84. セロリ    Celery

 

 ヨーロッパ,地中海沿岸,中近東,インド北部にかけての広い地域に野生種が分布し、原産地と思われるセリ科の野菜。ギリシャ,ローマ時代から薬用とされたが、野菜としての栽培は17世紀に入って南ヨーロッパで始まった。わが国へは、豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592年)のときに加藤清正が持ち帰りキヨマサニンジン、江戸時代にオランダから長崎に伝えられてオランダみつばと呼ばれ、セルリー(農林水産省の発表資料では全てこの名前)の名もある。食用として普及し始めたのは第2次世界大戦後、とくにビニールハウスが普及し、食生活の洋風化が広まりだした昭和30年代以降に産地化が急速に進展した。

 

 冷涼で温和な気候を好み、生育の適温は18~23℃と幅が狭い。そのうえ、生育日数が約5カ月と長いので、同じ地域で一年中収穫することは出来ない。品種には茎の色によって、黄色種と緑色種,両者の交配種に大別されるが、現在は品質がよく軟白も容易な大株の交配種のコーネル619が主力で、あと株売り用のグリーン種のトップセラーも栽培される。

 

 栄養分の主成分はビタミン群で、B1,B2,A,Cの順、そのほかB6,葉酸,ナイアミン,鉄の含量も多く栄養価の高い野菜である。昔から補血,強壮,鎮静などに用いられ、食物繊維も多く整腸作用がある。強い独特の芳香(アピイン)には、いらいらや頭痛を和らげる働きや高血圧や不整脈を抑える効果や抗酸化作用がある。葉柄の歯切れのよさを賞味し、サラダとして生食されることが多い。良質なものは緑色で肉質が厚く、食用とする第一関節が長い。葉はスープ,シチューに入れたり、天ぷら,つくだ煮,ベーコンやウィンナーなどと炒めてもおいしい。また、セロリの種子は「セロリ・シーズ」として、セロリと同じ香りとかすかな苦味があり、ソース,スープ,漬物などに香辛料として用いられる。ほかにも、根を食用とするセルリアクがある。2022年の収穫量は29,300t、構成比は、①長野41.6%,②静岡18.0%,③福岡12.2%,④愛知9.5%、そして茨城,千葉,香川,北海道…と続く。

 

選び方と保存 葉がみずみずしく茎は太く長く、切り売りは茎にスが入ってないこと。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬  静岡産の出回る12~4月と高冷地・長野産が出回る6~10月。