24. ベリー類

 

 ベリー類とは、液果類とほぼ同義で庭や野原,森の中で採れる小さな食べられる実のことをいい、キイチゴ類,スグリ類,コケモモ類に分けられる。ブドウ,イチジク,イチゴは普通ベリー類から除く。原産地はほとんどが北欧や北米の冷涼な地域で、古くから貴重なビタミン源として利用されてきたが、本格的な栽培が始まったのは最近である。お菓子やデザートに、生食以外にもシロップ漬け,ジャム,缶詰,乾果,ジュース,ゼリー,デザートソースなど多様に利用される。

 

(1) アロニア  Aronia

 

  北アメリカが原産のバラ科の常緑低木、別名 Chokeチョーク berryベリー。花の構造がナナカマドに似ていることから、ロシアでは「黒い実のナナカマド」と呼ばれる。この黒い実にはポリフェノールの一種である「アントシアニン」がブルーベリーの2倍含まれており、老化防止や眼精疲労、高血圧や動脈硬化の予防に効果がある機能食品として注目を集めている。果実は、酸味に甘さが加わった豊かな風味が特徴で、ロシアや北欧では広く栽培され、ジャム,ジュース,果実酒に利用される。2021年の栽培面積は34ha,収穫量は37t、北海道が中心でとくに伊達市大滝地区で産地化が図られ、アイスクリーム,ジャム,ジュースなどとして販売されている。

選び方と保存  果色が赤から黒に変わって熟したもの。保存は冷蔵庫へ。

旬  10~11月。

(2) カーラント   Currant

 

 ヨーロッパ西北部が原産でユキノシタ科、欧米の温帯北部で果樹として栽培されわが国には明治の始めに北海道へ他の果実とともに導入された。和名はフサスグリ。果実はひと房に十数個の丸い果粒が付き、果実には赤色種(レッドカーラント,別名カリンズ),黒色種(英名ブラックカーラント,仏名カシス)、そして白とピンクの品種もある。光沢があり小さく中に種子を含んで、そのまま食べるよりはゼリー,ジュース,シロップなどに加工される。夏季冷涼な気候が適しており、耐寒性が強い。近年加工品の輸入とともに、食生活の変化にともなって需要が増えつつある。2021年の栽培面積は23ha,収穫量は6t、収穫量構成比は、青森が中心で、ほとんどが加工用途である。

選び方と保存 果色がのってきたころ。保存は冷蔵庫へ、冷凍にしてもよい。

旬 夏。

 

(3) グーズベリー  Goose berry

 

 ヨーロッパ,アメリカ,日本が原産のユキノシタ科、とくにガチョウやアヒルや鶏肉などのソースにするとおいしいので、goose=ガチョウのberry=実と名前が付いた。わが国原産のものはスグリと呼ばれ、長野,山梨でわずかに栽培される。ヨーロッパスグリは明治の始めに北海道へ他の果実とともに導入され、ほかにアメリカスグリがある。かん木性の低い木でトゲのあるのが特長、果実は2~8gで、色は緑,緑黄,赤とさまざまで甘く酸味があり、そのまま食べるよりはゼリー,ジュース,シロップ漬けなどに加工される。産地は山形,北海道。

選び方と保存 柔らかくなって独特の香りや色が出たころ。保存は冷蔵庫へ。

旬 夏。

 

(4) グミ

 

 日本が原産のグミ科、アジア,ヨーロッパ南部,北アメリカの寒冷地から温暖地まで分布している。高さ2~5m,常緑性と落葉性があり、ナツグミ,ナワシログミ,アキグミ,ツルグミ,マルバグミなどと種類も多いが、夏に熟するナツグミの変種のダイオウグミ,別名ビックリグミは大果でよく利用される。果実はだ円形で長さ2㎝前後、甘いが渋味もある。葉の裏や果実の表面には短毛があり、銀白色に見える。そのまま食べたり、果実酒にすると色がきれいに出る。

選び方と保存 濃紅色に果色がのってきたころ。保存は冷暗所へ。

旬 夏。

 

(5) クランベリー Cran berry

 

