32.輸入果実

 

輸入果実は南方産のものが多く、一年中出回っているのでいつでも食べられる。しかし、種類によってはこれから普及といったものも多い。

 

(1) アセロラ Acerola

 

 中央アメリカ,西インド諸島が原産のキントラノオ科、高さ3~6mの常緑低木。アメリカ大陸へはキューバ経由で1903年に伝わり、そこからハワイ,ブラジル,東南アジア,アフリカへと広まった。世界の主生産国はブラジル,プエルトリコ,バルバドスである。わが国へは1956年に沖縄へ導入されて栽培されている。

 

 生育適温は高く25~30℃で、開花から結実まで平均22日と短い。果実は1.5cm程度の球形で3~8g、完熟になると濃赤色となりサクランボに似ている。果肉は柔らかくてりんごのような香りがあり、日持ちがしない。このため熱帯・亜熱帯での商業生産は果実の劣化を防ぐために、収穫後すぐに冷凍保存される。ビタミンCが驚異的に多く、未熟果で100g中に3,000~4,000㎎,成熟果で約2,000㎎も含まれていることから、ビタミンの供給源としてジュース,キャンディー,フルーツソース,ビタミンC錠剤などに利用される。わが国では2021年の栽培面積は5ha,収穫量は6t、産地は沖縄。

選び方と保存  濃赤色の果皮で柔らかいもの。保存は冷蔵庫へ、日持ちがしない。

旬  年間に3~4回収穫できる。

 

(2) アテモヤ Atemoya

 

 オーストラリアが原産でバンレイシ科、19世紀の後半に、チェリモヤとバンレイシの自然交雑として発生した亜熱帯果樹。名前はバンレイシのブラジルでの呼び名のアテと、チェリモヤの後ろ半分を付けたもの。チェリモヤの味のよさと、バンレイシの暑さに強いといった両者の特長を合わせ持つ。果実はチェリモヤに似るがやや丸く、果肉は糖度20~25度と甘く、かすかな酸味と上品な香り,柔らかさが特長である。寒さには弱く-3℃以下になると被害が生じる。品種にはピンクス・マンモス,アフリカン・プライドなどがある。わが国では2021年の栽培面積は9ha,収穫量は28t、産地は、沖縄,鹿児島。

選び方と保存  収穫後、一週間程度の追熟が食べ頃。保存は涼しい所へ。

旬  オーストラリアで4月、わが国では11月。

 

 

(3) アボカド Avocado

 

 メキシコまたはペルーが原産で、クスノキ科の高さ7~20mの常緑樹。インカ王族の墓からも発見されたほど古くからあり、16世紀にメキシコの市場で売られた時に、メキシコの原住民アズテックの付けた名前,アファカトルAhuacatlが語源となっている。新大陸発見後にスペインを経てヨーロッパに広まり、アメリカでは19世紀の後半にカリフォルニアで栽培が始まり大きな産業となっている。4~5年目より結実を始めるが、10年近くたたないとある程度の収穫が望めない。品種はハス(果皮が薄緑)が中心で、他にフェルテ(果皮は緑色),ベーコン,ピンカートン,ズタノなどがある。

 

 果実は100~500gで西洋梨型、果皮は黄緑色,褐色,紫黒色とさまざまだが、果肉は淡黄緑色をしている。別名、バターフルーツ,森のバターといわれるように脂肪分が20%,蛋白質が3%も含まれ栄養価が高く、その他のビタミン類も豊富である。この脂肪の80%以上が不飽和脂肪酸なのでコレステロールの心配がないことと、活性酸素の発生を押さえる効果がある。味は甘くも酸っぱくもなくて、果肉はねっとりとして脂っこい。メロンのように2つに切って、食塩やレモンを添えて香りや酸味を補うと食べやすい味となる。パンにペースト状にぬって食べたり、サラダに入れてもおいしい。また、日本人向きの食べ方としては、わさびしょうゆで食べるとまぐろのトロと同じ味がして、鉄火巻きにしてもおいしい。わが国では2021年の栽培面積は35ha,収穫量は22t、産地は、和歌山,愛媛。

選び方と保存  果皮が緑色のものは未熟なので黒くなって手の平で軽く握って、やや柔らかな弾力を感じるころがよい。保存は涼しい所へ。

旬  わが国にはメキシコから輸入されており、ハス種がほとんどである。


アボカドブームとその裏

 

 アボカドブームは1997年にアメリカが、それまで農作物などの病気を理由に輸入を禁止していたメキシコ産アボカドを徐々に緩和・2007年には全面解禁したことにより、急速にアメリカ市場で広がり、健康志向の高まりやオーガニック・ブームを背景に一気に普及した。現在、アボカドブームはヨーロッパ諸国や中国など各地に広がって、需要の高まりと価格上昇によってアボカドは生産国で「グリーンゴールド」とも呼ばれる。

 

 アボカド栽培には大量の水・1㌧当たり1,800㎥(バナナ790㎥,オレンジ560㎥,スイカ235㎥)が必要になるため、水不足が深刻化して健康被害も出ている。また、アボカドは熱帯の国で栽培されることが多いため、輸送段階で排出されるCO2が全体的に高く、地球温暖化対策にも逆行する。ほかにも農薬による大気汚染、森林破壊による水質汚濁、暴力の増加(産地に資金が流れ、強奪,恐喝など)、さらに中南米での難民危機にも影響を及ぼしている。

 

 

(4) オレンジ     Orange

 

 わが国へは明治21~24年ころに伝わった。オレンジは温州みかんより高湿地によく生育し、年平均16℃以上で冬期が温暖,夏期の降雨が少なく、日照の豊富な肥えた土地に適している。わが国で生産が少ないのは自然環境があわず、自然落果が多いことによる。果実は黄橙色で、甘酸適和し芳香があり、美味である。

種類は、①へそのあるネーブル(心皮の形成が2重,3重になってへそのように見えるのでネーブル=へその名がでたという)と、②バレンシアなどへそのない普通のオレンジ類、③果肉が赤いブラッドオレンジに大別される。

 

ワシントンネーブル…起源は19世紀の始めに、ブラジルでポルトガルから伝わったセレクタオレンジの枝変わりとして発見された。これをアメリカ農務省が1870年に、首都ワシントン市の温室に苗木として導入し、植えられたことにちなんで命名されたもの。以後、気候,風土のあったカリフォルニアで大きな産業となる。さらに、気候の類似したブラジル,スペイン,南アフリカ,オーストラリア,モロッコ,アルジェリアなどに導入された。果実は柔軟多汁で甘味が濃く、わが国でもハウス栽培されている。(中・晩柑のネーブルオレンジを参照して下さい。)

 

バレンシアオレンジ…ポルトガルのドン・ジョアオが起源といわれ、約100年前にイギリスの苗木商が大西洋のアゾレス諸島(ポルトガル沖約1000kmの大西洋上に浮かぶ)で入手し、カリフォルニアとフロリダに輸入された。これを見たスペイン人が、故郷のバレンシア地方で栽培されているものと同じと語り、以後バレンシアレートの名前がついた。しかし、スペインのバレンシア地方に同種は見当たらない。世界的に栽培され、柑橘の中では最高の生産量を誇っている。生食用はカリフォルニアで、ジュース用としてはブラジル,フロリダで大量に栽培されている。果実は球形で150~200g、果肉は柔軟多汁で糖,酸ともにあり香気がある。晩生で、樹上で越冬するためにわが国では栽培が少ない。2021年の栽培面積は13ha,収穫量は321t,産地は和歌山。

 

選び方と保存  果皮が鮮やかなオレンジ色でつやがあり、キズ,ヤケがなく丸みを帯びて重たいもの。保存は涼しい所へ。

旬  アメリカ産が12~6月,オーストラリア産が7~11月。品種で見るとアメリカ産が12~5月頃はネーブル,その他はバレンシアが中心となる。オーストラリア産はネーブルが中心で9~12月にバレンシアとなる。


                   愛媛産・ブラッドオレンジ     米国産・ワシントンメーブル

 

 

(5) オロブロンコ Oro blanco

 

   アメリカ,カリフォルニア大学のキャメロン博士とスースト博士が1958年、無酸文旦に4倍体のグレープフルーツを交配して育成、オロブロンコ Oro blancoと命名された。名前のOroは「金」,blancoは「白」という意味のスペイン語からとったもの。皮が厚いので夏みかんのように手で簡単にむけ、酸味が少なくさわやかな甘さと果汁が持ち味である。この穂木がイスラエルに

研究用に送られ、これはスウィーティSweetieとして商品化され出回っている。(写真はスウィーティ)

 

選び方と保存  アメリカ産のオロブロンコはグレープフルーツと同じ黄色、イスラエル産のスウィーティは果皮が明るい緑色をしている。果皮にはりがあってみずみずしいもの、保存は涼しい所へ。

旬  アメリカ,イスラエルから12~2月。

 

(6) カクタスペア Cactus pear

 

 熱帯アメリカが原産のサボテン科、メキシコでは紀元前からサボテンが食用とされ、その中で最大の属がウチワサボテンである。この果実を食用とするもので、いくつかの品種が栽培されている。長さ5~9㎝,果皮は赤,黄,緑などで、果肉は赤色のものと黄色いものとがある。酸味が少なく香りもないが、果汁が多く味はスイカと柿をあわせたようである。皮をむいて適当に切って、サラダやジュース,ピクルス,ジャム,砂糖漬けもよい。ピタヤもこの仲間である。

 

選び方と保存  さわって柔らかくなったころ。保存は涼しい所へ。

旬  メキシコ,アメリカから一年中。

 

 

(7) キウイフルーツ Kiwi fruit

 

