7. アピオス Apios

 

 北アメリカが原産のマメ科のつる性植物、別名アメリカホドイモ。北アメリカ先住民(ネィティブ・アメリカン)の健康の源(みなもと)と言われ、わが国へは明治時代に渡来したが、栽培は最近になってすばらしい栄養がある事が知られ注目されている。6~8月に花が咲き地下茎を伸ばし、秋に地中に3cm前後の褐色の芋が数珠(じゅず)状にできるので食用とする。ジャガイモに比べてカルシウムが30倍,鉄分が4倍,繊維質が5倍,たんぱく質が6倍、そして他のイモ類にはないビタミンEを含み栄養価が高い。皮の部分に栄養があるので皮をむかずに素揚げ,塩ゆで,天ぷら,みそ汁の具にする。また、電子レンジで1分程チンして軽く塩をふるとおやつ代わりに重宝する。味はホクホクとして栗に似ており、栄養価が高いので1日に2~4個食べるだけでその効果が得られる。

 

選び方と保存  ふっくらと丸みがあって肌の滑らかなもの。保存はポリ袋に入れて冷暗所へ。

旬  秋。

 

二十日なやみともがき

 

 いずれも市場(いちば)の言葉で、「二十日なやみ」とは給料日は25日が多いことから17~18日頃から給料日にかけてお金が少ないのでお客さんが買ってくれない、当然市場でも売れないことから生まれた。これと逆なのが「もがき」で、月初めから10日くらいまでが品物がよく売れ、市場が活況を呈して忙しいこと。ほかにも、「ションベン」…返品を食らう、買う約束を守らない。「アカニシ」…よく値切る人、けちん坊。「女のふんどし」…損が食い込むといったことばがある。(昭和47年に東京・荏原青果にて筆者が記憶をしたもの)

 

八百屋(やおや)の符丁(ふちょう)

 

 東京都中央卸売市場では昭和47年、公正な取引を確保し誰でもがわかるようにということで青果市場のセリでは符丁を禁止した。そんな経過の中で符丁は地方市場や仲卸、そして生花市場などの一部で残っているが、少しずつ消えかかっているもののひとつと思います。この符丁は市場によっても違う、また、魚屋・すし屋でも使われている。下記は筆者が昭和47年に東京・荏原青果にて記憶をしたものです。もう現場では使っていないと思っていたが、多摩生花地方卸売市場ではまだ使っていました。(2017年確認済み)

 

1(チョウ) 11(ドウグ) 12(チョンブリ) 13(サンモン) 14(ソクダリ) 15(チョンメ) 16(ソクロン) 17(チョンシチ) 18(ソクバン) 19(ソッキュウ) 20(ニイマル) 21(ノイチ) 22(ナラビ) 23(ノサン) 24(ノシ) 25(ヤッコ) 27(ニシチ) 28(ブリバン) 29(ニッキュウ) 30(サンマル) 31(サンピン) 33(サンゾロ) 35(ゲタメ) 40(ヨツヤ) 45(ダリハン) 50(ゴットリ) 55(メナラ) 60(ロッポウ) 65(ロンメ) 70(セイナン) 75(ナツラ) 80(バンド) 85(バンガレン) 90(ガケ) 95(ガケハン) (22ニナラビ→ナラビ,33サンゾロメ→サンゾロ、55メナラビ→メナラ)15はチョンガレン、65はロンジガレンとも言う。

 

 セリをする商品によって1束なのか1箱なのか、14円だったり、140円だったり、1400円だったりするので注意が必要。ほかにも、マリは「同じ価格で同じ量を買うこと」、マワシは「残り全部を同じ価格で買うこと」。ほかにも調べると、いろいろとあります。1・オノジ.チョン.ピン.ソク  2・クノジ.ブリ.フリ.ハジブリ.ノノジ.リャン 3・スノジ,ゲタ,キリ 4・テノジ,ダリ,ヨツヤ 5・メノジ 6・ロンジ 8・オカメ 9・キワ 10・ナラ 14・オテ,シモン 16・イチロク 17・ソクシチ 18・チョンバン 22・ノノ一 26・ニロク 29・ブリキュー 32・サンブリ 34・サンダリ 36・サブロク 37・サンシチ 38・ウソヤロウ 39・サンキュウ 40・ヨンマル,ダリ,ダリマル 43・ダリサン 44・ダリダリ,オシン 45・ダリガレン 46・ヨンロク 47・ダリシチ 49・ヨンキュウ 50・ゴットー,ゴマル 51・ゴーピン 55・テケテン 70・ナナマル 85・バンガレ 90・キュー 99・ガケップチ 100・ニンベン,ソク 1000・ケタ,千両

