37. キャベツ 甘藍 Cabbage

 

 西ヨーロッパ及び地中海原産でアブラナ科の代表的な葉菜(ようさい)。肉厚(にくあつ)の葉は海岸植物の特長を受けつぐといわれ、結球しない野生種をケルト人が各地に広めた。イギリスやドイツでは赤ちゃんはコウノトリが運んでくるというが、フランスやイタリアではキャベツの葉の間から生まれてくるという。キャベツの名はフランス語の頭、cabocheからきており、わが国では甘藍(かんらん),玉菜(たまな)ともいう。

 

 日本には江戸時代末期に渡来、「大和本草」(1709年)にオランダナとして紹介されたがこれは観賞用のハボタンとなり、食用としての栽培は明治初めからである。その後品種改良が進むとともに急速に栽培が増え、今では周年栽培,周年出荷される野菜の代表的なものということができる。 栽培には冷涼な気候を好み、15~20℃でよく生育する。とくに、低温に強く-5~10℃の低温にも耐えるが、高温には弱く病害が発生しやすい。栽培技術の向上により大型産地が多く、根こぶ病といった連作障害のため品質低下が大きな問題となっている。

 

 他の葉菜に比べると、良質の植物性のタンパク質や酵素が多く含まれており、ギリシャ時代には薬用にされていたのもうなずける。ビタミン含量も多く、Aは緑色部に、B1,B2,Cは白色,緑色部ともに含有しており、とくにCの含量は多い。また、抗潰瘍(かいよう)成分としてのビタミンUが多いので、胃腸障害に効果がある。これらの栄養を有効に利用するのは生食(せいしょく)が一番で、肉など動物性食品の付け合わせに欠かせない。そのほかロールキャベツ,サラダなど四季の食卓に利用される。

 

 品種は、一年中出回っているやや偏平な普通のキャベツ、ほかに、小さめの球形で緑色が濃くて葉の柔らかいグリーンボール,円すい状で中まで緑黄色のポインテッドキャベツ,ヨーロッパに多い葉がちりめん状で煮物用のサボイキャベツなどがある。2022年の栽培面積は33,900ha,収穫量は1,458,000t、収穫量構成比は、①群馬19.5%,②愛知18.4%,③千葉7.5%,④茨城7.3%、そして鹿児島,長野,神奈川,北海道,熊本,兵庫,福岡,岩手,静岡…と続く。

 

選び方と保存  芯の切り口がみずみずしく、巻きがしっかりとして重量感のあるものを。新キャベツの頭のとがっているのは、中でトウが立っていることが多いので要注意。保存はラップに包んで冷蔵庫へ。

旬  新キャベツは春・3~5月、次に8~10月。

*2022年の国内収穫量が1,458,000t,輸入が10,515tと全体の中では輸入が0.7%と微々たるものである。そうはいいながら、一番輸入の多い11月だと2,239t,10Kg箱(8玉入り)換算で22万箱とびっくりする数字となっている。

 

グリーンボール

 

 デンマークのコペンハーゲンで改良された品種、少し先のとがった丸形で緑色が濃く、葉質が柔らかく甘味がありサラダなどの生食や浅漬けなどに適している。ただ、栽培上は割れやすく畑での貯蔵性がやや劣るうえに、耐病性や耐湿性も劣るので作りづらいと言われている。

 

サボイキャベツ

 

 フランスのサボイ地方で作られたことから名前が付いたもので、ヨーロッパではどこでも売られている。葉がちりめん状になって、生のままでは苦みがあるが煮くずれしにくく熱を加えると甘味が出る。ロールキャベツやスープ煮など煮込み料理に向く。産地はオランダ,ベルギー産が10~4月、オーストラリア産が5~9月に輸入されている。

 

札幌大球(だいきゅう)

 

 10月も終わりに近づくと北海道内では土付きダイコンや白菜の大袋,赤カブ,聖護院ダイコンがスーパーの店頭に並び始め、漬物作りのシーズンがやってくる。その中でもひときわ目立つのが1個で直径50cm以上、重さ15~20kgにもなるというこの札幌大球(だいきゅう)です。通常のキャベツは120日で収穫できるが、札幌大球の場合は150日と日数も余計にかかる。この品種は明治時代に外国から導入されたレート・フラット・ダッチにアーリーサマーやバンダゴーが交雑された中から、気候のあった北海道に馴化(じゅんか)されたもの。漬物にすることでシャキッとした食感と甘味が生きる。冬の保存食としてニシン漬け,切り込み漬け,カボチャ漬けなどに加工される。


