162. ミズナ 水菜

 

 わが国が原産のアブラナ科,不結球菜類の総称である漬菜(つけな)の一種。野生種は地中海沿岸,ヨーロッパ北部,中央アジアなどに広く分布し、紀元前5世紀ごろにとくに中国で発達した。わが国でもこの漬菜が全国各地の風土にあった形に品種が分かれ、そのひとつが水菜でほかに関東地方の小松菜,中国地方の広島菜などがよく知られている。「常憲院殿実記」(1683年)に記録があり京都市南区の九条,東寺付近で水を畔間に入れて作るので水入菜と呼ばれ水菜となった。枝がいくつにも分かれることから「千本菜」、関東では「京菜」といわれる。京都は海から遠く魚介類の入手が困難であった為に野菜を中心とした料理や漬物に工夫が凝らされ、それにあった風味,品質のすぐれた「京野菜」が生まれた。

 

 独特の芳香と繊維分を持ち耐寒性に富み、霜(しも)にあたった方が品質がよくなる。一株が分結して10数本の大株になる。その分結した濃緑のぎざぎざした葉と、白くてすらりとした葉柄は、北風が肌身にしみる酷寒期でもみずみずしさが感じられ重宝されている。

 

 栄養分はキャベツとほぼ同じ、とくにビタミンAとC,カルシウムが多く、肉のくさみや臭いを消すので水炊きやすき焼きに、そして冬の煮物や漬物,最近は生でサラダへと用途が広がっている。9~10月に播種して、11~翌年の3月ごろまで収穫する伝統的な大株のほか、若い株を周年栽培する方法がある。

2022年の収穫量は39,000t、構成比は、①茨城49.5%,②福岡8.4%,③京都7.0%,④兵庫3.9%、そして滋賀,埼玉,大阪,群馬,広島,北海道…と続く。

選び方と保存  葉のみずみずしく、緑の濃いもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬  10~2月。

 

水菜の普及

 

 関西地方では冬場を中心にポピュラーな野菜であったが、昭和62年(1987)・京の伝統野菜の認定、そしてブランド化(1989年)を契機にハウス栽培・200gの袋入りの形態で関東方面への出荷を始める。茨城県で水菜の栽培が始まったのは2000年からで、翌年から本格化する (全農・茨城県企画課調べ) 。それと共に、サラダへの提案など生で食べる新たな食べ方として受け入れられた。2004年には農林水産省の地域特産野菜統計に水菜が記載され、茨城県が栽培金額のトップとなって今に至る。

 

京の伝統野菜

 

 京都は長く政治文化の中心地として栄え、寺社を中心に精進料理が発達するなかで貴重な京野菜が生み出された。この中から京都府によって認定されたのが京の伝統野菜。昭和62年(1987)の認定開始以来、現在まで41品目の野菜が認定されており、その中には、京の伝統野菜に準じる野菜の品目や、既に絶滅してしまった野菜の品目も含まれる。海老芋,賀茂茄子,京筍,京山科茄子,九条葱,くわい,鹿ヶ谷南瓜,聖護院大根,伏見唐辛子,堀川牛蒡,水菜,壬生菜…。同様の伝統野菜が各地にある、加賀野菜,江戸野菜,大和野菜,なにわ野菜,飛騨・美濃伝統野菜,信州の伝統野菜など。