19. ネクタリン Nectarine

 

 ももの一種だがもも特有の毛がなく、すももの肌に似て油桃(ゆとう)ともいう。ネクタリンという名は、ギリシャ神話にでてくる神様の甘い美酒のことをネクタルといい、この名をつけるほどおいしい果物ということ。

わが国でも古くから作られていたが、果樹として栽培されるようになったのは、明治になって欧米から優良品種が導入されてからである。雨の多い気候の中で、裂果のしづらいもの,日持ちのよいもの,食味は酸が少ないことなどが要求され、ももとの交雑育種によりそうした新しい品種も作られつつある。

 2021年の栽培面積は127ha,収穫量は1,134t、収穫量構成比は、①長野53.2%②福島20.9%,③山梨19.0%、そして青森…と続く。2021年の品種別栽培面積構成比は、①秀峰22.2%,②ファンタジア17.1%,③メイグランド15.6%,④ハルコ9.2%、そしてフレバートップ,倉島ネクタリン,サマークリスタル,スイートトップ…と続く。5年前の2016年と比べたときに栽培面積は83.62%と減少、その中でフレバートップ,スイートネクタリン黎明だけが増加している。

選び方と保存  色がよくのって果皮のしなびていないもの。保存は冷蔵庫へ。

旬  7~9月。

(1) ファンタジア Fantasia

 

 ゴールドキングにレッドキングを交配して、1965年に発表したものでカリフォルニアの主要品種。果実は大きく220g以上,果皮は濃赤色によく着色し、果肉は締まって日持ちがよい。甘酸多く品質良好、豊産で無袋栽培も可能である。産地は福島,長野、熟期は8月中~下旬。

 

(2) 秀峰(しゅうほう)

 

 長野県上田市の曽根悦夫氏が昭和37年に、興津と倉方早生の中から発見したもの。果実は円形で200~250g前後と大きく、黄肉で甘味が多く品質がよいが、裂果しやすく袋掛けを必要としやや作りづらい。晩生種で日持ちがよく、産地は長野,福島,青森、熟期は9月上~下旬。

 

(3) その他

 

①サマークリスタル…長野県農業試験場で育成、果実の大きさは150~200g前後で果形は円形、果皮は全面に着色する。果肉色は白色で果肉内の着色は少ない、果肉は密で締まり溶質、糖度は10~12度、ネクタリンとしては酸味が少ないため食べやすい。産地は長野、熟期は7月中~下旬。

 

②黎明(れいめい)…山梨県果樹試験場で反田ネクタリン×インデペンデンスとして育成。果実は短楕円形で大きさは50g前後。果皮は黄色に全面紅色に着色する。果肉は黄色で肉質は溶質。果汁は中、甘みは多く酸味は少ない。産地は山梨、熟期は7月中~下旬。

 

➂メイグランド…果実は200g前後で果皮は鮮紅色に着色、果肉は黄色。産地は長野、熟期は7月下~8月上旬。

 

④ハルコ…果実は150g前後で果皮は鮮紅色にきれいに着色、果肉は黄色で糖度が10~12度と食味はよい。産地は長野、熟期は7月下~8月中旬。

 

⑤黎王(れいおう)…山梨県果樹試験場で反田ネクタリン×インデペンデンスとして育成。果実は短楕円形で大きさは230g前後。果皮・果肉とも黄色で肉質は溶質。果汁は中、甘みはやや多く酸味は少ない。産地は山梨、熟期は8月上旬。

 

⑥フレバートップ…アメリカ農務省園芸試験場が、フェアタイム(もも)の自然交雑実生として育成,1965年に発表したもので、カリフォルニアの主要品種。果実は200g前後で豊産性,果皮は光沢のある赤できわめて美しく、果肉は黄色で締まって日持ちがよい。酸味がやや強いが、裂果が少なく無袋も可能。産地は長野、熟期は8月上~中旬。