67. シ ソ   紫蘇

 

   ヒマラヤ,ミャンマー,中国が原産で、シソ科に属する一年草。わが国へは古く、縄文時代の遺跡からタネが出土している。高温には比較的強いが寒さには弱く、発芽の適温は22℃前後、生育適温は25℃くらいである。シソは夏の間葉を摘んだものに、秋になると花穂を出し花をつけ種子となる。この種子には休眠があり、採取時(9月)から翌春2月ころまで発芽をしない。もし、この時期に播種する場合は前年の種子を使う。

 

   特有の芳香を含み香辛野菜として使われる。葉にはカルシウム,鉄分,各種ビタミンに富み、とくにカロテンとビタミンCが多い。赤ジソにはアントシアン系の色素が含まれ、この色素は酸で赤に、アルカリで青になる性質を持っている。シソの葉を梅漬けに入れると赤くなるのはこのためで、ショウガ,ミョウガ,チョロギなどの色付けに使われる。独特の香気は、ペリルアルデヒドという芳香性のもので、強い防腐力,防黴(ぼうび)力(かびを防ぐ)があり、刺身のツマとして青ジソや花穂が添えられてきたのは、この性質を利用して魚の生ぐさみをとり、食中毒を防ごうとしたものである。ほかにも広い薬効があり、シソ酒は風邪や喘息(ぜんそく)のせきをしずめ痰(たん)をとり、風呂の中に入れると冷え症,肩こり,腰痛などに効く。利用する部分によって、次のように分けられる。

 

①葉ジソ…赤ジソ(葉色は普通の紫色)又は、青ジソ(大葉(おおば)として一般青果用,葉色は緑色)で葉を用いる。これには葉の縁に深い刻みがあり、ちりめん状のしわがあるものをチリメンジソといい赤,青それぞれに品種がある。2020年の収穫量は8,470t、構成比は、①愛知45.7%,②宮崎12.8%、そして静岡,大分,群馬,茨城,京都,高知,三重…と続く。生食用が70%,加工用が30%、近年は中国からの輸入も増えている。


②花穂,穂ジソ…花穂の数花が開き、先にまだ蕾(つぼみ)が残っているときに利用する花穂と、花が咲き終った茎を5~6㎝に切った穂ジソがある。栽培中に朝夕覆(おお)いをして日を短くしてやると、いつでも花穂をつけさせることができる。用途は刺身のツマや汁物の吸い口,薬味にする。  

③芽ジソ…赤芽(紫芽(むらめ))は赤ジソ、青芽(あおめ)は青ジソで、ともに播種後15日ぐらいのふた葉のころに根元をはさみで切って収穫する。これも刺身のツマ。              

④シソの実…実の充実した穂から蕚(がく)といっしょにしごきとり、塩漬けやつくだ煮にして保存食品とする。

 

選び方と保存   青ジソは鮮やかな緑色でパリッとして、変色がなく茎の切り口が新しいもの。花穂は花のたくさんついたもの。穂ジソは花のついてないもの。保存は霧吹きをかけてポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬   青ジソは促成ものが一年中、赤ジソは6~7月。

 

ルテオリンとシソ

 

   しその種子には抗酸化力が極めて高いルテオリンというフラボノイドが豊富に含まれている。このルテオリンには活性酸素を撃退する力を持ち、動脈硬化を防ぎ、アレルギー発生時の悪化原因となる症状を緩和する働きがあるのでアトピー,花粉症,喘息(ぜんそく)などの改善に効果がある。こうしたフラボノイド類は、セリ,セロリ,春菊,ピーマン,レタス,カモミールなど広く野菜類に含まれ、毎日野菜を食べることによって体内にとどめておくことができる。

 

シソのジュース

 

   赤ジソの葉200gを水でよくもみ洗いして絞り、新聞紙などに広げて生乾きの状態にする。水1ℓをわかしてシソの葉を入れて、中火で20分煮てガーゼでこす。これに白砂糖500g,食酢250cc,クエン酸小さじ半分を入れ、中火で約30分煮ながらアクをとり最後に塩をひとつまみ入れる。これで色あざやかな自家製のジュースの出来上がり。常温で冷暗所に保存が可能、水で3倍に薄め氷を入れて飲む。花粉症,喘息(ぜんそく)などの改善に効果がある。