141. フ キ

 

   日本原産で各地の山野に自生する、キク科の雌雄異株の多年草。ふきとは、ふぶき(その中に穴があって折れば糸の出るもの)の短縮されたもので、古くは鬼蓮(おにばす)を水ふぶきといい、「新撰字鏡」(898年)や「本草和名」(918年)にも栽培の記録がある。

 

   ふつうは春に花芽であるふきのとうが地下茎からのび、ついで別なところから葉を出す。半日影で湿気の多い土地に適し、地下茎で繁殖する。食用部はおもに葉柄で、多肉であることが大切である。葉柄にはビタミンCをわずかに含むが、皮をはがしてアク抜きをすると大部分は失われてしまうが、たくさんの繊維が含まれており、これは腸の活動を盛んにして便秘を改善する。また、特有の香りと多汁質の柔らかい歯ざわりが好まれ利用されている。ふきをゆでるには、新鮮なものを鍋に入る長さに切って全体に塩をふり板ずりをして、熱湯からはみ出さないようにしてゆで、青色に変わったらすぐ冷やすと美しい青緑色になる。そのとき、少しでも空気に触れた部分は褐色になる。ゆでてから皮をむいた方がアクで指先が黒くならない。煮物や和え物、炒め煮,汁の実,みそ漬けにする。葉はビタミンを多量に含んでいるので捨てずに、つくだ煮,炒め煮にする。

 

   ふきは地下茎の株分けによって繁殖するために品種は少ない。

   2020年の収穫量は8,980t、構成比は、①愛知39.8%,②群馬12.8%、そして大阪,北海道,徳島,秋田,長野…と続く。

 

選び方と保存   葉は緑色で全体にみずみずしく、茎のしっかりした香りの高いもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬 3~5月。

 

ラワンブキ

 

   北海道足寄郡足寄(あしょろ)町(歌手・松山千春の出身地)の東に位置する螺湾(らわん)地区には、日本一大きなフキ,アキタブキと同系統と見られ、草丈2~3m,茎の直径が10cmにもなるラワンブキが自生する。明治の開拓時代には草丈4m、葉の最大径が2mに達するものもあったようで、こんな大きな葉の下であればコロポックルがいても不思議はなさそうである。  

この地区は豊富な螺湾川の水と砂質の土壌、周辺の樹林と言った環境がふきの生育に大きく影響している。一時は乱獲や河川の氾濫(はんらん),改修により自生地が減少していたが、昭和63年から畑での栽培に取り組み、資源の保護にも努めている。6月中旬頃の収穫期になると、太い茎を切るたびにフキの香りが辺り一面に広がる。足寄市街からオンネトー方面に30kmほど行ったところにラワンブキ観賞ほ場が整備され、見頃は6月下旬から7月下旬くらいまでです。


コロポックル Korpokkur

 

   アイヌ語で「蕗(ふき)の葉の下の人」という意味、アイヌの伝説にでてくる小人でいたずらもするが、人間に幸せをもたらしてくれる神でもある。彼らは雨降りのとき蕗1枚の葉の下に10人も入るほど小さい。彼等は人前に姿を見せる事をあまり好まないが、人にモノを贈るのが好きで、ご馳走や漁で捕れた魚などを戸口の隙間から手だけを出して置いていく。隠れるのがうまく声はすれども姿は見えないことが多かった。あるときアイヌの若者がコロポックルの姿を見ようと贈り物を差し入れた手をつかんで屋内に引き入れた。これ以降アイヌの人々がコロポックルの姿を見ることはなくなった。

 

アイヌとウポポイ

 

   アイヌは人類学的には日本列島の縄文人と近く、本州以南で農耕文化の弥生時代が始まったころ、北海道では狩猟採集の続縄文文化が継続。7世紀以降、擦(さつ)文(もん)文化が始まる。その後、擦文文化を基礎にオホーツク文化と本州の文化を摂取してアイヌ文化は生まれ(本州は鎌倉時代)、北海道とロシア東岸沖の千島列島、樺太を居住圏として先住していた。アイヌは、元来は狩猟採集民族であり物々交換による交易を行っていた。15世紀に和人が交易のために進出して、1457~1789年にかけて多くの紛争が起こり、和人がアイヌを制圧した。政府は1899年(明治32年)に北海道旧土人保護法を制定し、アイヌの従来の制度を撤廃して同化しようとした。アイヌは土地を没収され、日本の慣習の適用を余儀なくされた。2019年、国会はアイヌ民族を日本の先住民と認めて支援を行うアイヌ民族支援法を制定した。これを受けて2020年7月には、北海道白老町にアイヌ文化発信の拠点として「民族共生象徴空間・ウポポイ」がオープンした。アイヌは、文字を持たない民族と言われ、多くの物語を持ち神話や伝説などを子や孫へと口伝えで伝承「ユカラ」してきた。北海道の地名にはアイヌ語が元になったものが多く、「ニセコ(切り立った崖)」や「知床(地の果て)」など、「トナカイ」「ラッコ」「シシャモ」などもアイヌ語、 現在、アイヌ語を母語として話すことのできる人はわずか数人とされ、ユネスコによって「極めて深刻」な消滅の危機にある言語と認定されている。

 

*ウポポイとはアイヌ語で「おおぜいで歌うこと」を意味する。写真はアイヌ文様