                 1玉・1.180~1.480円くらい    これで1玉 約14kgくらい

 

(春)キャベツ

 

 

 冬キャベツ(寒玉・かんだま)は厳寒期をしのいで畑にあったもので、玉は偏平でかたくしまって寒気に傷んだ外葉をむいて出荷されるため白い。これに対して新キャベツ(春キャベツ・春玉(はるだま))は葉が柔らかいので玉の巻き方もゆるく球内が淡黄から淡緑でみずみずしく、いかにも魅力的である。冬物,早春ものに続いて3~4月に収穫され、東京での主産地は灯台印で知られる千葉県銚子地区で、やや遅れて神奈川からも出荷される。冬キャベツは葉肉が厚くかたいのでロールキャベツに使っても煮くずれしない,またギョウザの具に向く。新キャベツはもっぱら生食(せいしょく)用である。

 

越冬キャベツ・雪の下キャベツ

 

 北海道・和寒(わっさむ)町で1968年秋、価格暴落から畑に放置されたキャベツを翌春に雪の中から掘り出すと青々として甘味を増していたので、試しに市場へ出すと高値がついた。これをきっかけに、水田転作が進むにつれて生産が増え、近郊の士別町や剣淵町などにも広まり、この数年は倶知安(くっちゃん)町など道内各地でも雪の下(ゆきのした)で越冬させている。秋、収穫したキャベツは数十センチほど積もった畑の雪の中に貯蔵、キャベツ自身が凍結を防ごうと糖度を上げたり、たんぱく質をアミノ酸に変えることによって甘味やうまみがあっておいしいキャベツになる。品種は甘味がつくのが早い「湖月(こげつ)」と長期保存に適した「冬駒(ふゆこま)」が主力で、1月から4月上旬まで出荷される。また、大根も同様に雪の下で越冬をして出荷されている。

 

根こぶ病菌

 

 土壌中に休眠胞子の形で存在し、通常で7~8年、条件によって10~15年以上も生存する。そして、一度キャベツなどを植えると急激に増殖、根の一部にこぶができ、その後こぶは地上部の生長とともに急速に肥大して養水分の通り道である維管束を圧迫し、地上部はしおれた状態となり品質の低下や場合によっては収穫不能となる。原因は、アブラナ科(白菜,キャベツ,カリフラワー,カブなど)作物の連作によって、根コブ病菌の密度が高まることによる。

 

*根コブ組織1gには、大きさが3ミクロンの菌胞子が10億個も詰まっていて、根の腐敗によって土壌中に放出される。

*対策としては、①抵抗性品種を利用する。②アブラナ科以外の作物を輪作して、土中の休眠胞子濃度を低くする。③酸性土壌では発生しやすいので石灰を入れてアルカリ性にする。④排水をよくする。⑤収穫後の葉などはきれいにする。⑥土壌消毒する。

 

 

 

千切りとコールスロー

 

 日露戦争で若い調理人が召集され人手不足になった為、キャベツの一夜漬けからヒントを得てトンカツにキャベツの千切りが添えられた。始めたのは銀座「煉瓦亭(れんがてい)」と言われている。おいしいキャベツの千切りは、洗った葉っぱの外側付近なら2枚、内側付近なら4枚くらいの中央から延びる太い芯を包丁で切り落とす。次に全部を重ねてくるくると軽く巻き、先端から千切りに切っていくときれいにできる。

 

 コールスロー Cole slaw というのは18世紀ごろにオランダ語のkoolsalade (キャベツサラダ)から生まれた言葉で、千切りや1~2cmに切ったキャベツにマヨネーズを使ったサラダである。古代ローマの時代から食べられてきたが、18世紀になり瓶詰(びんづ)めのマヨネーズが発明されてから広まった。

 

カット野菜

 

