22. プラム Plum 李  すもも

 

   原産地は北半球でバラ科に属し、世界各地に多くの種類が分布している。果実の味が甘酸っぱいことから、酸っぱい桃の意ですもも・李となったといわれる。初夏の訪れを感じさせてくれる果物でもあるが、早生品種は未熟で酸味の強いものが出回ることも多く、プラムは酸っぱいという評価にもなっていた。それが糖度が高く食味に優れた貴陽の登場によって見直しのチャンスとなっている。実が成るためには花粉の受精能力が影響して、ソルダムは他の品種の花粉でないと結実しない。ところが、サンタローザ,メスレー,太陽などは1本で結実する。

    2023年の栽培面積は2,590ha,収穫量は17,100t、収穫量構成比は、①山梨33.3%,②長野13.2%,③和歌山12.2%,④山形10.1%、そして青森,福島,北海道,大分,鹿児島…と続く。2021年の品種別栽培面積構成比は、①大石早生33.7%,②ソルダム18.1%,③太陽12.5%,④秋姫6.4%,⑤貴陽5.9%,⑥カラリ(奄美大島)4.8%、そしてサマーエンジェル,サンタローザ,菅野中生,レートソルダム,紅りょうぜん,大石中生,サマービュート,サンルージュ,…と続く。5年前の2016年と比べたときに栽培面積は77.9%と減少、増加しているのはサマーエンジェル,菅野中生,サンルージュ,恋花火,サンセプトなどで、その他は減少している。

1,東アジア系 …日本すももとサイモンスモモがある。

中国原産で、わが国へは弥生時代以降に伝わり古事記や万葉集に記載 があり、各地で作られたが品質はよくない。

2,ヨーロッパ系…野生型としてミロバランスモモ,スピノーサスモモがあり、この下に次の2種がある。

3,アメリカ系…アメリカナスモモ,カナダスモモ,チカソウスモモ,ビーチスモモ,マンソニア

ナスモモ,ホーチュラナスモモ,パシフィックスモモ,メキシコスモモなど。

耐病性,耐寒性にすぐれ台木として価値があるが、品質はよくない。

 

4,交雑種…日本のすももが明治以後アメリカに渡り、いろいろ交配,改良されて多くの 優良品種が生まれた。現在わが国で栽培されているのは、大正時代以降に逆輸入さ れたこうした品種が主で、耐寒性が強く夏の高温多湿にも耐える。

 

 

ルーサー・バーバンク Luther burbank

 

   1849~1926年。エジソン,ヘンリーフォード,バーバンクをアメリカの3大発明家とさえ呼ぶほどに育種家として知られ、育種を志す者にとっては神様的存在であり、3000を超える野菜や果樹の交配や育種を行った。彼の名前をつけたジャガイモ・ラセットバーバンクは、いまでもアメリカでもっともたくさん作られている。ほかにも、とげなしサボテンやプラムのビューティ,サンタローザなどがよく知られている。

 

(1) 大石早生

 

   福島県伊達郡保原町の大石俊雄氏が昭和14年、フォーモサとビューティを交配して選抜,育成したところからこの名があり、昭和27年に登録品種となった早生の代表品種。果実は80g前後で果皮は鮮紅色,果肉は淡黄色で甘味があり品質はよいが、日持ちはよくない。2021年の栽培面積は479aとプラム全体の33.7%を占めてトップとなっている。産地別では、①和歌山38.3%,②山梨29.6%,③山形10.8%,④長野9.7%、⑤青森5.3%、そして福島,大分と続く。熟期は山梨で6月下旬。

 

(2) サンタローザ Santa rosa

 

   アメリカのルーサー・バーバンク氏が日本スモモを育成したもので、研究場の地名をとって命名され、大正14年にホワイトなどと同様に岡山県の苗木商によって導入された。わが国では三太郎,プラムコットとも呼ばれている。果実は100g前後,果皮は鮮紅色で,果肉は緻密で柔軟多汁,甘味があって芳香もあり品質がよい。産地は和歌山,山梨,埼玉,青森,広島,奈良、熟期は7月上~下旬。

 

(3) ソルダム Soldum

 

   仙台の伊達家の養種園が明治40年に、アメリカより導入した品種で、「エース」に似ていると言われるがアメリカにソルダムの名前はない。その後、大正6年ころより広く栽培されるようになり、今では大石早生とともにプラムの代表品種となっている。果実は150g前後と大石,ビューティの2倍ちかく、果皮は淡い緑に果肉の紅が脈状になってすき通って見え、果肉は濃紅色で柔らかく多汁,甘酸ともあって味は濃厚である。果面に白い花粉を有し、外観は極めて美しい。2021年の栽培面積は258haとプラム全体の18.1%を占めて大石早生に次いでいる。産地別では、①山梨57.9%,②和歌山12.2%,③山形9.6%、そして長野,青森,福島…と続く。熟期は7月中~下旬。