 中国の長江沿岸が原産のマタタビ科のつる性落葉果樹、北海道の山でとれる野生のコクワはこの仲間である。1904年にニュージーランドの女性教育者イザベル・フレイザー氏が中国から種子を持ち帰ったのが始まりで、ニュージーランドでは原産地にちなんで、「チャイニーズ・グーズベリー」と呼んでいた。その種子は果樹栽培業者のトーマス・アリソンに渡り、トーマスは弟のアレクサンダーに渡して改良されていく。1924年にオークランドの種苗業者であるヘイワード・ライト氏が発見した偶発実生が現在の主力品種のヘイワード種であり、品種は他にアボット,ブルーノ,トムリ、国産の品種として香緑,讃緑,香粋など。1959年にニュージーランドの国鳥・キウイバードに色,姿が似ているところからキウイフルーツと名付けられて、1970年以降急速に世界中に栽培が普及した。国内では消費者の果物離れが進む中でキーウィは増加傾向、これはいつでも売り場にあって保存性がよく、すぐに食べられること,健康志向の定着から豊富な栄養素が見直されたことなどがあげられる。

 

 果実は直径6㎝くらいの卵型で茶褐色の毛でおおわれており、果肉は淡いエメラルドグリーンで中心部はクリーム色、その周辺に小ゴマ粒大の軟種子があり、見るからに緑の宝石といったところ。近年、黄色のゴールドキウイが増えている。ビタミンCが多く1個で大人1日の必要量を満たし、ほかにもビタミンE,カリウム,食物繊維も豊富に含まれている。また、蛋白質分解酵素のアクチニジンを含むので、肉質を柔らかくする働きがある。皮のまま半分に切ってスプーンですくって食べたり、皮をむいて薄切りにしてカクテルや果汁の飲み物に、また、フルーツポンチの彩りに非常にすがすがしいアクセサリーとなる。2023年の輸入量は96,222tとなっており、輸入フルーツの中ではバナナ,パイナップルに次いで3番手である。国別シェアは、ニュージーランドが96.0%,その他となっている。この他に国産が2万トン前後の生産量がある。

 

選び方と保存  食べ頃は手にもって少し柔らかいころがよく、固いものはりんごやバナナと一緒にポリ袋に入れておくと、エチレンの作用で数日で追熟して食べられるようになる。保存は涼しい所へ。

旬  ニュージーランドは6~12月、国産は2~5月。

 

ゴールドキウイ

 

  果皮,果肉とも黄色のゴールドキウイで、糖度が高く,酸味が少ない。わが国へは2000年から本格的な輸入が始まり、甘くて食べやすいと若い女性を中心に消費が急速に伸びている。1970年代後半に中国から多くの原種を入手した中からニュージーランドのホートリサーチ園芸研究所が育成したもので、当初は商品名:ゼスプリ・ゴールド (ホート16A)が中心であったが、かいよう病に弱いことから新品種の商品名:ゼスプリ・サンゴールド(ZESYOO2)が2013年より販売開始されて、2014年では主力となった。これは収穫量が多く労働力の軽減が可能,そして貯蔵性もよい。ゼスプリインターナショナルジャパン・2023年のキウイの販売数量はグリーンが全体の60%,ゴールドが39%,その他となっている。近年は、愛媛や九州各県でも栽培が拡大して国産サンゴールドが12月頃には売り場に並ぶ。

 

国産キウイフルーツ

 

 わが国では、昭和40年代後半よりみかんの転作作物として愛媛,福岡を中心に栽培が増加したが、

1990年の生産過剰による価格暴落、翌91年の台風19号による甚大な被害で栽培面積が減少した。近年は価格の安定化により一服状態であるが、園地の老木化が進み品種更新が遅れている。そうした中、静岡県で「レインボーレッド」が、香川県では果肉の黄色い「さぬきゴールド」,果肉が黄緑色の「さぬきエメラルド」が育成されている。2021年の品種別栽培面積構成比は、①ヘイワード83.8%,②ホート16A(商品名:ゼスプリゴールド) 2.7%,③香緑2.6%,④サンゴールド2.6%、そしてレインボーレッド,甘うぃ,さぬきゴールドと続く。2022年の栽培面積は1,860ha,収穫量は22,900t、収穫量構成比は、①愛媛20.9%,②福岡17.4%,③和歌山14.6%、そして神奈川,群馬,静岡,山梨,栃木,佐賀,大分…と続く。熟期は11月上~中旬。

 

*レインボーレッド…静岡県富士川町の小林利夫氏が、紅心(江西79-1)の自          然交雑実生から育成した品種で、果皮は黄色で種のまわりが放射状に赤い。果実が60~100gとヘイワードより小玉であるが、糖度は18度と甘く食味もよい。熟期は9月下~10月上旬。

*さぬきゴールド…香川県農業試験場府中分場でアップル系キウイフルーツに中国系キウイフルーツを交配して育成、2005年に登録された。濃黄色の果肉と160~180gと大きな果実が特長で、糖度も16~18度と甘く風味,食味ともよい。熟期は10月上~中旬。

*さぬきエメラルド…香川県農業試験場府中分場で2003年に、讃力にさぬき花粉力を交配して育成した。150~180gと大きな果実が特長で、糖度が高く貯蔵性に優れるので、春頃までの販売が可能である。熟期は10月中旬。

 

蛋白質分解酵素

 

 キウイフルーツのアクチニジン,パイナップルのブロメリン,パパイヤのパパインなどの蛋白質分解酵素は、肉の硬さに関係する繊維の主要タンパク質であるミオシンとアクチン,結合組織のコラーゲンを分解するので、肉料理に使うと肉を軟らかくする。デザートを作るときに注意が必要なのはこれらの材料とともにゼラチン(タンパク質)を使っても分解されて固まらない、寒天(食物繊維)を使うか、果肉に熱を加えて蛋白質分解酵素をこわしてから使うこと。舞茸にも蛋白質分解酵素が含まれているので茶わん蒸しに使うときには下ゆでしてから使わないと、固まらないので注意が必要。

 

 

 追熟 

 

 キウイは自分自身で追熟のためのエチレンを発生させないので、いつまでも硬く酸っぱいままである。追熟には20℃,湿度90%,エチレンガス濃度50~100ppmで2~3日の処理とするが、給食用などすぐに食べられるようにするときには4~6日が望ましい。追熟をすることによって糖度は15~17度となる。

 

長江(ちょうこう)と揚子江(ようすこう)

 

 キウイフルーツの原産地である中国最長の河川で世界でも第3位、チベット北東部を水源として西都,武漢,重慶などの工業都市、上海,南京などの商業都市を流れ東シナ海に注ぐ内陸交通の大動脈で全長6,300kmに及ぶ。中国では長江、日本を含む外国では揚子江と呼ばれることが多い。これは河口に近い揚州付近の局地的名称であったが、外国人が長江全体を呼ぶものと勘違いしたことからきている。

 

*長江の上流にあるのが世界最大の三峡ダム・2,250万kwの発電が可能で、これは最新の原子力発電所の16基分に相当する。2020年の大雨でダムの最高水位175mに対し、7月20日に164m,8月22日に167.65mまで水位が上昇して決壊するのではと騒がれた。

 

(8) キワノ Kiwano

 

 北アフリカ原産のウリ科でキュウリの仲間、アメリカでは角メロンHorned melonと呼ばれる。ニュージーランドで改良されて甘味のある果物となり、名前もある会社の登録商標であった。果実はだ円形で長さ10~20㎝、表面にとげ状の突起があり、果皮は黄橙色で厚く、割ると目のさめるような鮮緑色をしている。この種を包む緑色のゼリー状の部分を種ごと口に含んで食べるが、さわやかなライムに似た香りを持ち酸味が強い。たてに半分にカットしてスプーンですくって食べたりジュースやアイスクリームのトッピングにもよい。形のおもしろさが喜ばれて販売されている。

 

選び方と保存  果皮が黄色がかったオレンジ色がよい。保存は涼しい所へ。

旬  ニュージーランドから2~6月。

 

(9) グアバ Guava

 

 熱帯アメリカが原産のフトモモ科の常緑樹で、メキシコからブラジルにかけて自生。世界中の亜熱帯,熱帯地方で古くから広く栽培されている。別名バンジロウ,バンザクロ。わが国へは明治時代中期に導入され、沖縄,鹿児島で栽培が行われている。栽培の適温は25~30℃で、果実肥大は高温で促進される。果実は球形,だ円形,洋なし形などいろいろ、また大きさも30gほどのものから500gに達するものまである。果皮は淡緑色で熟すると黄色になり、果肉は淡紅色のものや白,黄色などがある。独特のじゃ香臭があり甘くなめらかである。ビタミンCが多く、生食するほかジュース,ゼリーなどに加工され、とくに淡紅色の果肉を使ったジュースは日本でも広く出回っている。

最近注目されているのがグアバ茶で、血糖値を抑える効果が昔から発見されている。わが国では2021年の栽培面積は2ha,収穫量は19t、産地は沖縄,高知。

 

選び方と保存  果皮が黄色のもの。保存は涼しい所へ。

旬  北半球では6~10月。

 

(10) グレープフルーツ Grape fruit

 

 西インド諸島のバルバドス島で1700年代に発見され、ぶんたんとオレンジとの自然雑種と考えられている。ミカン科の常緑小高木で、小枝に3~4個から10数個の果実をつけ、その姿がぶどう(グレープ)に似ていることから、この名がついた。別名を、ポメロPomeloともいう。

アメリカのフロリダ地方には19世紀の初期に種子で持ち込まれ、その後、カリフォルニア,テキサス,アリゾナなどに広まる一方、他の国々にも伝わった。初期の品種は、白肉種(たね)ありのダンカンであったが、無核(むかく)のマーシュMarshがフロリダのレイクランド近郊で1862年に実生変異としてあらわれて、現在はこれが世界的な品種となっている。その後、赤肉系のピンクマーシュ(トムソンともいう),これの枝変わりのレッドブラッシュ(ルビー)さらに、フォスター,スタールビーなどが発見された。

