15. エゴマ

 

 インド、中国が原産のシソ科の植物でシソの近縁種、別名ジュウネン,アブラエ,エグサなどと呼ばれる。古くはエと呼びゴマからの油と似るのでエゴマと称され、シソとの区別は葉柄に毛があるのですぐわかる。エゴマは5500年前の縄文時代の遺跡7カ所から出土(福井県三方町の鳥浜遺跡,長野県諏訪市の荒神山遺跡など)している。油として使われるようになったのは平安時代初期(859~877年)で、山城国(京都)の大山崎神宮宮司がエゴマから油をしぼったと言われ、食用の他、灯(とう)籠(ろう)や提灯(ちょうちん)の燃料としてまた傘や雨合羽、さらに建築家具の塗装としても使われた。鎌倉時代から徳川幕府中期までの800年間はエゴマ油の全盛時代であったが、江戸時代後期になたね油が広がると、エゴマを作る人が少なくなった。

 

 葉を食べる韓国エゴマは、香ばしい葉の香りが強くご飯との相性がよく、そのまま食べても、おむすびに巻いてもおいしい。あるいはサンチュやレタスと一緒に焼肉を包んで食べるのが韓国スタイルそして、しょうゆベースのタレに薬味を入れてえごまの葉を重ねて漬け込んだキムチも最高。

選び方と保存  鮮やかな緑色でパリッとして、変色がなく茎の切り口が新しいもの。保存は霧吹きをかけてポリ袋に入れて冷蔵庫へ。  

旬 促成ものが一年中。

 

肥料争奪と中国

 

 リン酸肥料の主原料であるリン鉱石を日本では、主にアメリカ(フロリダ州)から大量に輸入してきたが、1990年代後半、アメリカが資源枯渇を理由に禁輸措置を実施した。代替先として中国から輸入するが、2005年頃から世界的に投機資金が流入してリン鉱石の国際価格が上昇。加えて、2007年の四川大地震で生産量が激減、中国は国内向けの供給を優先するため、2010年には特別関税を課して実質的に輸出禁止措置に出て、国際価格はさらに急騰している。2022年にはロシアのウクライナへの軍事侵攻をうけて、ロシアとベラルーシが世界の輸出量のおよそ4割を占めている塩化カリウムの輸入を取りやめる動きが世界で広がり、価格が急騰している。

  

世界の人口は2022年の80億人から2030年には85億人に達すると予測され、人口増に伴う食糧生産増,中国・インドの経済発展で富裕層増加による食肉・乳製品の消費増に伴う餌の需要増,バイオ燃料(エタノール)への利用等からますます肥料の需要が増えている。こうした背景から原料のリンやカリウムをめぐる国際的な争奪戦が起きている。鉱物資源なので採れる国が偏っているうえ、供給側が寡占化し価格決定に力を持つ。肥料は今や、レアアース(希土類)やレアメタル,鉄鉱石と同様に国益に通じる戦略物資になりつつある。

*牛肉1kgを生産するためには穀物11kgを必要とする。豚肉1kg=穀物7kg,鶏肉1kg=穀物4kgとなり、皆が肉を食べれば食べるほど、貧しい人々の穀物が家畜の餌に変わっていく。

*国連の人口推計では、世界の人口は2050年には97億人に達すると予測、最も大幅な人口増加が起きると見られるのはインド,ナイジェリア,パキスタン,コンゴ民主共和国,エチオピア,タンザニア連合共和国,インドネシア,エジプト,米国(予測される人口増が多い順)の9カ国です。インドは2023年4月末には中国を抜いて14億2.577万5.850人、世界で最も人口が多い国になるとの見通しを示した。

 

肥料の三要素

 

 作物を収穫すると、やがて土壌で養分が不足する。肥料は土壌中で養分となり植物の栄養になる、この栄養素として重要なのが、窒素,リン酸,カリウムの肥料三要素である。

*窒素の働き…葉肥(はごえ)と言われ、葉や茎を大きくする。

*リン酸の働き…実肥(みごえ)と言われ、花や実を大きくする。

*カリウムの働き…根肥(ねごえ)と言われ根を丈夫にする。

このほか、カルシウム,マグネシウムや微量要素も必要とする。古くからたい肥や家畜の排泄物が有機肥料として使われてきたが、19世紀の中ごろから20世紀初頭には化学肥料の生産が始まり、飛躍的に農業生産を伸ばした。この中で、①窒素肥料はアンモニアが原料で、アンモニアは大気中の窒素と水素を高圧下で反応させて作る。窒素は空気中に無尽蔵だが、水素を作るためにコストがかかる。②リン酸肥料の主原料はリン鉱石で、すべて輸入されるが2022年のリン鉱石産出国は、中国9,300万t(40.8%),モロッコ3,900万t(17.1%),米国1,980万t(8.7%),ロシア1,400万t(6.1%)などに限られている

のと、資源の枯渇が問題となっている。③カリ肥料の原料はカリ鉱石で、これも全て輸入され、2022年の産出国は、カナダ1,459万t(35.7%),ロシア680万t(16.6%), 中国600万t(14.7%),ベラルーシ400万t(9.8%)などに偏在する問題があり、ロシアとベラルーシが世界の輸出量のおよそ3割近くを占めている。

 

  これに加えて、①世界的な穀物需要の高まりで肥料の需要が増えていること、②中国が環境保護のため製造過程で大量の二酸化炭素(CO₂)を放出する肥料工場の規制に2021年10月より乗り出し、製造量が減った。その為に自国で必要な肥料の安定確保と備蓄のために輸出量を大幅に減らしている。日本は窒素肥料である尿素の37%(19年度)を、リン酸アンモニウムに至っては88.7%(20年)を中国から輸入している。➂ロシアのウクライナへの軍事侵攻をうけて輸入を取りやめる動きが世界で広がり、価格が高騰している。塩化カリウムは、ロシアとベラルーシが世界の輸出量のおよそ4割を占めている。

*窒素肥料の原料はアンモニアで、大気中の窒素と水素を高温・高圧下で反応させて作る。生成したアンモニアを植物の害にならないように酸で中和したものが硫酸アンモニウム(硫安)や硝酸アンモニウム(硝安)です。アンモニアは窒素肥料や衣服の材料となるナイロン繊維、薬剤などの原材料として幅広く利用される。また、燃焼させても温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を発生させない上、液体になりやすく貯蔵や運搬が容易なことから、クリーンなエネルギーとして火力発電の燃料に使うこともできる。

 

甘草と中国

 

 甘草(リコリス)は、マメ科の多年草で、根を乾燥させたものが漢方薬の原料となる。歴史は古く、中国最古の医薬書「神農本草経」に記され、わが国には正倉院に現物が保存されている。独特の強い甘味成分・グリチルリチンは砂糖の50倍の甘さがあり低カロリーであることから、薬用だけでなく、しょうゆ,みそ,ソース,佃煮,漬物など食品にも使用されている。

年間1,600tのほとんどを最大の産出国の中国から輸入している。中国では地中を水平に伸びる根茎と下に伸びる根を掘って採取することから、草原の砂漠化を招き、乱獲による絶滅から守るために2000年から採取,輸出を規制しており、世界的に需給が逼迫(ひっぱく)している。こうしたなか、漢方薬最大手のツムラが2011年に中国での大規模栽培に成功し、野生品から栽培品に切り替えていくとのニュースや、国内での生産が三菱樹脂や鹿島建設によって開始されようとしている。