34. キ ク   食用菊

 

   東アジアが原産のキク科、きくが中国から初めてわが国へ渡来したのは天平時代(729~749年)といわれ、その後、観賞菊として非常に改良された。また中国から菊の薬効が伝わり、菊を薬用として菊酒が用いられてきた。

 

   わが国では古くから食用とされ、花弁に苦味がなく、味,香りのよい種類が選ばれ中でも大輪で重(かさ)ねの厚い阿房宮(あぼうきゅう)という品種が有名である。花の香りを楽しみ、上品な甘味と歯切れのよさ,黄色は料理に彩りを添える。新鮮なものを花びらだけ摘んで沸騰した湯に酢を加えてさっとゆで、甘酢に合えて付け合わせとしたり、和え物,吸い物,大根や白菜にまぜて一夜漬け,また白菜巻きにして鍋物に使う。2020年の収穫量は718t、構成比は、①愛知51.3%,②山形18.5%,③青森14.8%、そして秋田,新潟,沖縄…と続く。

 

選び方と保存   黄色で新鮮なもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬   9~12月。

 

  花びらを蒸して干しのりのように加工したものを干菊・キクノリといって、これは酢を少量いれた水で3~4分ゆでるだけでいつでも利用できる。また、菊の葉は日本料理のツマとして焼き物,刺身の敷物に使われ、彩りとともに防腐,毒消しなどの役割を合わせ持ち、天ぷらとしても食べる。ほかにも刺身のツマ用の小菊もある。

 

 

青森の阿房宮(あぼうきゅう)

 

   青森県三戸町での栽培は、江戸時代に南部家の藩主が京都九条家の庭に咲いていたキクを持ち帰って植えたのが始まりといわれ、食用菊としての栽培は明治34年ごろといわれている。さらに明治40年ごろから輸送・保存のきく「干菊」として市販されるようになり、2020年の収穫量106tの約77%が加工されている。開花は10月下~11月上旬と晩生である。