 

 わが国へは昭和46年の自由化以来急激に輸入が増え、シュンはフロリダ産(風のため果皮にすり傷があり、見た目はきたないが味は最高)が始まる11月から翌年6月まで、ほかにイスラエル(Jaffa(ジャファ) の商標,すり傷がなくきれいで玉は偏平),アメリカ・カリフォルニア(皮が厚く酸味がある),南アフリカ共和国と年中出回る。ほどよい酸味とほろ苦さ、さわやかな香り、たっぷりの果汁が持ち味である。

 

選び方と保存  果皮にはりがあってみずみずしいもの。保存は8~10℃の多湿下では3~4週間可能。

旬  アメリカ・フロリダ産が11~12月,トルコが12~4月,南アフリカ共和国が5~9月。


                     白肉種・マーシュ         赤肉種・ルビー

 

輸入柑橘と防カビ剤

 

 グレープフルーツ,レモン,オレンジなどの柑橘には、貯蔵,輸送中に青カビ,緑カビ,白カビ,軸腐れ病といった病害が発生するので、これを予防するために防カビ剤の使用が許可され使われている。①OPP・オルトフェニルフェノール…柑橘類に使用。②OPP-Na・オルトフェニルフェノール・ナトリウム…柑橘類に使用。③DP・ジフェニル…柑橘類に使用。④イマザリル…柑橘類(みかんは除く)に使用。⑤TBZ・チアベンダゾール…柑橘類,バナナに使用。⑥フルジオキソニル…2011年に許可された新しい防カビ剤で、柑橘類,バナナに使用。⑦アゾキシストロビン…2013年に許可された新しい防カビ剤で、柑橘類(みかんは除く)に使用。⑧ピリメタニル…2013年に許可された新しい防カビ剤で、あんず,さくらんぼ,柑橘類(みかんは除く),もも,プラム,西洋なし,マルメロ,りんごなどに使用。⑨プロピコナゾール…あんず,おうとう,かんきつ類(みかんを除く),すもも,ネクタリン及びもも以外の食品に使用してはならない。

 

 これらはワックスに混ぜて塗布したり、スプレーしたり、直接薬剤に漬けたりして使用されている。いずれも毒性は強く、動物実験では発ガンや肝臓や腎臓の異常、成長抑制や遺伝子の損傷が見られる。輸入される果物はこの中の2種類以上使用されていると思って間違いないでしょう。くだものは出来るだけ国産のもので、そのシュンのものを食べるのが賢明といえる。

   

(11) クレメンタイン Clementine

 

 アルジェリア原産のミカン科の常緑小高木。二十世紀の初めにアルジェリア,オランのクレメント・ローディア神父の庭で地中海マンダリンの偶発実生として発見され、神父の名前をとって命名された。近年のDNAマーカーを利用した遺伝子解析の結果、スイートオレンジ×ウィローリーフマンダリンの交雑と決定された。果実は球形でやや小さいのが難であるが糖分がありオレンジの香りがあって、味は濃厚である。果面は濃橙色で美しく皮はややむきづらい。2017~2020年にかけて、2~4月にイスラエルから、6・7月にオーストラリアからの輸入が多くあった。

 

選び方と保存  果皮にはりがあってみずみずしいもの。保存は涼しい所へ。

旬  イスラエル,オーストラリア産が出回る。

 

 

(12) ココヤシ Coconut palm ヤシの実

 

 熱帯アジアが原産のヤシ科。潮の流れに乗って熱帯地方の海岸や小島に広く分布し、かたちが猿の顔に似ていることから、ココ=ポルトガル語の猿と名前がついた。ヤシの種類は多いが、一番多いのがこのココヤシである。木は15~30mと高く、果実は厚い繊維層に包まれて、外気の温度が高くても以外とひんやりして無色透明、ほのかに甘味がある。果実の成熟とともに殻の内側の白いクリーム状の胚乳層が厚くなり、完熟すると白く固まる。これを乾燥させたものがコプラで、絞って油をとり、マーガリンや石けん等の重要な原料となる。

 

選び方と保存  外果皮が緑色で未熟なものがジュースが多い。保存は涼しい所へ。

旬  ベトナム,タイ,メキシコ産が出回る。

 

(13) ゴレンシ 五稜子 スターフルーツ

 

 東南アジアが原産のカタバミ科,高さ5~10mに達する常緑中木、中国には古く紀元前4世紀ごろ伝わり、好んで食べられている。東南アジアではどこでも見かける果実で、横断面が星形になるところから別名スターフルーツと呼ばれる。果実は熟すると緑色から黄色になり、つるつるとした光沢を帯び透き通るようなコハク色になる。熟するとクセのある香りとなるので、七分くらい熟したものの方がさっぱりとした酸味が楽しめる。甘味種と酸味種がある。生食や薄く切ってサラダに混ぜたり、砂糖漬け,ジャム,ゼリーなどに加工される。わが国では2021年の栽培面積は1ha,収穫量は19t、産地は沖縄。

 

選び方と保存  果皮が透き通るようなコハク色。保存は涼しい所へ。

旬  東南アジアで7~8月。

 

(14) ザクロ 石榴,柘榴

 

 ペルシャ(イラン)が原産でザクロ科、地中海沿岸の南ヨーロッパやアメリカの東南部で多く栽培されている。中国では種の多いことから子孫繁栄として喜ばれ、結婚式の縁起物として使われる。わが国へは平安時代に渡来し、庭木として植えられることが多い。木は落葉樹で、高さ10mにも達する。果実は直径9~10㎝の球形で成熟するとくすんだ紅色となり、先端部が裂けて真っ赤な種が見えてくる。果肉は六室に分かれたくさんの種が並んで、果汁には独特の風味があり甘酸っぱい。生食のほかに、果汁でシャーベットやグレナデンシロップを作る。わが国でも栽培されるが酸味が強いので、売られているのは皮の薄いアメリカ・カリフォルニア産のワンダフル系である。

 

選び方と保存  果皮に光沢があり、もって重たいもの。保存は涼しい所へ。

旬  アメリカ・カリフォルニア産が8~11月。

 

エストロゲン

 

 1964年に、アメリカ・カルフォルニア大学のヘフトマン博士によって、ザクロ(とくに種子)にエストロゲンが含まれていることが立証され、その後世界各国でザクロについて実験やデータが蓄積されている。このエストロゲンは卵巣で作られる女性ホルモンで、女性特有の丸みを帯びた容姿やみずみずしい肌,つややかな髪などの若さを保つ。そして25~30歳頃がピークとなり、45歳頃から次第に減少していく。より快適に更年期を過ごすために欧米では医師の指示のもとにエストロゲンを処方することもある。

 

 こうした背景の中、わが国でも1999年から2000年にかけてザクロジュースなどが中高年の女性の美容と健康によいとしてブームになった。ところが国民生活センターの検査結果によると、ザクロ果実とそれを原料にした健康食品のいずれからもエストロゲンは検出されず、宣伝で言われるような効果はあるとは考えられない、と結論している。

 

(15) サポジラ Sapodilla

 

 中南米からカリブ海沿岸が原産のアカテツ科の10~15mの常緑樹、原産地から1570年にフィリピンに持ち込まれて東南アジアに広がり、いまなら熱帯地方のたいていの所で手に入る。果実は球形または卵形で直径5~10㎝、果皮は薄く灰褐色でじゃが芋に似ている。果肉は熟すと暗赤色に色付き梨に似た歯ざわりで、甘い味と香りは干し柿に似ている。この果樹の樹皮を傷つけて出る乳液を煮つめた固形物(チクル)は、チューインガムの原料になるため、チューインガムの木とも呼ばれている。

 

選び方と保存  追熟は20℃で10日間、熟したものの果皮に爪をたてると褐色で、全体に柔らかいもの。保存は涼しい所へ。

旬  東南アジアでは一年中出回る。

 

チューインガム Chewing gum

 

 4世紀頃に中央アメリカに住んでいたマヤ族は、サポジラの樹液を煮込んで固めたものをかんでいた。この風習が原住民であるインディオに引き継がれ、さらにこの地に渡ってきたスペイン人に受け継がれた。1860年頃に欧米で商品化されて、日本には大正時代に輸入されたが、普及は戦後で米軍人が携帯食としたことによる。最近は砂糖の代わりにキシリトールを使って虫歯予防をねらったものや、口臭予防,眠気防止,喫煙防止などの機能性ガムも作られている。

  

(16) ジャックフルーツ Jackfruit

 

 マレー半島からインド南部が原産のクワ科の熱帯性常緑高木、別名パラミツ・波羅密。果実はでこぼこした果皮を持ち長さ70cm,幅40cm,重さ30~40kgとなり、「世界最大の果物」として知られる。突起におおわれた頑丈な皮を割ると、内側には多くの黄色の小果が層状に詰まっている。味はほのかに甘いが、独特の臭気があるので好き嫌いが分かれる。果実は生食するほか、揚げたり煮て食べる。タイでは木芯を天然染料の草木染め材料として、黄褐色の染料となり僧の法衣染料として用いる。アフリカ,ブラジルなどでも栽培されている。

 

選び方と保存  さわって軟らかくなってきた頃、保存は涼しい所へ。

旬  東南アジアで一年中。

  

(17) スターアップル Star apple

 

 中央アメリカが原産のアカテツ科、メキシコやパナマの低地には野生種が存在している。東南アジアやインドへは19世紀になって導入され、外見が美しいことから庭園樹としてもよく栽培されている。和名はスイショウガキ。ミルクアップルと呼ばれるのは、果肉に牛乳のような白濁したジュースが含まれていることから。果実は直径5~10㎝で球形、果皮は暗紫色と緑色の系統がある。果肉にはゼラチン質の部分があって、上下半分にカットするとちょうどこれが放射状に見えることからスターアップルの名前がある。酸味はなく、香りとほどよい甘さがある。

