41. ギンナン    銀杏

 

   中国が原産でイチョウ科に属し、中国では葉が鴨(かも)の脚に似ていることから「鴨脚(ヤージョオ)」と呼び、これがいちょうとなったもの。公孫樹,鴨脚樹,一葉とも書く。今から1億年前のジュラ紀,白亜紀と呼ばれる恐竜の時代にもっとも繁栄した植物で、世界中に分布をしていたが、氷河時代の到来で絶滅の危機に瀕した。このとき中国逝江省天目山一帯に生き残ったのが、今の祖先となっている。わが国へは諸説あり、朝鮮半島を経て仏教と共に伝来(552年)した、また平安後期から鎌倉時代にかけてともいわれる。各地の神社,仏閣に植えられた。「万葉集」(8世紀末)の中に「ちち」という語があり、これがいちょうではないかといわれる。雌雄異株で花粉の中に精虫がいるが、これを発見したのは1895年,わが国の平瀬作五郎氏である。一族一種のため雌木だけに結実し、その種子をぎんなんという。

 

   成熟した種子は、外側に黄褐色の肉質の外種皮があり悪臭を発し、さわるとかゆくなったりかぶれたりするビロボール,ギンゴール酸が含まれている。とくにビロボールはウルシかぶれを起こすウルシオールに似た物質である。この外種皮をアミ袋に入れて水の中に数日放置し、腐敗させてきれいにし、堅い殻の中の胚乳(はいにゅう)を食用とする。主成分は糖質で、でん粉が多く蛋白質にも富み、また、各種のビタミンも含まれている。青緑色の美しい色とほろ苦い独特の風味が喜ばれ、寄せ鍋,茶碗蒸し,おでんなどの彩りに用いられる。

 

   植えてから6~8年しないと実がならないが、なり始めると年々結実が盛んになる。従来は実生樹を放任し収穫をしていたが、近年は大実系の金兵衛,久寿(きゅうじゅ),藤九郎などを果樹栽培する例が増えている。2020年の栽培面積は594ha,収穫量は930t、収穫量構成比は、①大分42.8%,②愛知23.2%,③福岡6.5%、そして静岡,熊本,愛媛,群馬,岐阜…と続く。

 

選び方と保存    白くよく乾燥しているもの。保存は網袋に入れて冷暗所へ。

旬   秋。


 *2021年の輸入が863tと全体の中では輸入が47.6%と半分近くを占めている。

 

 

イチョウ葉エキス

 

   葉に含まれている有効成分のフラボノイドとテルペンラクトンは、①血小板の疑集を抑えて血行をよくする。②動脈の収縮を抑えることで血液の流れがよくなる。③LDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑制して血液をさらさらにするとされ、これによって血管が丈夫になると言われている。ドイツやフランスでは1970年代に入ってすぐ脳の血流促進、末梢血流障害の改善のために医薬品として認可され使われている。このフラボノイドには活性酸素を除去する抗酸化作用があり、ガンなどの治療に期待されている。

 

イチョウ並木

 

   イチョウは高さ30~40m,雌雄異株の落葉高木で、生長が早く樹形が美しいこと、初夏の芽吹き・秋の黄葉の美しさから日本各地で街路樹として植えられ、全国で50万本といわれている。有名なイチョウ並木は東京の明治神宮外苑・青山通り口から外苑中央広場円周道路にかけての146本、甲州街道追分交差点付近から高尾駅前にかけて763本、北大構内の北13条通り両側、東西にわたる70本、大阪御堂筋(みどうすじ)などがよく知られる所である。加えて東京都,神奈川県,大阪府で都道府県の木に指定され、さらに市町村の木にも指定が多い。街路樹の構成比を見ると①イチョウ,②サクラ類,③ケヤキ,④ハナミズキ,⑤トウカエデ,⑥クスノキ,⑧モミジバフウ,⑨ナナカマド,⑩プラタナス,⑪カエデ類,その他と続くが、公共事業削減のあおりを受けて減少気味となっている。  写真は北海道庁赤レンガ前 29本