 

(4) 貴陽(きよう)

 

 山梨県中巨摩郡甲西町の高石鷹雄氏が、太陽の交雑実生より選抜した品種で1996年に登録された。果実は大きく平均で200g、大きいと300gを超えるものがある。果実は円形で果皮は淡紅と太陽よりは薄い、果肉は白色で肉質はよく糖度は14度前後。三倍体であることから結実が非常に不安定で、他の品種の花粉で人工授粉をする必要があり、太陽が4回で結実するのに対し、貴陽は8回も必要とする。また、収穫近くになると果底部に輪紋が出て雨がたまると裂果を起こすので、ロウ引きの傘を掛ける必要がある。産地は山梨,長野,山形,秋田、熟期はソルダムと太陽の間で7月中~8月中旬。

 

(5) 太陽

 

 山梨県塩山市の雨宮一正氏が昭和12年ごろ、アメリカから多くの品種を導入,試作した中から発見されたもので品種名などは不明である。昭和41年ころに命名された。果実は100~150g,果皮は全体に紅く着色し、果面は厚い花粉でおおわれて美しく、果肉は白色で糖度13~14度と甘く肉質はよい。日持ちも大変よく常温下で10日間くらいは変化がない、半面果皮が弱く傷つきやすい。自家不和合性のため結実が非常に不安定で、他の品種の花粉で3回以上の人工授粉をする必要がある。産地は山梨,長野,山形,和歌山,群馬,青森、熟期は8月中旬。

 

(6) 秋姫

 

 秋田県湯沢市の小嶋昭一郎氏の果樹園で、昭和30年代後半に種子親不明,偶発実生として発見

された。昭和63年に中島天香園が「サープライズ」として出願したが、「秋姫」として1991年に変更・登録された。果実は大きく200~250g、果頂部がやや尖った円形~偏円形で、黄色の地に紅紫色に着色し外観が美しい。果肉は黄色で緻密,糖度が高いが、追熟をして果肉が軟化したときが多汁で食味がよい。産地は山形,長野,青森、熟期は9月中旬~10月。

 

(7) その他

 

①カラリ・花螺梨…昭和10年に鹿児島県立糖業講習所の農林技師,牧義森氏が台湾から導入したもので、南方系のスモモのであることから鹿児島県奄美地域を中心に栽培されている。ガラリとも呼ばれている。栽培が広がった理由は、自家受粉するので受粉樹や人工授粉の必要がなく豊産性なことであろう。果実は50g前後で真っ赤な果皮と果肉と特有の風味があり、果肉が硬く酸味は強い。カラリに含まれるアントシアニンは成熟とともに増加して、とくに果皮部に多く、他のスモモ品種の数倍もある。このアントシアニンには強い抗酸化能があり機能性食品としての期待が高まっている。産地は鹿児島県奄美群島、熟期は5月下~6月中旬。

 

②サマーエンジェル…山梨県果樹試験場が1991年、ソルダムにケルシーを交雑して2005年に登録された。果皮は鮮紅色で果実は大きく160g前後になり、糖度が16度と高く果汁が多く食味が優れる。また玉揃いもよい。産地は山梨、熟期は7月上~中旬。

 

③紅りょうぜん…福島県の民間育種家の菅野幸男氏が交雑実生より選抜した品種で昭和62年に登録された。果実の大きさは100~150g、果頂部がやや尖った偏円形で全面に紫紅色に着色する、果肉は淡黄色で果汁が多く甘味が強い。核は小さく日持ちがよい。産地は山形,長野,福島、熟期は大石早生のあと7月中~下旬。

 

④ケルシー Kelsey…別名,甲州大巴旦杏(こうしゅうおおはたんきょう)。山梨県中巨摩郡甲西町の望月源太郎氏が、嘉永年間に長崎から苗木で持ち帰ったと伝えられている。その後、明治10年にアメリカに渡り、カリフォルニア州バークレーのケルシーが栽培してケルシープラム、又は、ケルシージャパンと呼ばれた。それが大正末期に逆輸入されたもの。果実は150gと一番の大果で果頂部がとがっており、果皮は緑色から黄色,果肉も黄色,甘く香りもあるが、欠点は空洞果が出来やすいことである。産地は山梨、熟期は8月中~9月上旬。