 

選び方と保存  果皮にしわができ、くすんだ色をしているころ。保存は涼しい所へ。

旬  フィリピンでは3~5月。

 

(18) タマリロ Tree tomato

 

 ペルーが原産のナス科の常緑樹で高さ4~5m、ペルーでは古くから1,800~3,000mの高地でインディオが食用としていた。現在では熱帯各地の高地で栽培されている。別名ツリートマト,キダチトマト,トマトノキ。果実は長卵形で長さ5~6㎝、果皮は滑らかで赤橙色をしている。果肉は橙色で、トマトに似て種子がゼリー状でやや酸味があり甘さはない。生食のほか、シロップ煮,ジャム,カレー,シチューなどにも使う。

 

選び方と保存  果皮が赤橙色で、持って柔らかめのもの。保存は涼しい所へ。

旬  ニュージーランドから2~6月。

 

(19) タマリンド Tamarind

 

 アフリカからアジアに渡る熱帯地方が原産でマメ科、アフリカのスーダンでは野生がみられ古くから熱帯地方に栽培されている。高さ20mくらいの常緑樹で、耐乾性が強くやせた土壌でもよく生長する。果実はそら豆に似た長さ10~15㎝の筒状で始めは緑色、成熟するにしたがって茶色となり中の種がふくらんで表面が凹凸になる。さやの内側の茶褐色の果肉は糖分が14~15%,酸は30%まで達するが、甘く、そのまま食べる。清涼飲料,ジャムやシャーベットにする。未熟果は非常に酸味が強く、酸の代用とする。

 

選び方と保存  中の種がふくらんでいるもの。保存は涼しい所へ。

旬  タイ,フィリピンで1~5月。

 

 

(20) チェリー Cherry

 

①ビング Bing…アメリカ・オレゴン州で1875年、リパブリカンの実生として育成された。果実は7~8g,果皮は濃赤色で完熟するとほとんど黒に近い赤となり、肉質は硬く甘味が強く品質がよい。輸送性に富み、輸入サクランボの代表品種でもある。

 

 

②ランバート Rambert…やや小型で1880年頃にナポレオンの実生として発見された。

 

③バン Ban…カナダでエンプレス・ユーゲニーの自然交雑実生から育成された品種で、ビングやランバートの受粉品種として栽培される。

 

 

④レーニア Rainier…アメリカ,ワシントン州で1960年、ビング×バンの中から育成された。果実は10~12gと大きく果皮は黄色に赤縞の着色があり、色,味ともに佐藤錦に近くて食味がよい。欠点として果実が傷つきやすい、1992年より輸入が解禁された。これの交配種に早生のブルックス Brooksがある。

 

 ⑤ツラリー Tulare…タラリー,チュラレーとも呼ばれ、ビングから交配された早生種。くっきりとした赤い色で、形は少しハートに似ている。

 

選び方と保存  果皮は濃く色付いているほど甘く、果肉が硬くつやのあるもの。保存は冷蔵庫へ。

旬  熟期はアメリカ・カリフォルニア産が5~6月中旬、ワシントン・オレゴン産が6月中~8月上旬。

*輸入実績と推移については、9.さくらんぼを参照してください。

 

(21) チェリモヤ Cherimoya

 

 原産は南米ペルー,エクアドルの高原でバンレイシ科の高さ5~8mの常緑樹、古くから栽培され種を口に入れると一瞬ひやりとすることから、古代インディオたちは「冷たい種」と呼び食用としていた。1532年にスペイン人がインカ帝国を倒して植民地としたことから早くにスペインに移入され、今でも世界最大の産地はスペインのアンダルシア地方である。欠点として、環境適応の幅が狭いことから栽培が難しい。

 

 果実は直径10~15㎝の心臓形で、果皮は暗緑色で大きなうろこでおおわれている。果肉は、純白で口当たりがよくクリーム状をしており、甘味と特有の香気がある。成分に皮膚炎や神経症に効果のあるナイアシンが含まれている。わが国では、和歌山,熊本,宮崎でも少量が栽培され10月に出回るが、主にアメリカ・カリフォルニア,メキシコから輸入されている。

 

選び方と保存  収穫直後は果皮が緑色で硬く食べられない。20~25℃で一週間くらい追熟させて、果皮が茶色に変わり指で押さえると少し柔らかくなったころが食べ頃。保存は涼しい所へ。

旬  アメリカ・カリフォルニア,メキシコから1~4月。

 

(22) ドリアン Durian

 

 ボルネオからマレーシア西部が原産といわれるパンヤ科の常緑樹で、高さ20~30mにもなる。「熱帯果物の魔王」といわれ、特有の臭いがあり、慣れるとやみつきとなって、ありったけの小銭をはたいて買うといわれる。ドリ=Duriとは、マレー語でとげを指す。果実は直径20~30㎝で、大小無数のとげにおおわれ、熟すると5つに割れるので、種の回りについた白黄色の果肉をしゃぶる。ねっとりとした舌ざわりで、甘く酸味はない、臭いに慣れると悪臭から芳香へ代わってくる。栽培適地が狭く、東南アジアで栽培されている。

 

選び方と保存  果皮が灰緑褐色で裂け目ができたもの。保存は涼しい所へ、冷凍も可能。

旬  タイ6~8月。


 

(23) パイナップル Pine apple

 

 ブラジル原産のパイナップル科の多年草で、アメリカ大陸発見後の1513年に初めてヨーロッパに伝えられる。わが国へは江戸時代末期の1845年にオランダ船で渡来し、アナナス(ペルー語)の名で知られた。パインとは松かさのことで、姿が似ていることから付けられ、アップルは果物の総称。20世紀にはハワイ,台湾,フィリピンに広がり缶詰加工に成功したことで、本格的なパイナップル産業が進展した。

 

 食用部分は花托の肥大したもので、果面の亀甲(きっこう)型のひとつひとつが果実で、これが約150個集まって集合果となっている。花は下の方から咲いて熟していくので、下の方が甘いのが特長。食べる数時間前にクラウン(葉の部分)を下にして立ててから食べると、全体がおいしく食べられる。果汁が多く甘酸適和し、芳香があり美味である。また、肉質を柔らかくする酵素(蛋白質分解酵素のブロメラインで、生食をした時にくちびるが荒れるのもこのため)を含むので、肉料理には生で使う方がよく、肉食後の生食やジュースは消化を助ける。但し、この酵素は60℃以上に加熱すると効果がなくなってしまう。生理障害として「芯黒」があり、これは果実の芯が黒ずむもので、タンニンが固まることによっておこる。

 

 主品種はスムース・カイエン種で、1819年に南アメリカ仏領ギアナの首都カイエンのパイナップル園で、葉にのこぎりのようなギザギザのないものが突然変異で発見され、世界各地の平均気温が20~25℃以上の熱帯・亜熱帯地方で栽培されている。繁殖には、果実の直下から発生するえい芽、株の基部から発生する吸芽(きゅうが)が主に用いられる。沖縄では、9月に挿し木をすると生育を始め、翌年の4月以降の気温の上昇と共に生長して、11~12月に花穂が現れる。3年目、花が咲き果実となって8~9月に収穫となる。2023年の輸入量は164,143tとなっており、輸入フルーツの中でバナナに次いで2番手である。国別シェアは、フィリピンが90.2%,台湾10.9%,その他となっている。他の品種はスウィーテイオパイナップル,スウィーテイオパイナップルゴールド,デルモンテゴールド,ハニーグロウ,ボゴール(スナツクパイン),ピーチパイン,台農17号など。我が国での2022年の栽培面積は313ha,収穫量は7,420t、産地は沖縄である。

 

選び方と保存  果皮が青くても熟しているので葉が青々と新鮮で、太めでずっしりと重みのあるもの。保存は涼しい所へ。

旬  4~7月の品質がよい。

 

 

台湾パイン、人気急上昇

 

 中国の税関当局は2021年3月1日から台湾産パイナップルの無期限の輸入停止措置を取った。表向きの理由は「害虫の検出」だが、中国政府による「経済制裁」だと考えられている。台湾では輸出先としては中国が41,661トン(91.3% 2020年)を占めていた。禁輸措置を受け、台湾は他国への輸出促進や国内消費拡大をはかっている。このニュースを知った日本人の間では、東日本大震災のときに約200億円の義援金を送ってくれた台湾のために、ツイッターなどで「#台湾パイナップルを食べよう」と盛り上がりをみせた。台湾産パイナップルは、日本での消費量の9割以上を占めるフィリピン産よりも割高だが、筋が少なくて芯まで甘い特徴が消費者の人気を集めている。さぁ、食べて応援しよう。通年収穫されているが、出荷の最盛期は4~6月。

 

*この結果は…台湾産が2020年対2021年が821%,2020年対2022年が806%、パイン全体で2020年対2021年が115%,2020年対2023年が105%となっている。スーパーや小売りの大きな拡販の成果が現れている。あとは、これが続くようにお願いします。

 

(24) パッションフルーツ Passion fruit

 