 

 これらのいわれは、1・ピン→ポルトガル語のpinta(点)から。ソク→一束(ひとたば)の束(そく)。2・リャン,リャンコ→中国語の2個から、二本差し(武士)を揶揄(やゆ)する言葉としても使われた。フリ,ブリは荷物を二つに分けて前後に担ぐ振り分けから。3・ゲタ→下駄は鼻緒の穴が3つ開いている。4・ヨツヤ→東京の地名四ッ谷から、ダリ→昔の駕籠舁(かごか)きの隠語から・駕籠(かご)は先棒と後棒で足(タリ)が四本となることから。5・ゴットリ→十から五をとることから。メのじ→目の字で目という文字が5画だから。6・ロンジ→六の字の訛(なま)り。7・セイナン→時計の文字盤で西南(せいなん)、7時の方向から。8・バンド→軍服のバンド(ベルト)が8つ穴だった、もうひとつは馬子,漬物商,青物商の符丁で坂東(ばんどう)八カ国(関東地方)からきている。9・ガケ→あと一つで崖(がけ)に落ちることから、キワ→最後だから際(きわ)。  

 ほかに、昔の東京で八百屋さんたちが使っていた数字の符丁に「オクステウシヤミセ」というのがある。1のことをオの字,2はクの字,3はスの字…という具合。これは相手を親しみをこめて呼ぶ時によく使われた男言葉で、…オウ!清(せい)の字(清三郎)と、いまでも落語によく出てくる。この語源は、江戸時代の初めに丁字屋という大問屋があって、その店を記念して「奥祖丁字屋乃店」オクソテウジヤノミセという碑ができた所からと言う。そのほか、アサオキフクノカミ(朝起き福の神),ムメサクラマツタケ(梅桜松竹),アキナイノワカエビスなどがある。他にもミョウガを「バカ」,人参を「アカンボウ」,きゅうりを「カッパ」,なすを「ヨイチ」と呼んだ。

 

 符丁つながりで、女性を卑下する言葉として「スケ」と言うのがある。これは女(おんな)の倒語→なおん→これを略したものに人名的にする言葉の助をつける→なおすけ→前後が入れ替わってすけなお→省略されて「スケ」となった。「ブス」と言うのも、不器量(ぶきりょう)の不(ブ)を付けてブスケ→つめて「ブス」となった。そう言えば桃井かおりの歌の中で、銀色の車・ブスの唄(ブルース)1978年というのが有りました。

 

板東(ばんどう)八カ国

 

 奈良時代の律令制において、足柄(あしがら)坂(駿河、相模国境の足柄峠)より東の東海道を坂東(ばんどう)、碓氷(うすい)山(信濃、上野国境の碓氷峠)より東の東山道を山東と呼び、のちに一括して坂東(ばんどう)と呼ばれた。一方、奈良時代・天武天皇は都一帯を守る為に、鈴鹿関(すずかのせき)(東海道),不破関(ふわのせき)(東山道),愛発関(あらちのせき)(北陸道)に関所を設置した。これよりも東側を関の東側という意味で関東と呼ぶようになった。時代とともに、逢坂関(おうさかのせき)が加えられたり、伊豆,甲斐国を加えた坂東十カ国のときもあった。そのあと、幕府が置かれた江戸を防御する箱根関・小仏関・碓氷関に関所が設置され、これより東の板東八か国…相模(さがみ)(神奈川)、武蔵(むさし)(東京,埼玉,神奈川の一部)、安房(あわ)(千葉南部)、上総(かずさ)(千葉中部)、下総(しもうさ)(千葉北部,茨城,埼玉,東京の一部)、常陸(ひたち)(茨城)、上野(こうずけ)(群馬)、下野(しもつけ)(栃木)が関東と呼ばれ、今に続くようになった。