 ツルコケモモ科でヨーロッパ北部,北アメリカ原産。果実は球形で赤く直径1cm、沼などに生えるツルに実る。名前の由来は鶴(crane)に花が似ていると言われる。細胞の酸化を防ぐポリフェノールが豊富に含まれるとともに、特徴的に含まれるキナ酸の働き(体内で安息香酸に代謝されて尿のPHを酸性側に引き下げることから感染菌の増加を抑制する)が尿路感染症などを予防するといわれている。酸味が強く、生食には向かないが香りや色を生かして作ったソースは感謝祭(Thanks giving Day,アメリカでは11月の第4木曜日)やクリスマスの七面鳥料理には欠かせない。ジュースやジャム,菓子類などの材料として昔から親しまれ、米国のフルーツジュース市場ではオレンジ,アップルに次いで人気がある。

選び方と保存 赤く熟したもの。保存は冷蔵庫へ。

旬 秋。

 

(6) クロマメノキ黒豆木

 

 日本が原産のツツジ科で、ブルーベリーと同じ仲間。北海道や本州中部以北の亜高山帯から、高山帯の日当たりのよい適湿地に自生する高さ30~80㎝の落葉小低木。火山灰地に適した果樹で、北半球の亜寒帯から寒帯にかけて広く分布する。浅間山にとくに多く自生するので、別名浅間ぶどう。果実は紫黒色、球形からだ円形で直径7~10㎜で甘酸っぱい。生食のほかジャム,フルーツソース,果実酒などに利用する。

選び方と保存 紫黒色で白い粉(果粉)をふいたもの。保存は冷蔵庫へ、早く加工する。

旬 9月。

 

(7) クワノミ桑の実

 

 クワの木は中国が原産とされ、わが国へは3世紀ごろに蚕(かいこ)とともに伝えられた。葉を蚕(かいこ)のえさとして与えるために栽培されたが、果実としての栽培はとくにない。種類には、日本原産のヤマグワ,中国,朝鮮原産のマグワ,中国原産のログワ,カフカス原産で英名ブラックマルベリーといわれるクロミグワ,北アメリカ原産で英名レッドマルベリーといわれるアカミグワなど多数ある。果実は熟すと紫黒色となり、甘味があるので昔から子供が好んで食べる。欧米では果実用に栽培され、ジャムや果実酒,乾果にもする。

選び方と保存 果皮のしなびていないもの。保存は冷蔵庫へ、日持ちが非常に悪い。

旬 8~11月。


 

(8) コケモモ苔桃

 

 ツツジ科で北半球の寒帯および高山帯の岩石地やハイマツの下に広く自生する。別名フレップ,カウベリー。カナダ,ドイツ,スウェーデン,フィンランド,スイスなどで栽培され、わが国でも北海道から九州の高山地帯に自生する常緑小低木。同じ仲間にクランベリー,ツルコケモモがある。果実は球形で甘味と酸味が適度で、生食もするがそれ以上に香りや色を生かしてソースや菓子類などの材料として昔から親しまれている。ジャムや果実酒にも加工される。

選び方と保存 直径4~7㎜で紅色に熟したもの。保存は冷蔵庫へ。

旬 秋。

 

(9) シーベリー Sea berry

 

 中央アジア原産で中国からヨーロッパまで各地に自生している小果樹。シベリアでは特産として作られ、ロシア名はオビルピーハ,英名はsea(シー) buckthorn(バックトーン),アメリカではsea(シー) berry(ベリー),中国名は沙(サー)刺(ジ)。樹は高くても2~3mで、ヤナギのように細長い銀色の葉が枝のまわりに互生している。果実は明るい黄色からオレンジで、長さは0.9~1.3cm,糖度は2.3~7.2 度,熟すと果肉が柔らかくなって果汁が多くなるが、完熟しても酸味が強く甘味は少ない。ビタミンAとCが多く、オイルの中にはビタミンEが多量に含まれている。ジュースやジャム,ワインに加工されるが、ロシアではオイルから医薬品が市販されている。ソ連邦の崩壊(1991年12月)とともにシベリアの情報が自由に入手できるようになって、改良品種が西側諸国に知られ近年、カナダで果樹栽培が始まりだした。雌雄異株なので雄株品種を受粉樹として5m以内に植えなければならない。2021年の栽培面積は4ha,収穫量は3t、産地は北海道。

選び方と保存 黄色からオレンジ色に果色がのってきたころ。保存は涼しい所、または冷凍する。

旬 秋。

 