 ブラジル南部が原産のトケイソウ科のつる性の果樹で、1610年ころスペイン人の宣教師が南米を旅行中にこの花を見て、キリストの受難(パッション),とくに、十字架にかかったキリストの姿を見いだして名付けられた。わが国では花が時計の文字盤に似ていることから、時計草ともいう。1880年頃にオーストラリアに導入されて、19世紀末には世界各地,熱帯から亜熱帯の温帯に近い地域に広まり、果実は5~10㎝の円形,果皮は硬く滑らかで、未熟のときは緑色だが成熟すると紫色になり、しわが出てくる。中を割ると多数の種子を橙黄色の半透明ゼリー状で包んでおり、多汁で酸味がつよいがすばらしい芳香(オレンジ,リンゴ,パイナップル,モモ,プラムの5つの味を持つといわれる)があり風味がよい。果汁をしぼってジュースにすることが多い。わが国へは明治中期に導入され、現在は鹿児島などで栽培されている。2021年の栽培面積は53ha,収穫量は479t、収穫量構成比は、鹿児島64.1%、そして沖縄,東京と続く。

 

選び方と保存  紫色の果皮でしわができたころ。保存は涼しい所へ、果汁をジュースにする。

旬  ニュージーランドから1~5月。

 

(25) バナナ Banana

 

 マレ-半島原産のバショウ科の多年草で、1842年にポルトガル人がアフリカ西部のギニアへ上陸した時にバナナを発見して、ヨーロッパへ伝えたものといわれる。「バナナ」の語源は、アラビア語で「手足の指」を意味する「bananバナーン」と、西アフリカの言語で「複数の指」を意味する「banemaバネマ」に由来しているという説がある。これがアフリカのギニアに伝わり、コンゴ川の河口にあるその名も“Banana”という港からヨーロッパに伝わった。

 

 野生種では、果肉の中にアズキ大の種子がいっぱい詰まっていたが、古くから改良されて、今のような完全に種子のないバナナが得られた。これが少なくても、紀元前5000年から1万年前と考えられている。ふつうには生食用をバナナ,料理用をプランティンと呼び、品種はおよそ200~300種といわれる。

 

 わが国へバナナがもたらされたのは永禄2年(1596年)、ポルトガル人宣教師のルイス・フロイスが織田信長にバナナを献上している図が残っている。その後も持ち込まれているが本格的には明治36年、台湾(日清戦争で1895~1945年まで日本領)にいた都島金次郎が現地のバナナを竹製の魚籠7カゴに詰めて送ったのが始まり。戦前,戦後と続き昭和38年に輸入が自由化され輸入量が増加したが、44年まではこの台湾産(仙人種→北焦→新北焦)が主力である。45年から南米,エクアドル産(グロス・ミッチェル種)、48年からフィリピン産(キャベンディッシュ種)が主となっている。品種は他に果皮が赤くずんぐりとした丸形のモラードバナナ、長さ7~8㎝と小型だが皮が薄くねっとりとした甘さのモンキーバナナ、フルーティーな味わいとほんのりとリンゴ風味を感じられるバナップルなどがある。2000年代に入ってフィリピンで各企業が品種改良や高地栽培などで付加価値を加えたプレミアム・バナナを積極的に商品化し、価格のアップにつなげている。

 

  2022年の輸入量は1,053,095tとなっており、輸入フルーツの中では他を圧倒してNO,1である。国別シェアは、フィリピンが78.2%,エクアドル10.9%,メキシコ6.8%,その他となっているが、2015年以降フィリピンが台風,干ばつ,病気といった自然災害の影響もあってシェアを落とし、その代わりエクアドル,メキシコ産が増えている。


                     フィリピン産             台湾産

 

   バナナの栽培には四季を通じて豊富な太陽光線と、温度と湿度を必要とし、これらの条件を備えた南北緯度30度以内のバナナ栽培適地では、新芽を植え付け後、フィリピンで9カ月、台湾で13~15カ月で収穫できる。栄養豊かでバランスがよく、含まれている糖質は体内で効率よくエネルギーに変わるので、離乳食,病人食として非常に重宝されている。わが国では2020年の栽培面積は51ha,収穫量は184t、収穫量構成比は沖縄48.3%,そして鹿児島,宮崎と続く。

 

選び方と保存  食べ頃は、見かけは悪いが斑点(スター)がでたころ。保存は13℃以下のところに長時間おくと、果皮が黒くなり熟度が止まって、いわゆる「風邪引き」といわれる障害を起こすので冷蔵庫へは入れないこと。

旬  台湾,フィリピンとも4~6月。

 

高地栽培バナナ

 

 ドールの「スウィーティオ」,チキータの「プレシャス」,スミフルの「完熟王」といった新しいブランドが、高付加価値商品として2000年以降拡大し今では輸入量全体の約3割に達している。フィリピンのなかでも昼夜の気温差の大きいミンダナオ島の高地(海抜400~900m)で、従来の1.5倍-約15カ月の栽培日数をかけて作られる。寒暖差がありじっくりと時間をかけて育成された分だけたっぷりと太陽の光を浴びているので、光合成によりでん粉が多く蓄積されることから、栄養価が高く糖度も平地栽培よりは約2度ほど高くなる。果実は緻密でねっとり感のある食味となる。

 

フル イエロー

 

 輸入された青バナナ(オールグリーン=成熟した黄色いバナナには害虫が寄生している恐れがあるので植物防疫法により禁止されている)は、ムロと呼ばれる加工場で追熟加工される。まず温度を18~21℃にあげてバナナの呼吸作用を旺盛にし、エチレンガスを注入して細胞組織の変化を促進(未熟果は炭水化物中の大部分がでん粉であるが、追熟するとブドウ糖と果糖に糖化する)、表皮が黄色になるまで6~8日間成熟させ、のち冷却して熟化の進行をおさえて出荷される。バナナはライトグリーンから、身の部分が黄色で両端が緑のハーフグリーンの時に長距離輸送は出荷、真夏の近距離の小売店へは大半がうすい緑色(レモン色に近い)=ハーフイエローで出荷する。さらに、全体が黄色で両端がうすい緑色のもっとも美しいグリーンチップ=糖度は18度前後で売り場に並べられる。甘さが増すのは全体が黄色のフルイエローで糖度は19~20度、さらに所々に茶色の斑点(シュガースポットと呼ばれる)があるスター状態となると見かけは悪いけれど最も甘くなり、糖度は20~22度となり栄養価も最高の時である。

 

パナマ病でバナナが消える

 

 2016年4月、国連食糧農業機関(FAO)は、「新パナマ病」の発生によって世界中で栽培されているバナナが壊滅的な打撃を受けるであろう、という衝撃的なニュースを発表しました。実は1960年頃主流であったグロス・ミッチェル種は、パナマ病に対する抵抗力が極端に低いという弱点があって一度全滅の憂き目に遭っています。パナマ病は、泥の中にすんでいる「フザリウム」というカビがバナナの根の部分から侵入して、水を吸い上げるための導管を腐らせて、バナナを枯らせてしまいます。我々が食べているバナナは自然発生した「種のない品種」を「株分け」によって増やしてきたため、どのバナナも同じ性質を持っている。この為に一度病気にかかると、抵抗力が極端に低いという弱点がありました。幸いにも、何年もの研究により、パナマ病に強いキャベンディッシュ種が見つかったことで、最悪の事態は避けることができました。ところが近年、東南アジアを中心としてパナマ病に似たカビの変異体による「新パナマ病」が出現し、再びバナナ産業が壊滅するかもしれない危機にさらされています。 

 

バナナにはタネがない

 

 野生種では染色体の数が2本ずつ対になっている二倍体で、果肉の中にアズキ大の種子がいっぱい詰まっているのに対し、突然変異によりできた種なしバナナは染色体の数が、3本ずつになっている三倍体です。一般に三倍体の植物というのは、染色体の細胞分裂が不規則になるために種が出来にくいという性質をもっています。

 

(26) ハネデューメロン Honeydew melon

 

 フランス原産のウリ科、アメリカでは代表的な露地メロンとして栽培されている。わが国でも東北地方などで栽培されている。果実は、円,又は長円でよく肥大して1.5㎏前後になり、果皮は網目がなく始め淡緑色だが次第に白色になり、成熟期と収穫後は美しい淡い緑色になる。皮は厚く果肉は淡緑色、甘さはその名のごとく蜂蜜のようにねっとりとした甘味を持ち、水分もたっぷりだが香りが少なく、収穫直後よりも十分追熟させたものの方が食味がよい。

 

選び方と保存  柔らかく弾力があり香りのよいもの、食べる前の1~2時間位を冷やして食べるのが一番で保存は涼しい所へ。

旬  メキシコ産が11~7月、アメリカ・カリフォルニア産が8~10月に出回る。


 

(27) パパイヤ   Papaya

 

 メキシコ南部から西インド諸島,ブラジルにかけての熱帯アメリカが原産のパパイヤ科の常緑小高木、高さ7~10m。16世紀初めにスペインの探検隊によって発見されて各地に伝わり、種をまくと早いものは1年で実をつけることから、熱帯,亜熱帯地方で重要な果樹として栽培されている。沖縄や奄美大島にも自生しているが、国内で流通しているパパイヤはハワイ産のソロ種と果肉の赤いサンライズ種が中心であったが、2002年にフィリピン産が低価格なことから急速に伸びて1位となった。熟す前の青い実は青パパイヤとして、サラダや炒め物に千切りにして使う。

 

 果実は橙色,黄色で、酸味がなく軽い甘味をもち、特有の強い芳香が賞味される。レモンやライム果汁をかけて食べると味が引き立ち、臭いも気にならない。サラダやジュース,アイスクリーム,砂糖漬けにもする。果汁中には蛋白質分解酵素のパパインを含み、肉食後の果実にふさわしい。パパインは元来、薬用,蛋白質消化剤として使われる。我が国の2021年の栽培面積は19ha,収穫量は146t、収穫量構成比は、鹿児島34.5%、そして沖縄,宮崎…と続く。

 

選び方と保存  果皮が緑色から黄色になりやや柔らかみがでてきたころを、縦半分にカットして食べる。保存は涼しい所へ。

旬  3~6月。


 

(28) ババコ Babaco

 

