122. ネ ギ 

 

   中国西部原産のユリ科の越年生野菜で、東洋を代表する野菜のひとつといえ、欧米ではほとんど栽培されていないが、中国では3000年以上前から利用されてきた。わが国では、「日本書記」(720年)にその名があり、古くは「キ」(葱・紀・岐)といい一字で書かれたことから「ひともじ」と呼ばれていた。

 

   冷涼な気候を好み、適温は15~20℃だが寒さにも暑さにもかなり耐える。ネギは、葉,葉ざや,根からなり、葉ざやは生長とともに茎状となる。この葉ざやの白色部分を食べる根深(ねぶか)ネギ(根の部分を深く土の中に入れて軟白させることからついた名で、寒さに強く群馬,埼玉,千葉に多いことから関西では東京ネギという)と、葉の青色部分を食べる葉ネギ,青ネギ(九条ネギ,あさつき,わけぎなどで暑さに強く関西地方に多い)に大別される。これは植物自体の温度適性にしたがって分布し、好みはそれにともなって生じたとおもわれる。品種は次の通り。

①加賀群…東北,信越,北陸,北海道などの冬期冷涼な地域に分布し、群馬の下仁田(しもにた)葱に代表されほかに加賀ネギ,岩槻ネギなどがある。

②千住群…加賀群と九条群との中間型で、根深ネギといえばこれを指す。葉色により黒柄(くろがら),合柄(あいがら),赤柄(あかがら),合黒(あいぐろ)系があり、今は千住合黒系が主流。ほかに深谷ネギ,赤ネギなどがある。

③九条群…耐暑性に富み、青ネギともいわれ博多万能葱(商標名)に代表され、九条太,九条細,坊主知らずなどがある。

ほかに、芽物栽培したものに芽ネギがある。これは密植をして、発芽まもない60mm前後,針のように細いネギで、独特の香りと辛味を賞味し吸い物とするほか、近年は寿司ネタにも使われる。


   タマネギ、ネギの刺激臭と辛味はイソアリインで組織を傷つけても、アリシンはほとんど生成しない。B1の多い食品と一緒に食べると効果的といった記載は間違いである。栄養的には緑色部にビタミンを、白色部にカルシウムを豊富に含む。料理には、特有の刺激を有する香味を利用して、めん類の薬味としたり、肉や魚の生ぐさみを消し風味を増すので、すき焼き,水炊きなどに使われる。周年出回っているが、シュンは霜のかかる初冬から早春のころで、一段と甘味を増し柔らかになる。市場で高値販売されるのは、秋冬ネギで軟白部の長さが30cm以上で太さが1.5~2cm,春夏ネギで軟白部の長さが25~30cmで太さが1.5~2cmであり、これ以上細いと安くなる。

   2022年の栽培面積は21,800ha,収穫量は442,500t、収穫量構成比は、①茨城11.9%,②千葉11.9%,③埼玉11.9%、そして北海道,群馬,大分,長野,秋田,栃木,青森,鳥取,福島,新潟,静岡…と続く。

選び方と保存   白い茎が長くよくしまって弾力があり、緑の部分とはっきりと分かれてつやのあるもの。保存はラップに包んで冷蔵庫へ。千切りにして切り口を軽く乾燥させて凍結するとくっつかずに使いやすい。

旬   10~12月。

緊急輸入制限の発動

 

   2001年4月にネギ,生シイタケ,畳表(たたみおもて)(イ草)の3品目の輸入量が急増して国産品価格が急落したことから、緊急輸入制限(セーフガード)が発動された。ネギを例にすると2000年の輸入量は37,000tと過去5年間で25倍に達した。その背景としては、①1997年のアジア通貨危機により自国通貨が下落、外国で安く売れることからアジア各国の輸出が増えた。②中国では都市と農村の所得格差が広がる中で所得のよい野菜の作付け面積が拡大し、97年から生産過剰となり伴って生鮮野菜の輸出量が98年から増え続けている。輸出により国内相場の下支えと外貨獲得の両方をねらっている。③日本の商社などが1998年の不作をきっかけとして、それまでの端境期の穴埋めとしての輸入から国内で人気のある品種のタネを持ち込み、生産を指導しての開発輸入に変化している。なんといっても人件費は日本の10分の1以下、国産品の半値以下で卸せる事が魅力となっている。

 

  2004年の輸入量は70,152tと国内生産の13%を占めていたが、2006年の残留農薬への規制・ポジティブリスト制度、2007年の12月下旬の中国製冷凍ギョーザの中毒事件を契機として減少していた。 2021年で国内収穫量が440,400tに対して中国を主とした輸入が44,429tと全体の中では輸入が9.2%を占めて、停滞状態です。

 

(かも)ねぎ

 

   「鴨(かも)が葱(ねぎ)を背負(しょ)って来る」という慣用句の略である。鴨が鍋(なべ)の具材である葱(ネギ)を背負って来れば、それを捕まえるだけで鴨鍋(かもなべ)を作ることができる。この事から「鴨ねぎ」といえば、まるで注文したかのように自分に都合のよい状況になることをいう。

 

 鴨鍋は薄く切った鴨肉に葱をたっぷり入れ、白菜,豆腐などと一緒に煮込んで作る。鴨は冬に脂がのって大変おいしくなることと、葱もちょうど甘みと柔らかさが増すことから、この組み合わせは非常に相性がよい。一般的に市販されている鴨肉は殆ど真鴨と家鴨の雑種である「合鴨」である。

*写真は北海道南幌町の長ねぎの出荷箱、鴨がねぎを背負っている様子が描かれている。(2012年)