70. シュンギク   春菊

 

 地中海原産でキク科に属する。春に花が咲くことから春菊の名があるが、春先の若い葉がもっとも柔らかくておいしい。また、関西ではキクナともいう。ヨーロッパでは香りが好まれず、食用としての利用はなく、観賞用としてもっぱら利用される。わが国へは、15世紀末に中国を経由して入ったとされる。

 

 涼しい気候を好むが、暑さにも寒さにもかなり強く、生育適温は15~20℃である。長日性なので、春に日が長くなると花が咲く。播種から収穫するまで、春まきで30日,秋まきハウスで60~80日と比較的短期間で、周年栽培がされている。種類は次の通り。 ①大葉種…葉肉が厚く品質はよいが、耐暑,耐寒性に弱い。 ②中葉種…一般に出回っているのはほとんどがこれで、枝はやや多く葉は柔らかい。 ③小葉種…葉は細めで枝が多く、抽苔(ちゅうたい)がやや早いが耐寒性がある。

 

 春菊は緑黄色野菜のひとつとして重要であり健康保持のために欠かせない。ビタミンAの含有量が多く、次いでC,カルシウムを含む。柔らかくて香りがよく、彩りがよいので、水炊きなどの鍋物や和え物、汁物,お浸し,天ぷら、そして生でサラダにも利用される。2021年の収穫量は27,200t、構成比は、①大阪12.5%,②千葉10.0%,③茨城8.9%,④福岡8.8%,⑤群馬8.0%、そして兵庫,栃木,埼玉,広島…と続く。

選び方と保存  葉の色が濃く茎の下部から密生したもので、茎は細くて短いほうが柔らかい。茎の太いものは固いので注意が必要。保存はポリ袋に入れて垂直に立てて、冷蔵庫へ。

旬  11~2月。


 

貯蔵の姿勢

 

 野菜,果物の鮮度は、貯蔵中(収穫から販売まで)の姿勢によって変わることがわかってきた。ほうれん草や春菊,小松菜,アスパラガスなど上へ上へと育つ野菜は、収穫後も起きあがろうとして栄養分をよけいに消費してしまうという。とくに春菊は水平に並べると屈曲しやすいが、このときの植物ホルモンであるエチレン生成量をみると、垂直のときの約2倍となっている。これは、収穫直後から栽培時の姿勢を保つことが消耗を防ぎ、鮮度保持に効果のあることを意味している。

 

 ただしこれらはすべて常温でのことで、冷蔵庫の低温下では呼吸活動が押さえられることから鮮度の差はない。それよりも少しでも早く食べてしまいたいものである。