 エクアドルが原産のパパイヤ科、ババコという名前はアンデス地方の俗語で、英名マウンテンパパイヤ,スターパパイヤ。高さ3~5mの常緑樹で、果実は大きく500g~1㎏で先のとがった五角形をして、果皮は緑色から熟すとパパイヤと同様に黄色が濃くなる。中心部に小さな種子がありその回りの白くて柔らかいスポンジ状の果肉をそのままか、シロップやはちみつをかけて食べる。味は多汁で少し酸味があり、さっぱりとして独特の芳香がある。パパイヤと同じ蛋白質分解酵素を含み肉食後の果物にふさわしい。

 

選び方と保存  果皮が黄色のものを縦半分にカットして食べる。保存は涼しい所へ。

旬  ニュージーランドから2~7月。

 

(29) パラミツ

 

 インドが原産のクワ科、東南アジアでは紀元前から重要な食料源として栽培されている。名前は梵語(ぼんご)に由来したパラミータからきており、英名ジャックフルーツjackfruit。高さ15~25mの常緑樹で、果実は大きく長だ円形で、10㎏前後からなかには30㎏にも達する大果がある。果皮は緑色で割ると中心部に芯があり、周辺に黄色の小果が放射状に並んでいる。独特の強い香りがあり甘い。生食のほかにシロップ漬け,ゼリー,乾果にする。未熟果は野菜として利用する。

*波羅密(パーラミー)多(タ)から出た言葉が彼岸(ひがん)で、われわれのすむ煩悩,執着の世界である此岸(しがん)から悟りの境地、仏の世界である彼岸に到達することを指す。

 

選び方と保存  熟果の果皮は黄褐色でパイナップルに似た香りがある。保存は涼しい所へ。

旬  インドで5~6月。

 

(30) バンレイシ 蕃茘枝

 

 西インド諸島が原産のバンレイシ科、世界中の熱帯に広く分布している。レイシに似ているところから名前がつき、英名シュガーアップル、また、その姿がお釈迦様の頭に似ているところから釈迦頭(しゃかとう)の名もある。果実は直径10㎝前後のハート形,卵形で亀甲状の淡緑色の果皮を持ち、種を1個ずつもつ小果が多数集まってひとつの果実を形成している。果肉は白色で柔らかいクリーム状、クセが少なく香り,甘味ともに強く生食するほかシャーベットやジュースにする。チェリモヤ,アテモヤもこの仲間である。

 

選び方と保存  固いものを室温で追熟させ、柔らかいもの。保存は涼しい所へ。

旬  タイ,フィリピンで6~10月。

 

(31) ピタヤ Pitaya ドラゴンフルーツ

 

 メキシコから中南米が原産のサボテン科。サボテンの中のハシラサボテンに属し、東南アジアではドラゴンフルーツと呼ばれる。果実は10~12㎝ほどのだ円形で、果皮は紅色で三角形をしてうろこ状に果肉をおおっている。上品な甘さとなめらかな口当たりが特長で、透明感のある果肉はやや酸味があり果汁が多い。果肉はゼリー状で白く小さい黒い種が果肉全体に散らばっているホワイトビタヤ、ほかに紅皮赤肉種のレッドピタヤ、黄皮白肉種のイエローピタヤがある。

 

選び方と保存  さわって柔らかくなったころ。保存は冷蔵庫へ、ジャムもよい。

旬  ベトナム,タイ,メキシコなど。


沖縄のドラゴンフルーツ

 

 ドラゴンフルーツとは、ピタヤをベトナムから輸出するときに中国語の漢字(火龍果ホーロンゴー)を英語にした商品名である。でも、龍=ドラゴンのうろこのような姿を見るとこれの方がぴったりである。わが国でも2000年前後から栽培が始まり、2021年の栽培面積は11ha,収穫量は68t,産地は鹿児島,沖縄。

 

 

(32) フェイジョア Feijoa

 

 南米のウルグアイ,パラグアイおよびブラジルの原産でフトモモ科、高さ3~5mの低木。別名パイナップルグアバ。1890年にフランスへ、それから世界各地に伝えられた。わが国へは昭和6~7年ころ米国から種子が持ち込まれ、鹿児島などの暖地で栽培が始まった。果実は長さ5~7,5㎝の長だ円形で果皮は緑色、果肉は緻密で甘くパイナップルに似た芳香がある。よく冷して2つに切ってスプーンで食べるのがよい。ジャムやゼリーにも加工される。

 

選び方と保存  さわって果皮が柔らかく感じるころ。保存は涼しい所へ、冷凍にしてもよい。

旬  ニュージーランドから3~6月。

 

(33) ペピーノ Pepino

 

 ペルー,エクアドルのアンデス山脈が原産のナス科、原産地では多くの品種がある。ペピーノとはスペイン語できゅうりの意味、英名はメロンペア(メロンなし)。栽培はニュージーランドで1942年から始まり、1976年に優良品種が開発されて商業栽培がされるようになった。果実は長さ10㎝前後の卵形で先がとがっている。果皮は黄色で紫色のしま模様が入ったものが多い。皮が薄く果肉も黄色で、種がほとんどないので可食部が多い。メロンと洋なしを合わせたような風味でなめらかな舌ざわり。味は淡泊ながら香りは高い。半分にカットして砂糖をかけてスプーンで食べる。

 

選び方と保存  果皮が黄ばんでよい香りがでてきたころ、保存は涼しい所へ。

旬  ニュージーランドから1~4月。

 

(34) ポポー    Pawpaw

 

 北アメリカ東部が原産のバンレイシ科の高さ5~10mになる落葉高木。別名、アケビガキとも呼び果実の形がアケビに似ている。耐寒性は非常に強く、国内のほとんどの地域で栽培可能。明治時代に導入されたが、熟するのが早く日持ちがしないため家庭園芸として細々と栽培をされていたが、近年増加傾向。果実は、バナナとマンゴーをミックスしたような味をして、独特の熱帯フルーツ風味の香りがあり、果実は200~400g。果肉はクリーム状をしており、中には大きなタネが2列に並んで入っている。食べる時には、半分に切ってスプーンですくうと食べやすい。栽培にあたっては、異品種を混植する方が、結実が安定する。我が国の2021年の栽培面積は1ha,収穫量は1t、産地は山梨。

 

選び方と保存  収穫後、涼しい場所で2~3日追熟させると甘味が増し香りが強くなる。保存は涼しい所へ。

旬 9月中~10月中旬。

 

  

(35) ホワイトサポテ    White sapote

 

 メキシコ及びグアテマラの標高1,000~2,000mの地方が原産のミカン科の常緑高木、別名シロサポテ,古くからインディオによって利用されていた。1810年頃にメキシコからカリフォルニアに導入され各地に広まり、近年ニュージーランド,オーストラリアでも栽培が増えている。わが国へは1960年代に導入されて、鹿児島と和歌山で若干栽培されている。果実は直径10cm前後の偏円形,果皮は黄緑色で果肉は軟らかくクリーム状で中心部に数個の種子がある。半分に切って、スプーンですくって食べるほか、フルーツカクテルやシャーベットにも利用する。

 

選び方と保存  果皮は黄緑色で薄いので取り扱いは丁寧に。保存は涼しい所へ。

旬  カリフォルニアから8~2月。

 

(36) マーコット  Msrcott

 

1910年代にアメリカ・フロリダ州でスィングル博士らの育種事業によって育成されたタンゴール(みかん類×オレンジ)であるが、途中でラベルがはがれて親が不明になったといわれている。その後、1922年(大正11年)にフロリダの苗木農家であるチャールズ・マーコット・スミス氏により芽接ぎ繁殖され、「マーコット」の名前が付けられた。1928年頃から栽培が始まりフロリダでは1952年以後の伸びが大きい。わが国へは昭和29年に導入された。果実は140g前後、果皮は濃赤橙色、なめらかできれいな外観をしているが、皮はむきずらい。糖度14度で食味はよい。我が国の2021年の栽培面積は1.4a,収穫量は5t、産地は熊本,沖縄。

選び方と保存  濃橙色の果皮で光沢があるもの。保存は涼しい所へ。

旬  トルコから2・3月。

 

(37) マメーアップル      Mammee apple

 

 熱帯アメリカ,西インド諸島が原産のオトギリソウ科、各地の熱帯地方に広く分布している高さ15m前後の常緑樹だが、栽培はまだ多くなくこれから改良の余地がある。果実は長さ15㎝前後のだ円形でザラザラした茶褐色の果皮をもち、果肉は赤みがかった茶色でややかたい。比較的淡泊な味だが、熟すと甘味が増し、干し柿に似た味であんずのような甘酸っぱい香りをもつ。そのまま食べるほか、ジャムやゼリー,砂糖煮などに加工する。

 

選び方と保存  かたい果実。保存は涼しい所へ。

旬  メキシコから輸入されている。

 

(38) マンゴー Mango

 

 インド北部からマレ-半島にわたる地域が原産で、高さ10~20mのウルシ科の常緑高木。マンゴーの語源はタミール語のMankay,Mangasといわれ、起源は古く4,000年以上の歴史をもち、産地も東南アジア,米国,中南米と広範囲で、産地によって種類が違う。「熱帯果物の女王」といわれ、一年中花が咲き実がなり収穫される。果実は多小偏平なだ円形で、果皮は品種によって黄色,赤褐色といろいろ、果肉は黄金色で多汁で松やにに似た特有の香りがあり繊維分があるが、なめらかで甘味があり美味である。ウルシ科の果物なので体質によってはかぶれることがある。種が偏平なので、皮のまま3枚にスライスしてスプーンで食べたり、フルーツポンチ,サラダにする。

 

