29. カ ブ 蕪 Turnip

 

   中央アジア,ヨーロッパ原産でアブラナ科に属する。わが国へは、奈良時代(710~794年)に東洋系といわれるアフガニスタン系の品種が中国の華中を経由して西日本に渡来し,欧州系がシベリアから直接または朝鮮半島を経由して東日本に渡来し栽培されたといわれる。そうした中で煮食,漬物用として多くの地方種が分化し独自な日本在来種が生まれ、世界的にもカブの二次原生地とも言われる。

 

   根は94~96%の水分を含み大根とほぼ同じ、大根にくらべショ糖含量が少ないので甘味は少ないが、ペクチン含量が多くカブ特有のぬめりとなっている。栄養的にはビタミンA,B2,C,カルシウムが多く消化を促進する酵素であるジアスターゼが含まれており、葉にはさらに多くのビタミンとカルシウムが含まれている。このビタミンAは体の抵抗力を高める働きがあり、ほかにカルシウムやカリウム,繊維などは高血圧症や動脈硬化を予防する働きがある。

 

   労働集約栽培のため、産地は消費地近郊が多く特産化している。暖地では年に3~4回栽培できるので、30~40aで周年栽培が可能、15~20℃の冷涼な気候を好み高温では生育が悪い。 品種は西洋系の代表種として、白かぶの金町小かぶがありこれは、東京葛飾の原産で金町が産地となって品種名になった。肉質は柔らかく風味,甘味があり、千葉,埼玉,東京などで作られている。また、根の直径が1㎝位のものをメカブといって椀(わん)だねに使われる。また、西洋系の赤かぶとして、皮は赤いが肉は白い山形の温海(あつみ)かぶ,岐阜の飛騨(ひだ)紅かぶ,舞鶴かぶなどがある。東洋系の代表種としての白かぶの聖護院(しょうごいん)かぶは、京都聖護院地方の原産で、1個4㎏前後とかぶの中では大きく千枚漬けの原料として有名で、京都,滋賀が産地である。この東洋系の赤かぶとして、皮も肉も濃紅色の大野紅かぶ,皮は赤いが肉は白い滋賀の万木(ゆるぎ)かぶ,彦根かぶ,愛媛の伊予緋かぶ,島根の津田かぶ,島根の米子紅かぶなどがある。

   漬け物需要が中心のかぶは米の消費が減少するとともに栽培面積も減少している。2022年の収穫量は105,100t、構成比は、①千葉26.1%,②埼玉15.5%,③青森5.5%、そして京都,滋賀,福岡,北海道,山形,岐阜,新潟…と続く。

 

選び方と保存   葉は緑が濃く生き生きとして、肌はなめらかでヒゲ根がなくヒビ割れのしてないもの。茎を折ってスが入っていたら中身にも入っているので注意が必要。保存は葉を切り離して、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。葉は傷みやすいので切ってゆで、水にさらして絞って袋に入れて冷蔵、または冷凍をする。

旬   秋から冬。

聖護院(しょうごいん)かぶ

 

   もとは滋賀県の堅田地方に伝わる近江カブで享保年間(1716~1736年)に、京都市左京区聖護院の篤農家・伊勢屋利八が種子を持ち帰り栽培、京都の風土に合った野菜に改良をされ名付けられた。現在は主に亀岡市篠町で多く作られている。腰高の球形(直径15~20cm)をしており、一個平均1~1.5kgで、大きいものは5kgにも達するものもあり、わが国のかぶでは最大である。京漬物のお歳暮と言えば「千枚漬け」、天保年間(1830~1844年)には、このかぶを原料として薄片の漬物をつくり始めたという。聖護院カブのしっとりとした肉質の舌触り、歯切れ、ほのかな甘さ、そして惜しげもなく使われる上質の昆布の粘りと味の調和である。栽培は8月下旬~9月上旬に播種し、10月中旬~11月下旬に収穫する作型が多い。

 

スグキナ 酸茎菜

 

   わが国が原産のアブラナ科、慶長年間(1596~1614年)に京都市北区の上賀茂神社近郊でカブに似た菜を作ったのが始まりといわれる。これを漬物としたところ喜ばれ広まった。別名酸茎,すい菜,賀茂菜,屋敷菜。現在栽培されているスグキナは、産地の長い歴史の中で聖護院かぶ、または在来ナタネが相互に交雑し合って出来上がったようである。種類によって葉は濃緑色で切れ込みがあるもの,ないもの、根も卵型,クサビ型,だ円形とわかれる。葉に比べて根が小さいのが特長。塩で漬けた後、乳酸醗酵させると特有の香りと酸味を帯びてくる。

 

 

米の消費とかぶ

   

  米の消費量のピークは昭和37年(1962)で1人当たり年間118.3㎏でしたが、2000年には61.8㎏,2021年で54.3㎏と減少している(2000年/2021年対比91.9%,米穀機構)。要因としては少子高齢化,世帯構成の変化,食生活の欧米型化,簡便化志向と言った社会構造の変化やライフスタイルの変化、さらには多様な商品開発の中で米以外にシフトをしていったと考えられる。ご飯の消費が減ると密接な漬け物野菜も同様に減ってしまった。

*小麦製品は調理が簡単、味のバラエティが豊富なことから落ち込みは少ない。

*小麦は世界的な穀物需要の高まりと、2021年夏の高温・乾燥による米国・カナダ産小麦の不作、そしてロシアのウクライナへの軍事侵攻うけて輸入価格が国際的に上昇している。さらに円安が拍車をかけている。政府の2022年4月期の売り渡し価格は17.3%の値上げと発表した。

 

野菜と栽培面積の動向

 

   生産の方からは、高齢化,後継者不足による労働力の不足,機械化の遅れ,輸入野菜との競合,耕地の宅地転用などで栽培面積の減少が続いているが、一方、ハウス栽培などの施設野菜は増加傾向です。消費の方ではやはり高齢化,人口減少により、減少傾向にある。