135. ピーマン Pimento

 

   熱帯アメリカが原産のナス科、メキシコ中部にあるラワカン遺跡(紀元前6500~5000年)から出土していることからこの地域が原産地とされる。コロンブスが1493年にスペインに持ち帰りヨーロッパに広まった。名はフランス語のピマン(甘唐辛子)からきているように、とうがらしの中でも辛味の少ない甘味種で、英名はSweet Pepper、おもにアメリカで甘味種の改良が行なわれた。わが国ヘは明治初期に導入されたが、生産と消費が伸びるのは、戦後の昭和20年代後半から30年代に入ってからで栄養価が高く、料理の多様性,彩りなどからである。

 

   生育適温は25~28℃と高温性で夜も18℃以上の気温と20℃以上の地温を必要とし、温度が高いほど着果がよく玉伸びもよい。花が咲いてから15~20日の未熟なうちに収穫をするので、株疲れせずに次々と実がなり順調に育つと1本の開花数は300個を越えるが、着果率は60%前後で緑色が濃く光沢のあるものほど品質がよい。最低気温が15℃以下になると花の発育が不十分になり、奇形や肥大しない石ピーマンを生ずる。このため促成栽培と呼ばれるハウス栽培が全体の面積の30%くらいで、収穫量では70%あまりを占めている。ピーマンは長期間の収穫が可能で、選果や輸送が容易なため各地で集団産地ができて周年栽培されている。種類には、一般に出回っている1個30g前後の細長く柔らかい中果種…収量が多く病気に強く作りやすく代表種として新さきがけみどり,土佐グリーンなどと、パプリカと呼ばれる大果種がある。

 

   栄養価は高く、ビタミンCは100g中80㎎と豊富でビタミンPを含むためにCがこわれにくい特長がある。体の抵抗力を強め風邪の感染を防いだり、夏バテの解消や予防に効果がある。また、ビタミンAも多く油を使って調理すると吸収がよい。生でサラダや肉詰め,油炒め,天ぷら,ピザ,スパゲティなどに料理される。香りと歯ざわりを生かすなら加熱しすぎないこと。

   2022年の収穫量は150,000t、構成比は、①茨城22.2%,②宮崎18.7%,③高知9.2%,④鹿児島8.9%、そして岩手,大分,北海道,青森,熊本,福島,沖縄…と続く。

選び方と保存   緑色が濃くはりと光沢のある柔らかいもの、皮がしなびたりヘタが腐れやすいので注意。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ、8~10℃が最適でそれより低いと低温障害でピッティング,種子の褐変,果肉の水浸状軟化など腐敗が増える。

旬   4~6月、次いで8~10月。

 

戦後とピーマン

 

 第二次世界大戦後、経済統制で多くの食料の自由販売ができなかったが、戦前からほとんど食べられなかったピーマンは項目が存在していなかったために、自由に栽培,そして販売もする事ができた。しかし、当時のピーマンは大型で肉厚、独特の青臭い香りが強いために苦手な野菜とする人も多かった。その後日本人の嗜好がしだいに肉食へと変わるなか、肉と合うピーマンはしだいに食卓の野菜に加わるようになって、昭和30年代後半から消費量が急速に伸びた。現在は品種改良が進み中型で香りやクセが少なく、肉の薄い、柔らかくて甘みの強いものが主流です。サラダや料理の色どりなどにも使用範囲が広がっている。

 

トマピー

 

 ハンガリー原産のナス科、もとはとうがらしで15世紀にコロンブスによってヨーロッパに伝わり改良されてパラデイチョン・パプリカと呼ばれている。これをわが国で10年かけて性質を固定して1997年よりトマピーの名前で販売されている。重さは100~150g、形はトマトのように丸いことから名付けられたもので、ネーミングのおもしろさと栄養価の高いことが人気となっている。ビタミンAやB2はピーマンの5倍,Cは2倍もあり、生でサラダやピザ,スパゲティ,野菜炒め,天ぷらなどに料理される。