 世界各地に600種以上の品種があり、フィリピン産は果皮が黄色で果肉が鮮黄色のカラバオ・Carabao種…果形が水牛(カラバオ)の体型に似ていることから名前が付いた。わが国へはゴールデンマンゴー,ペリカンマンゴー,マニラスーパーの商品名で周年輸入されている。メキシコ,オーストラリア産は果皮が緑色から赤色に変化するので、通称アップルマンゴーと呼ばれ、ヘーデン,ケント,ケイト,アーウィンなどがある。主要生産国はインド,中国,ケニア,タイ,インドネシア,パキスタン,メキシコ,ブラジル,バングラデシュ,ナイジェリア…と続く。

 

選び方と保存  色やつやがよく手で持って少し柔らかみを感じるもの、古くなると黒い斑点やしわがでてくる。保存は冷蔵庫へ。

旬  宮崎が4~6月,沖縄が7~8月,メキシコ産は4~8月,そしてフィリピン産は周年出回る。


                    オーストラリア産       フィリピン産・カラバオ種

 

  沖縄・宮崎のマンゴー

 

 生育適温は24~30℃で耐寒性は弱いが、ハウス栽培によって開花期の雨を避けて栽培される。果実のひとつひとつにネットをかけて、完熟して自然落下したものを収穫する。輸入物に比べて国産物は完熟状態で流通可能なことから糖度12~18度と味がよく、評判がよい。とくに2007年、宮崎県知事に当選した東国ひがしこく原ばる氏のマスコミを通じた売り込みによって、完熟マンゴー「太陽のタマゴ」,糖度15度以上、重さ350g以上の特秀,赤秀がブームになり、注目されている。熟期は4~7月、品種は果皮が鮮紅色のアーウィンが中心である。2021年の栽培面積は436ha,収穫量は4,032t、収穫量構成比は、①沖縄54.6%,②宮崎32.4%,③鹿児島9.9%、そして熊本,高知…と続く。

 

 

(39) マンゴスチン Mangosteen

 

 マレー半島が原産で高さ6~10mのオトギリソウ科の常緑小高木。タイ,マレーシア,インドネシアなどで栽培され「熱帯果物の女王」といわれるが、これは19世紀に東南アジアを統治していた大英帝国のビクトリア女王が好んで食べたからと言われる。果実は直径5~8㎝の球形で、果皮は紫黒色で固く厚さが1㎝くらいもある。ナイフで果実側部に切れ目を入れ、上部と下部をひねるようにずらすときれいに果肉を取り出せる。この外皮にはタンニンが多く含まれていることから、服につくと洗ってもなかなか取れないので注意が必要。果肉は5~7片に分かれ透き通った乳白色で、舌ざわりがなめらかで甘酸っぱい上品な味わいである。栽培適地が非常に狭いことと、実がなるまで8~12年もかかること,日持ちがしないことなどのために、果樹園としての栽培が少なく需要に供給が追いつかない状態となっている。生果では果実に付いたミバエが侵入することから禁止されていたが、46℃の状態で58分間蒸熱処理する体制が整ったことから2003年に輸入が解禁された。

 

選び方と保存  さわって果皮が柔らかなもの、収穫後5,6日で品質が劣化する。保存は冷蔵庫へ。

旬  タイ,マレーシアで5~11月。

  

(40) ミズレンブ

 

 インド,マレーシアが原産のフトモモ科の常緑高木で、別名ミズジャンボザ,ミズフトモモ、英名rosewater apple。果実は長さ,幅ともに約3cm程度で「こま」のような形をし、表面はろう質で鮮やかな赤色または白色、果肉は白赤色で多汁質で、やや水っぽいリンゴのような風味をして生食やサラダの彩りなどにも使う。葉は卵状長だ円形の薄い革質で、新葉は赤みを帯び美しいので、観葉植物としても利用する。

選び方と保存 キズが付くと日持ちが悪い。保存は冷蔵庫へ。

旬 マレーシアでは8~9月。

 

(41) ミネオラ Minneola

 

   アメリカ農務省のフロリダ柑橘試験場で1911年に、ダンカングレープフルーツにダンシータンゼリンを交配して育成され、1931年に地名からミネオラと名付けられて発表された。わが国でも栽培されているセミノールと姉妹品種である。果実はヘタのところが飛び出した倒卵形で100~150g、果皮は赤橙色,滑らかできれいで簡単にむける。果肉は柔軟多汁で芳香があり、食味は甘みと酸味のバランスがとれて濃厚な美味しさがある。アメリカでは、収穫量も豊富で知名度も高いが、和歌山で栽培が試みられたが普及しなかった。

 

選び方と保存   光沢があってよく色付いているもの、保存は涼しい所へ。

旬   アメリカ・フロリダ,カリフォルニアなどから2~4月。

 

(42) ミラクルフルーツ Miracle fruit

 

   西アフリカ原産で高さは2~5mのアカテツ科の熱帯常緑樹。果皮は真っ赤で直径1cm,長さ2~2.5cm位で果肉は白色、なかに褐色の種がある。果肉にはミラクリンと呼ばれる特殊な酵素が含まれており、果肉を数分口の中に含んでいると、舌に作用してレモンなどの酸っぱいものが甘くおいしく食べられ、その効果は30分~2時間程度持続する。現地の人々の間では古くから知られて、酸味の強いパンや酒などを飲食する前に食べていた。夜間20℃、昼間30℃の温度があれば年中果実が収穫できる。

 

選び方と保存   果皮にはりがあってみずみずしいもの。保存は涼しい所へ。

旬   一年中。

 

(43) メロゴールド Melo Gold

 

 ポメロ(文旦)とグレープフルーツ(ホワイト種)の交配種、アメリカ・カリフォルニアで商品化されたが皮が厚すぎることからカリフォルニアでも近年は生産が減っている。わが国へは2001年から輸入され、完熟時の糖度が15~17度もあり、酸味が少ないこともあって濃厚な美味しさから好評である。果実は1個500~1kgとグレープフルーツよりもふたまわり以上大きく、果肉はやわらかくて果汁が多い。美味しく食べるには、中の薄皮(果肉を包んでいる袋)を取ること。薄皮には苦味成分が多く含まれているので、せっかくの甘さが半減してしまう。シーズン初めの12月頃の果皮は、緑が残っているが、徐々に黄色みを帯びてくる。

 

選び方と保存   果皮にはりがあってみずみずしいもの。保存は涼しい所へ。

旬   2~3月。

 

(44) ライム    Lime

 

   インド北東部からマレー半島が原産で高さ4~5mのミカン科の小高木。13世紀にヨーロッパに伝えられ、その後スペイン人によって熱帯地方に広まり重要な柑橘となっている。果実は直径3~5㎝で円形をしており、果皮はエメラルドグリーン,果肉は淡い緑色で皮は薄く酸味は強く特有の香気がある。品種は果実が30~50gと小さいが香りがよいメキシカンライムと、100g前後と大きく種のないタヒチライムがあるが、輸入のほとんどがメキシカンライムである。果汁を絞ってジュース,ドレッシング,フライ,魚料理など、レモンと同様に利用される。我が国でも栽培が始まり、2020年の栽培面積は6ha,収穫量は10t、産地は愛媛55.6%,そして熊本,和歌山。

 

 

 

選び方と保存   果皮は薄く淡い緑色のもの、古くなると黄色になり香りが薄れる。保存は冷蔵庫へ、スライスを蜂蜜漬けとする。また、先日はスライスをして冷凍したものがジンライムのコップに入れてありました。

旬   メキシコ,カリフォルニアから一年中。

 

ジンライム

 

   ジンライムの標準的なレシピ…氷を入れたグラスにドライ・ジンを(全量の)3/4を注ぎ、次にライム・ジュース1/4を注ぎ、混ぜると出来上がり。この時にシェイクするとギムレットと名前が変わる。スライス・ライムを飾ってもよい。ジンは好みがあるが、ベーシックなのはゴードン,ビフィータ、ハーブっぽいかすかな甘さがあるのはボンベイ、それよりちょっともたつくのがタンカレー、すごく甘いのはオールドトムです。すっきりとした味わいを楽しむならフレッシュライム、少し甘味があって濃厚な味を望むならライム (シロップ)を使うとよい。

 

 ジンはとうもろこし,大麦,ライ麦などの穀物を主原料としてセイヨウネズ(juniper berry)という低木の果実を乾燥させたものを香りづけとして入れて蒸留したもの。無色透明,爽やかな香味が特長。11世紀頃にイタリアの修道士が作っていた記録がある。その後特有の芳香が好まれて、酒としてオランダ全土に広がり、さらにイギリスではginとなった。

 

   クラフトジン(ハーブやスパイスなどを用いて、作り手が様々なアレンジを加えた蒸留酒)をはじめとするジンの市場は、世界の売上高が2007年から10年間でおよそ1.4倍になっていて、今後も着実に成長していくという予測が立てられています。ジンは基本的に熟成がいらないので、ウイスキーのように販売までに何年も待つ必要がない。そのためコストを回収しやすく、小規模なメーカーでも参入がしやすい。クラフトジンでは、ジン最大の特徴であるボタニカル(ハーブや果皮、スパイス)に特に力を入れる作り手が多く、これによって個性を出しやすい。ボタニカルには必須のジュニパーベリーの他に、コリアンダー・シード、アンジェリカ・ルート,オリス・ルート,リコリス,カルダモン・シード,レモンピール,オレンジピール,ジンジャー,シナモン、日本特有なものとしてお茶,ゆずなどがあげられる。

 

(45) ランブータン Rambutan

 

   マレー半島が原産で高さ10~15mのムクロジ科の中高木、東南アジアの各地で広く栽培されている。ランブとはマレー語で髪の毛を指す。開花後約4カ月で食べられるようになり、赤く熟したものから順次収穫をする。果実は直径5㎝前後の球形で、果皮は鮮紅色で赤い柔らかいとげにおおわれており、皮をむくとつるりとした白色半透明の寒天状の丸い果肉がでてくるのでこれを食べる。甘酸適和して芳香があり食味がよい。ジュースやシロップ漬けにもする。品種によって果皮が緑と赤の混ざったもの、黄色などさまざまである。