(10) デュベリー Dewberry

 

 アメリカの原生種から改良されたバラ科の栽培キイチゴ類の一群、栽培が始められたのは19世紀でアメリカのミシガン州,ニューヨーク州などに多く栽培されている。ブラックベリーに近い仲間で、果実は小さい核果が多数集まった集合果で、これらがいくつも密に集まって房状になる。熟すると果実は花托ごととれる。甘酸っぱく、生食のほか加工に向く。品種にはボイソンベリー,ラクレシア,ヤングベリーなどがある。

選び方と保存 6~8gで黒色に熟したもの。保存にはジャム,ジュースが一番。

旬 夏から秋。

 

(11)ハスカップ

 

 北海道では主に苫小牧市近郊の勇払原野に自生するが、本州では中部以北の高冷地に自生するスイカズラ科の落葉小低木。1m内外の背丈,果実は青みのある黒色で、球形の大豆大の実を付け糖度は9~11度だが酸っぱい、品種改良により、甘みを増したものや多く実のなるものも広まっている。名前はアイヌ語で「枝の上にたくさんなるもの」の意味で、古来アイヌの人々には「不老長寿の秘薬」といわれ珍重されてきた。別名クロミノウグイスカグラ、ヨーロッパではハニーベリーと呼ばれる。カルシウムや鉄分,ビタミン類が豊富に含まれた健康食品である。生食用にもなるがジャム,パイ,アイスクリーム,ケーキ,果汁,菓子の原料などブルーベリーと同じように使われ、多少渋味のある野生の味が楽しめる。塩漬けにしておにぎりに入れたり、果実酒にしても色がきれいである。産地は北海道で1970年頃から栽培が始まり、2021年の栽培面積は92ha,収穫量75tとなっている。

選び方と保存 濃い特有の青紫色が揃ったもの。保存はジャム,果実酒に。

旬 7月中~下旬。

 

(12) ブラックベリー Black berry

 

 アメリカの原生種から改良されたバラ科の栽培キイチゴ類の一群、ラズベリーよりは温暖な地域に分布する。アメリカで栽培が始められたのは19世紀、わが国へは明治5年ころ導入されたが普及はしなかった。木は低木で高さ1m前後になり、果実は小さい核果が多数集まった集合果で、約7gと大きい。これらがいくつも密に集まって房状になり、熟すると果実は花托ごととれる。酸味が多いので加工に向く。ジュース,ソースやゼリー、菓子類の材料とする。2021年の栽培面積は5ha,収穫量は16t、産地は、群馬,青森,秋田,千葉。

選び方と保存 熟すると果実は花托ごととれる。保存はすぐジャムやパイに。

旬 夏から秋。

 

(13) ブルーベリー Blue berry

 

 北アメリカが原産のツツジ科、樹高1~6mの低木。ネィティブ・アメリカンが食用にしていた野生種を二十世紀に入ってから改良された果樹で、ブルーは「青」,ベリーは「実」の意味で果実の鮮やかな青紫色からきている。アメリカ,カナダでは酸性の強い泥炭地に栽培されている。わが国へは昭和26年に農林省北海道農試がマサチューセッツ農試より導入したが、本格的な栽培は昭和50年代後半に稲作転換作物のひとつとして推奨され、長野,群馬,東京,岩手,山形,青森,熊本と各地で行なわれている。年平均気温が9~10℃で真夏でも25℃以下の涼しい地域が適し、降雨は年間を通じて平均してあることが望ましく、とくに7~8月は300~500mmの雨量はほしい。加えて生長に欠かせない土壌環境として、地下水位が50~60cmのところにあって、有機物を含む通気性,通水性のよい酸性の砂質土が望ましい。

果実は独特の香りをもち、みずみずしい甘酸っぱさがある。食物繊維を多く含むことから腸の病気値,動脈硬化症,糖尿病などに効果があり、ほかにも亜鉛やマンガン含量も多い。最近の調査結果では、高い抗酸化機能を持つことがわかり、その抗酸化物質はガンや老化防止にも効果があるといわれている。木の高さによりハイブッシュ(耐寒性が強い),ラビットアイ(やや耐寒性が劣る),ローブッシュ(野生種=ワイルドブルーベリー)の3種があり、品種としてはブルークロップ,スター,ブライトウェル,グレートブルー,グレーティクロップ,ディキシー,ジャージー,ホームベル,ティフブルー,ウッダード,パシフィックブルーなど。生食のほか、ジャム,ジュース,ソース,ワインや菓子類の材料とする。

