅が広く厚みのあるもの、葉先の変色,しおれには注意。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬 3~6月。

 

もつ鍋ブームとニラ

 

 1992年の流行語大賞になったもつ鍋、鶏などでダシを取ったスープに牛の内臓をニラやキャベツと一緒に煮て醤油で味をつけたもの。バブル時代の反動で安くて栄養があっておいしいという料理の原点に戻り、若い女性だけでなく、鍋スープの販売などで家庭にも浸透をしたが1〜2年と短命に終わる。それでもその後の健康ブームの流行によりキムチ鍋,豆乳鍋などもあって、鍋物需要におけるニラの地位はしっかりとしている。全国の生産量を見ても1982年以降6万トン台を推移していたが、2017年以降は5万トン台となっている。