44.クレソン Cresson

 

   ヨーロッパ中部に野生したアブラナ科の多年生水生植物から選抜されたものが、現在の栽培種で欧米には数少ない水性野菜の代表でもある。クレソンはフランス語、英名はウォータークレス Water cress、和名はオランダミズガラシ,オランダガラシ。14世紀ごろフランスで栽培化され、わが国へは、江戸時代にオランダ人が自給用に種子を持ち込んだといわれるが、明治3・4年とする説もある。その後、各地の沼や小川に野生化している。

 

   生育には夏冷涼で冬が温暖な場所が適し、水温15℃前後の清流や湧水を好む。8℃以下では生長が止まる。繁殖には種子繁殖と栄養繁殖があり、一般には栄養繁殖をする。これは春になって高温長日になると、ほふく枝(つる)を盛んに伸ばすので、その茎を2~3節に切ってしろかきした水田に一面に散布し、根付くのを待って水をじょじょに張り、10~15㎝の水深とする。こうした本格的な栽培は昭和40年代後半からで、それ以前は河川で自然に自生するものを利用していた。繁殖力が強く一年中収穫できるが、春の鮮緑色の葉がもっとも品質がよい。

   特有の香りと辛味(シニグリンというアルカロイドの仲間で、葉と種子に含まれ、水にさらすと辛味を増し、ゆでると少なくなる性質がある)を賞味し、ビフテキやローストビーフ,ハンバーグの付け合わせには欠かせないもので、需要の大半がホテルやレストランなどの業務用であるが近年は栄養豊富な香辛野菜として一般向けが伸びて、サラダ,お浸し,みそ汁,スープの実などに利用される。栄養的にはビタミンAとCが多い。2020年の収穫量は674t、構成比は、①栃木39.6%,②山梨36.4%,③沖縄6.8%、そして和歌山,大分,大阪,静岡…と続く。

 

選び方と保存   葉がパリッと新鮮で緑色の濃いもの。保存はコップなどに水を入れて茎をさしておくか、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬  春。