86. ソラマメ       空豆 蚕豆

 

 原産地は西アジア,アフリカとも中央アジア,地中海地方ともいわれるが、はっきりとはわかっていない。マメ科。和名の空豆は、花のあとになる実が空に向かってはねたようになっている為で、漢名の蚕豆(ツアントウ)は、成熟したそら豆の莢(さや)が蚕(かいこ)の形に似ているところからきた。栽培は古くエジプト人や古代ギリシャ時代から人類に親しまれているが、現在の栽培の中心は中国で、乾燥まめにして保存、みそなどの調味料に加工もする。わが国へは中国を経て奈良時代に伝わったといわれるが文献にでてくるのは江戸時代初期の「多識篇」(1631年)で、その後明治時代に多くの品種が導入され、これが今へとつながっている。

 

 生育適温は20~25℃で、多少の寒さには耐えるが厳寒には弱く、高温も嫌う。そのため、冬の寒さが比較的温和な関東以南で、秋に播種して越冬し春に収穫する。収穫適期は3日間といわれるほど短く、マメがさやについているところが黒く変わるとマメが硬くなっておいしくなくなる。この為、ひとつの産地での出荷期間が短い。加えて、生育期、特に花芽がついた時や結実したときに遅霜などによって大きな被害を受けることがある。サヤエンドウと並んで連作障害の激しい作物なので注意を要する。品種には、早生(わせ)の房州早生,大粒で品質がよく収量の多い一寸そら豆,陵西一寸などがあり、5~6月がむき実用の最盛期である。

 

 栄養的には、でん粉と蛋白質,ビタミンB1,B2,C,鉄,無機質に富む。そら豆のよさは、塩ゆでにした濃い緑色の莢から新緑の豆をはじき出したさわやかな味である。鮮度のよいものは皮ごと食べられ、枝豆とともにビールのつまみやおやつとされる。鮮度の低下が早いので、新鮮な莢入りのものを買って調理する直前に莢から豆を取り出して用いるのがよい。味が淡泊なので油ともよく合い、天ぷら,かき揚げ,炒め物,そら豆ご飯,含め煮,サラダ,ポタージュ,グラタン,コロッケ,クリーム煮などに料理される。生のそら豆を発酵させて作ったのが中国の調味料の「豆板醤(とうばんじゃん)」である。2021年の収穫量は13,900t、構成比は、①鹿児島23.7%,②千葉17.1%,③茨城9.1%、そして愛媛,宮城,長崎,香川,福岡,熊本,新潟,鳥取…と続く。

 

選び方と保存  きれいな緑色のサヤでよく太って柔らかいもの,背筋が茶色に変色しているものは日がたっている。保存は冷蔵庫へ。

旬  4~6月。


おいしい食べ方

 

 さやから豆を出して、俗(ぞく)に「お歯黒」(側面の黒い部分)と呼ばれるところに包丁で切れ目を入れる。そして、鍋にお湯を沸かして沸騰したら塩を入れて、豆を入れ2~3分を目安に好みの固さにゆでる。ゆでたてがおいしい。冷ますときはそのまま冷ます方がよい、時間がたつと褐色になるので早めに食べること。

 

豆板醤 トウバンジャン

 

 中国・四川名産の空豆(そらまめ)を発酵させて作ったみその一種で、日本で一般的に使われているものは米麹または麦麹および唐辛子を加えて再発酵させたもの。麻婆(マーボー)豆腐、麻婆(マーボー)茄子、回鍋肉(ホイコウロウ)などの四川料理はもちろん、野菜炒めに加えたり用途はいろいろ。