12. インゲン 印元,菜豆 Snap bean

 

 メキシコ南部から中央アメリカが原産のマメ科。インディオが古くから栽培していたものでコロンブスの新大陸発見後、16世紀にさや用種がヨーロッパに伝わり発達し、矮性(わいせい)のつるなし種などが作られた。ゴガツササゲというのが和名である。インゲンマメというのは、江戸時代(1654年)に中国から黄檗(おうばく)宗の開祖、隠元禅師がわが国へもたらしたからと言われるが、それは今日フジマメと呼ばれる別属のマメである。しかしこのころに伝わったことは間違いないようである。関東ではインゲンマメ、関西では1年に3回も収穫できるというのでサンドマメともいうが、農林水産省では菜豆(さいとう)に統一している。商品野菜として普及を見たのは明治末ごろからであるが、戦後、とくにビニール園芸が普及した昭和30年以後、各地で周年栽培されている。ここ数年は作付面積が減少気味で、原因として労力不足,輸入冷凍品の増加がある。

 

 低温を好む野菜で、生育適温は15~25℃で霜に弱く、30℃を越えると生育不良となり、受粉障害のため着果率が悪い。栽培は容易で収穫が早く、また、和洋中華のいずれの料理にも適し、彩りに利用される。サラダ,バター炒め,ごま和え,煮物,天ぷらなどの材料として各地で栽培されている。

 

 インゲンにはつるありインゲンと、矮性種のつるなしインゲンがあり、さらに丸サヤと平サヤがある。つるありはさやが柔らかく風味がよく長期収穫ができる。代表種はケンタッキーワンダー(どじょうインゲン),衣笠,舞姿,モロッコなど。つるなしは一般に早生(わせ)で、収穫期が短く支柱など不要であるから簡単に栽培ができ、ハウスやトンネル栽培に向く。代表種はアーロン,サーベル,さつきみどり2号,すじなし江戸川など。両者の中間として半つる性のミニドカ,ステイヤー,スラットワンダー,ケンタッキーブルーなどがある。ほかにも乾燥種実用として、金時豆,虎(とら)豆,うずら豆など多数ある。2022年の収穫量は33,100t、構成比は、①千葉15.3%,②福島9.8%,③北海道7.9,④鹿児島6.4%、そして沖縄,茨城,群馬,長野,熊本,宮城,福岡…と続く。

 

選び方と保存  濃い緑色で細めでみずみずしいもの。中のマメが浮き出ていず、表面にシミや斑点のでていないもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ、またさっと固めにゆでて冷凍保存も可能。

旬  沖縄産の1~4月,千葉産の5~6月,福島産の7~9月。そして国内産の出荷が減少する厳寒期の12~3月にオマーン産が入荷する。


*2022年で国内収穫量が33,100t,輸入が生鮮で562t,冷凍で22,767tと全体の中では輸入が41.3%を占めている。輸入物(冷凍)の構成比は、中国60.6%,タイ26.3% そして、インド,ベルギー…で、月別を見ると平均した入荷となっている。

 

  モロッコインゲン 

 

 タキイ種苗が昭和51年から売り出している平ひら莢さやインゲンの商品名で、地中海沿岸で栽培されていた品種の中から日本でも成育し、味がよく収穫量の多いものを選抜したもので、近年人気が急上昇している。サカタのタネからは「ジャンビーノ」という名前で出ている。莢は長さ14cm、幅1.8cmと他の品種より大きく肉厚でおいしいつるあり種。肉質はさっとゆでただけで柔らかく、スジがなく、とり遅れて大莢になっても風味が落ちない、草勢旺盛で作りやすく、たくさん収穫できる。栄養価も高く、ビタミンA,B1,C,カリウム,カルシウムを多く含み、食物繊維も豊富なので便秘の予防によく、煮物,炒めもの,揚げものなど様々な料理に活用できる。また、塩ゆでした後、塩、こしょうで味つけし、バターをまぶして肉料理の付け合わせなどにしてもおいしい。

 

インターネットでは、1942年製作のアメリカ映画「カサブランカ」というモロッコを舞台にした映画がはやっていたことから命名されたとの記述がある。タキイ種苗へ問合せた結果では、残念ながら「名前の由来についてはわかりません」という答えが返ってきました。

とらまめ 虎豆

 

 豆の色は白地に濃黄褐色と淡黄褐色の斑紋(はんもん)が入って、模様の入り具合が虎に似ていることから、虎豆と呼ばれている。わが国での本格的な栽培は明治時代にアメリカのマサチューセッツ州コンコードから導入されたコンコード・ポール(concord pole)という蔓性(つるせい)の品種で、現在は福虎豆などの新しい品種が栽培されている。煮豆に適して、柔らかくて煮えやすく,粘りがあっておいしく、煮豆の王様とも呼ばれる。産地は北海道の胆振(いぶり)、北見地方。

豆とおなら

 

 豆を食べつけない人が食べ始めるとお腹が張る、おならが出る。これは豆のでん粉質が煮ることによって糖に分解され、体のなかでさらに分解・消化されるが、このとき、消化できない形の糖(注レジスタントスターチ)が体内に入ってくると小腸に棲むバクテリアの働きで副産物のガスがでる。これは繰り返して豆を食べるうち、体は豆になじんでくる。

 

*豆は、すぐに土や水の中などに落ちて発芽できる場合もあれば、発芽まで何十年とかかる場合もある。それだけの長い時間にも耐えて発芽するために、簡単に壊れることがない「複雑な構造のでんぷん質」で守られている。これは人間の小腸の酵素では消化できないが、いざ発芽のタイミングになると、豆(種)は自らその複雑なでんぷん質を単純構造のでんぷん質に分解してエネルギー源に変える。

 

煮豆

 

インゲン豆の一種である金時豆,虎豆(表皮にとらの模様が入っている)は煮豆に最適、豆を水洗いして一晩水につけて戻す。次に豆を漬け水と一緒に強火にかけ、沸騰したら煮汁を半分すてて水を加える。とろ火で時々水を差しながら柔らかくなるまで煮て、砂糖を加え味付けをして、仕上げに塩を少し加えてできあがり。

 

甘納豆入りのお赤飯

 

 北海道では定番の甘納豆(あまなっとう)入りのお赤飯、スーパーの売り場でもほとんどがこれで、小豆入りはわずかしか売っていません。いつ頃から食べられるようになったのかを調べると、札幌・光塩女子短期大学初代学長の南部明子先生のお母さんが小豆の赤飯を炊いたとき、食べやすいように甘納豆を乗せたところ、子供たちがとっても喜んで食べた。そのことを覚えていて、昭和20年代後半に作った料理とのことです。もち米と普通のうるち米を半々の分量で、そのとき食紅を混ぜピンクに炊きあげます。ご飯が炊けたら甘納豆を入れ、一緒に蒸します。甘さを控えめにするときには、甘納豆を湯通ししておくとよい。