 

選び方と保存    新鮮で赤みを帯びたもの。保存は涼しい所へ。

旬    インドネシア,マレーシア,フィリピンなどで5~8月。

 

(46) リュウガン  龍眼

 

  インドから中国南部が原産のムクロジ科、高さ10m前後の常緑高木。アジアでは古くから栽培されており、亜熱帯地方で盛んである。果実は小さな球形で果皮は木質で灰褐色、手でパリッと簡単にむける。果肉は半透明の白色でゼリー状、甘く多汁で香りもよい。真ん中に黒くて大きな種があり、龍の目に似ているところから名前がついた。この果肉を乾燥させたものは漢方薬として滋養強壮の効用がある。わが国でも沖縄,九州南部などで栽培されている。生食するほか、缶詰め,フルーツサラダやフルーツポンチに混ぜる。

選び方と保存  灰褐色の果皮で鮮度のよいもの。保存は冷蔵庫へ。

  中国で8~10月,タイで8~9月。


 

(47) レイシ    茘枝 ライチLitchi

 

   中国南部からインドシナ半島,ミャンマーあたりが原産の、ムクロジ科の高さ7~10mの常緑小高木。中国では紀元前にすでに栽培され、唐の玄宗(げんそう)皇帝がレイシを好んだ楊貴妃(ようきひ)(719~756年)のために、長安からはるか嶺南まで8日8晩も馬を走らせて取り寄せた話はあまりにも有名で、中国の代表的な果物となっている。果実は直径3~4㎝の鮮やかな紅色で、指でつまむと簡単に皮がむけ、中は白色半透明のゼリー状で果汁が多く、甘酸適和して独特の芳香がある。生食のほか、フルーツポンチ,フルーツサラダなど中華料理の大切な材料であり、乾果,缶詰めにもする。我が国でも栽培が始まり、2021年の栽培面積は9ha,収穫量は23t、産地は宮崎,鹿児島など。

 

 

選び方と保存   果皮が鮮紅色,時間の経過とともに茶色になる。保存は冷蔵庫へ。

旬   台湾から7月。


 

(48) レッドグローブ Red globe

 

   アメリカ・カリフォルニア大学農学部のオルモ教授が、(Hunisia×Emperor)×{(Hunisia×Emperor)×Nocera}として作出、1980年か1981年に発表された欧米雑種で、果皮は美しい赤紫色でうすく果肉はひきしまって13~15gと大粒のぶどう、冷蔵保存で非常に日持ちがよいことから輸出用品種として伸びている。

 

選び方と保存    果皮が鮮やかなもの、果梗部が傷みやすい。種があるので注意。保存は冷蔵庫へ。

旬    チリでは産地が南北に長いことから、1~5月と長期間に渡って輸入される。アメリカ・カリフォルニアは7~12月。

 

その他の輸入ぶどう

 

①トンプソンシードレスThompson Seedless…正式名称はトムソンシードレスと言われるが、売り場ではトンプソンシードレスである。トルコ原産でヨーロッパを経由してのアメリカへ持ち込まれ、1872年にウィリアム・トムソンがニューヨークからカリフォルニア州に導入した。果皮は緑色で長楕円形の中粒、果肉はやや固めで種がなくそのまま食べることができる。カリフォルニアレーズンの原料として有名で、ワイン,生食用と幅広く利用される。カリフォルニア産は8~11月。チリ産は1~5月。 

 

②クリムゾン・シードレス(Crimson Seedless )…アメリカ合衆国農務省のフルーツ遺伝学研究所とカリフォルニア州の育種研究チームが、エンペラー×カルメリア×マスカットを交配育成した皮ごと食べられる晩生種の種無しブドウ品種。果実は比較的粒が小さめで形は長楕円形,色は薄い赤色から、それより濃いピオーネほどの色合いのものまである。カリフォルニア産は11~12月、チリ産が4~5月。

 

③ラリーシードレスRalli Seedless…1990年代にオーストラリアのジョゼッペ・ラリー氏によって生み出された。果皮は薄い赤色,果実はやや細長い卵形で、果肉はやや固めで種がなくそのまま食べることができる。チリ産が3月。

 

(48) レモン Lemon

 

   インドからヒマラヤ西部が原産のミカン科の常緑果樹で、温帯南部から熱帯にいたるまで広く栽培されている。カリフォルニア,シチリア島,コルシカ島はその有名な産地で、わが国では明治になってアメリカから導入され瀬戸内海地方の島々で栽培されている。レモンの木は年間を通して花が咲き実がなるので、1年間に数回に渡って一定の大きさになった果実を緑果の内に収穫する。それは、色付くまで樹上に置くと香りや酸味が少なくなり品質が劣るためで、収穫されたレモンは貯蔵してエチレン処理によって、おなじみのブライト・イエローに変わり出荷される。

 

   果実はだ円形で、頂部に乳頭状突起があり、果汁は酸味が強いが香気は高い。ビタミンCを100g中90㎎と豊富に含み、さわやかな酸味が食欲を増進し、疲労回復に効果がある。輪切りにしてフライの上や、レモンティーやカクテルに、肉や魚の臭い消しにと重宝される。また、ほかの果物の味を補って引立てるので、ジュースやジャムにレモン汁を加えるとよい。栽培の多いのはユーレカ種で、ほかにリスボン,ビラフンカ,ベルナ,フェミネロなどがある。日本の輸入市場で圧倒的なシェアを誇ってきたのが米サンキスト・グロワーズであるが、近年はチリ,ニュージーランド,メキシコ,南アフリカ共和国、メキシコと各地から輸入されている。国産レモンは昭和60年ごろから安全性の問題で注目され、広島,愛媛などで栽培されている。

 

選び方と保存    果皮につや,はりがあって重たいもの、保存は涼しい所へ。

旬    11~6月がアメリカ産、7~11月がチリ産。

 

国産レモン

 

   明治の中頃に伝わり、気候が温暖で降水量の少ない広島県や瀬戸内海を中心に栽培された。その後昭和39年(1964)の輸入自由化により国内の産地は大打撃を受けて、昭和50年には栽培面積が32haと落ち込むが、さらに昭和56年(1981)には大寒波が到来する。その後、輸入レモンの防カビ剤への不安から消費者の「国産の安全な」レモンの需要が高まり、再び国産レモンの栽培が増えつつある。国産レモンは収穫後のワックス,防腐剤,防カビ剤(ポストハーベスト)を使ってないので、レモンティーやレモンのはちみつ漬け,レモンケーキ,レモン酒などに安心して皮ごと食べられる。10~12月頃までに収穫された果皮がまだ緑色のレモンを、輸入との差別化を図って「グリーンレモン」と呼んでいるが、これも収穫して1カ月くらい経つと自然に黄色になってしまう。2021年の栽培面積は736ha,収穫量は8,660t、収穫量構成比は、①広島50.8%,②愛媛19.8%,③和歌山9.6%、そして宮崎,熊本,香川,佐賀,三重,高知,長崎,静岡,千葉…と続く。とくに瀬戸内沿岸や島での生産が多い。

 

                          *通年供給を目指す広島県

 

マイヤーレモン

 

   レモンとオレンジまたはマンダリンの交雑種と考えられている。1908年にアメリカ農務省によって探索が行われ中国で発見された、探索をしたFrank N.Meyer 氏の名前をとって Meyer Lemonと名付けられた。我が国へは高崎達之助氏が戦後、アメリカから持ち帰った。果実はレモン特有の果頂部の突起が小さくライムと同じくらいの大きさで、果皮が薄く表面がなめらかでオレンジがかった黄色から着色が進むとオレンジ色となる。酸が少なく果汁が多い。国産のマイヤーレモンは10月頃から青が,12~3月になると色付くが、まだ生産量は少ない。

 

壊血病とビタミンC

 

   ヨーロッパ人によるアフリカ・アジア・アメリカ大陸への大規模な航海が行われた15世紀半ばから17世紀半ばまでを大航海時代といい、頑丈な船が建造されるようになり、羅針盤が伝わって外洋航海が可能になった。新航路は数カ月以上の長期間航海をするもので、その間、乗組員たちは保存食だけを食べ、壊血病を発症し200万人の船乗りが命を落としたと推定されている。保存食にはビタミンが含まれていなかったためあらゆる栄養障害が起こり、最もひどい症状がビタミンC不足による壊血病でした。こうした状況を打破したのがイギリス海軍のギルバート・ブレインで、海軍の全船でレモン果汁を「毎日」食料に支給するよう説得し1799年以後はイギリス海軍では壊血病が激減した。そして壊血病が根本的に解決されたのが20世紀になってビタミンの役目が発見され、1933年イギリスのウォルター・ハースがアスコルビン酸と命名、そして同年ポーランドのタデウシュ・ライヒスタインらによりビタミンCを人工的に合成できるようになったことによる。

 

(49) レンブ

 

   マレー半島が原産のフトモモ科、高さ10~18mの常緑樹で樹勢が美しく庭園向きである。ジャワに多いことからジャワフトモモの名前がある。果実は3~7㎝のつぶれた西洋梨形でワックス状の光沢があり、果皮は品種によって緑色,ピンク,赤色など変化に富んでいる。果肉は白色のスポンジ状で、かむとサクッとした歯ざわりがあり、わずかな甘味と酸味がある。そのまま食べたり、ゼリーやサラダに入れる。同じ仲間にミズレンブ,マレイフトモモがある。

 

選び方と保存   キズが付くと日持ちが悪い。保存は冷蔵庫へ。

旬   タイでは11~2月、台湾で5~8月。