①カット野菜の販売量が年々拡大している。これまでスーパーで販売される袋に入ったサラダや鍋物セットといったカット野菜は、生鮮野菜が高いときの代替品として利用される事が多かったが、2012年以降は生鮮野菜の卸売価格が下落しても販売個数の減少幅が小さく定着してきたと言える。惣菜や外食などで用いられる千切り,角切り,たんざく切りや乱切り等の業務用カット野菜や、近年成長著しい給食・介護食用などでも安定的な供給が見込まれ、人件費の削減や設備,保管などのコスト削減に大きく貢献している。現在、「カット野菜原料」の市場規模は約600億円→「カット野菜製造」の市場規模は約1,330億円→「カット野菜販売」の市場規模は約1,900億円といわれて、まだまだ成長過程にある。(農畜産業振興機構2012年度)。これらの内訳は、①スーパー,コンビニなどの小売業が34.1%、②外食産業が24.5%、③弁当・惣菜用が14.4%、④給食・介護食用が10.0%の順で、主体は小売業と外食,弁当・惣菜用である。食の安全意識の高まりと外食産業全体で技術がある人を雇用しづらく、プロの手で加工・管理されたカット野菜が必要になっている。調理場はどんどん簡素になって、今ではファミリーレストランやファストフード,コンビニのベンダー,ビジネスホテルも利用をしている。

 

②普通に畑でとってくる野菜だと水洗いだけで食べられ新鮮でよいが、スーパーなどで販売されるカット野菜は食中毒などを防止するため、消毒が必要になる。これは食品添加物として認可されている次亜塩素酸ナトリウムを使い、殺菌をして微生物を排除する。その後なんども水洗いをして安全な状態で供給されます。殺菌とともに大事なことは、収穫から低温管理をしていかに早く加工して販売をするかにかかっている。外食などで使用しているものは、安い外国からの輸入品が使用されていたり、海外の工場でつくられているものもあるので、しっかりと確認をしたいものです。

 

《カット野菜の作り方》 カット野菜は主に専門の加工工場で作られます。

野菜の受け入れ→水洗い→カット(2つ割,4つ割)水洗い→スライサーでカット→次亜塩素酸ナトリウムで殺菌→水洗い→脱水機で水切り→計量→袋詰め→金属探知機で検査→仕分け→冷蔵庫保管→出荷。

 

③消費者がカット野菜を購入する理由は、「家庭での調理時間を節約できる,1回で使い切れる,手間をかけずに食べられて便利,いろいろな種類の野菜が手軽にとれる」といった「簡便性」にある。カット野菜は栄養がないと言われたりもするが、たしかにカット野菜は切り口から細胞内の栄養素が流れ出したり、浸しておいた水が細胞内に入り込んだりするので栄養が失われることもある。ただ、大半の栄養素が流れてしまうかというと、女子栄養大学,茨城県工業技術センターなどのデーターによるとそんなことはないようです。キャベツの千切りを次亜塩素酸ナトリウムに浸けて殺菌処理,洗浄したときのビタミンCは約30%減少した。ただ、家庭で食べるときも洗浄はすることから、両者に大きな差はないようである。ビタミンは水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの2種類ある。水溶性ビタミンは水に溶けやすく熱に弱い性質で、ビタミンB群(ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,パントテン酸,ビタミンB6,ビタミンB12,葉酸,ビオチン)とビタミンCの9種類。脂溶性ビタミンは油に溶けやすく熱に強い性質があり、ビタミンA,D,E,Kの4種類。ほかにも食物繊維(セルロース)などの水溶性ではない栄養素もあります。「野菜を切るのは面倒だから野菜なしでよい」と考えて野菜を取らないよりも、カット野菜を買って調理に組み込む方がずっと健康的でしょう。

 

④スーパーや八百屋で購入するカット野菜などの加工原料,惣菜・外食などの業務用の野菜消費の動きを見ると、2015年では加工原料・業務用が57%(主要13品目の国産野菜,農村政策研究所)と半分以上を占めて少しずつ増えている。ニンジンで64%,ネギ64%,トマト62%,ダイコン61%,タマネギ59%,レタス59%となっている。この中でも惣菜・外食などの業務用からカット野菜などの加工原料へシフトをする動きが顕著で、これは調達量の大きい加工原料用が契約栽培によりの安定的な供給が見込まれ、不作による原料高騰のリスクを避けることができること。プロの手で加工・管理することで人件費の削減や設備,保管などのコスト削減が可能なことによる。

 

*この加工・業務用需要の中で輸入が29%を占めており、国産野菜の対応強化が求められている。