45. クワイ   慈姑

 

 中国が原産のオモダカ科の水性植物で、野菜としての利用はわが国と中国だけで欧米では観賞用に利用されている。中国では「慈姑(ツクゥ)」と呼ばれるが、これは種球を植えるとその回りにたくさんの子球が付いた姿が慈(いつく)しみ深い母が子に乳を与えているように見えることから名付けられた。わが国では奈良時代にはすでに利用されており延長年間(923~931年)の記録に「久和為」の名がある。 クワイは長い茎の先の葉が鍬(くわ)の形に似ていることから鍬芋と呼ばれ変化したようである。英語では葉を矢に見立ててArrow head(矢頭)と呼ばれる。

 

 湿田で栽培され草丈は90~120㎝となり、根茎の先端が球形に肥大するので、これを食べる。種類は皮が青く品質のよい青クワイが中心で、ほかに多収の白クワイ,味のよい吹田クワイがある。中華料理に使われる黒クワイはさくさくした歯ざわりが特長だが、これはカヤツリグサ科のオオクログワイである。

 

 栄養的には炭水化物を約25%含み、繊維が柔らかく、ゆでて皮をむき甘く煮つめて口取りとする。これはクワイは長い立派な芽が出ているので目出度い(芽出たい)、豊産なことから子孫繁栄の縁起物として正月料理や慶祝事の料理には欠かせない特殊野菜である。1994年までは栽培面積が200haを維持していたが、2020年は26haと減少をしている。2020年の収穫量は202t、構成比は、①広島55.0%,②埼玉29.2%、そして茨城,大阪,石川…と続く。

 

選び方と保存  芽がよく伸びて色,つやのよいもの。保存はポリ袋に入れて冷暗所へ。

旬  11~12月。