 

2021年の栽培面積は1,006ha,収穫量は2,244t、収穫量構成比は、①東京14.9%,②長野11.4%,③群馬10.3%,④茨城9.1%、そして千葉,北海道,埼玉,栃木,静岡,愛媛,岩手,青森,神奈川,福島,兵庫…と続く。これに対して輸入量は生果で2,238t,冷凍で17,469tとなっている。一方、世界の年間総生産量は2022年で123万t,そのうち、①アメリカ31.7万t,25.8%、②ペルー29.3万t,23.8%、③カナダ18.0万t,14.7%、そしてチリ,スペイン,メキシコ,ポーランド,モロッコ,ポルトガル,ドイツ,イタリア,オランダ,フランス…と続く。

(資料:GLOBAL NOTE 出典:FAO国連食糧農業機関)

選び方と保存  1~2gほどの青紫色の偏球形。保存は加工が一番、ジャムや果実酒に。

旬  夏から秋。

眼の疲労回復効果

 

 第二次世界大戦中にイギリス空軍のパイロットが、ブルーベリーのジャムが大好物で毎日パンにつけて食べていた。そのパイロットが夜間、明け方の飛行で「薄明かりの中でも物がはっきり見えた」と報告したことから研究が始められ、ブルーベリーに含まれているアントシアニンに眼の働きをよくする機能のあることがわかった。人間の眼の網膜にはロドプシンという紫色の色素体があり、これが光の刺激を脳に伝え「物が見える」と感じる。このロドプシンは眼を使っていると徐々に分解し、また年をとることによっても分解する。そこでこのアントシアニン色素を補充することでロドプシンの再合成作用が活性化され、眼の疲労がとれ夜間の視力が向上し視野が広がるという効果が現われてくる。ブルーベリーの必要摂取量は生の果実で120g以上、アントシアニンの25%含有エキスで120mg以上である。色素の効果は摂取してから4時間後に効果が現れ、24時間で消失する。

 

(14) ホオズキ

 

  北アメリカから熱帯アメリカが原産でナス科の一年草、学名は「フェサリス」で、食用ホオズキ,ストロベリートマト,ほたるのたまご,恋どろぼうなどの名前で流通している。フランスやイタリアでは食用として盛んに栽培され広く親しまれているが、わが国では1990年以降に入って栽培され始めた。日当りを好み耐暑性はあって丈夫で育てやすいが、寒さにはとても弱く最低10℃は欲しい。ナス科植物なので連作は禁止。果実にはビタミンA,C,鉄分,カロテン,イノシトール(ビタミンB群の一種で細胞の成長促進に不可欠)が含まれ、コレステロールの低下,動脈硬化予防,美肌,がん予防、そして老化を遅らせる効果まである。果実は甘酸っぱくフルーティーな独特の香りがあって、生食の他、ジャムや砂糖漬け,パン,アイスクリーム,ケーキなどの飾りつけにされる。

選び方と保存 実のがく(殻)がうす茶色になったら完熟、皮が傷みやすいので冷蔵庫で保存。

旬 8~11月。

 

(15) ラズベリー Rasp berry

 

 北アメリカ及びヨーロッパが原産。欧米で改良されたバラ科の栽培キイチゴ類の一群で、16世紀にイギリスで栽培が始められ、現在欧米北部で栽培されている。土壌や気候を選ばず、強健で作りやすいことからどこでも栽培ができる。わが国へは明治5年ころ導入されたが普及はしなかった。木は低木で高さ1~1,5mになる。果実は小さい核果が多数集まった集合果で、熟すと花托から果実がすっぽりと離れる。果色は赤,黄,黒,紫とさまざまである。品種にはキューティレッド,ワインダーレッド,インディアンサマー,ゴールデンエベレスト,ファールゴールドなどがある。生食するほか独特の風味や香りや色を生かしてジャムやゼリー,ジュース,ソースや菓子類の材料とする。2021年の栽培面積は8ha,収穫量は6t、産地は北海道,秋田,山形である。

旬  夏。