106. トウモロコシ  とうきび  Sweet corn

 

   メキシコからグアテマラが原産で、イネ科の作物のテオシントが栽培化されたものといわれ、紀元前には南北アメリカにまたがって栽培されインディオの主要作物であった。コロンブスのアメリカ大陸発見により、その種子がスペインに入り次第にヨーロッパへ広がり、今では、麦,米とともに世界の3大作物となった。わが国ヘは、天正7年(1579年)にポルトガル人により長崎ヘもたらされ、ナンバンキビ,トウキビ,タマキビなどと呼ばれた。一般的な普及は、明治初年にアメリカから北海道に再導入されてからで、昭和27年以後のゴールデンクロスバンタム、昭和46年のハニーバンタム、昭和58年のピーターコーン(黄色粒と白色粒が3対1の割合で混じる)の導入が拍車をかけた。ここ数年粒皮が薄く柔らかいので、歯にはさまったり口に残ることが少なく甘味のより強い日持ち性に優れた品種が次々と開発され出回っている。ゴールドラッシュ,ゆめのコーン,恵味ゴールド…これらの品種はラップに包んで電子レンジで約5分温めるだけですぐ食べられる。

 

   栽培には原産地の気候から高温多湿を好み、生育期には相当の降雨を必要とする。適温は25~30℃で、平均気温が15℃以上あればよい。栽培は容易で比較的土地を選ばず、粗放,機械栽培にも耐え、しかも栽培シーズンに幅がある。

 

   栄養的には、蛋白質,脂肪,糖質を多く含み、ビタミンB1とB2はゆでても含有量が変化しない、ほかにも細胞の老化を防ぎ血液の循環を円滑に保つビタミンE,腸の掃除役の食物繊維もたっぷりと含まれている。ゆでたり焼いたり、バター炒め,スープなどに利用する。また、わき芽の幼穂はヤングコーンとして酢漬けや中華料理に利用される。とうもろこしは収獲後、できるだけ早くゆでるか焼くかして食べないと、ごく短時間のうちに粒の中に貯えられた糖分がでん粉に変わって、甘味がなくなり固くなる。種類は次の通り。

①デントコーン…飼料用

②フリントコーン…食用,飼料,工業用

③ポップコーン…爆粒種

 

④スイートコーン…甘味種,一般青果用

   2022年の栽培面積は21,300ha,収穫量は208,800t、収穫量構成比は、①北海道37.4%,②千葉7.8%,③茨城7.1%,④群馬6.0%、そして山梨,長野,愛知,埼玉,栃木,静岡…と続く。

   

選び方と保存   みずみずしい緑色の皮を、指で表面をなぜて実が先まで詰まっているもの。ヒゲは茶褐色でふさふさしているものがよく、ヒゲの量が少ないのは実の入りが悪い。保存はゆでて冷蔵庫へ。

旬   6~8月。


 

ヤングコーン Young corn

 

   とうもろこしのわき芽の幼穂を芯ごと収穫したもので、6~8㎝で柔らかく丸ごと食べられ、生のものは5~6月に出回る。別名ベビーコーン,ミニコーン。通常は水煮として缶詰め,びん詰めとして出回り、サラダ,スープ,シチュー,中華料理などに使われる。国産のほかにタイなどからも輸入されている。旬は6~8月。

 

花粉直感(かふんちょくかん) キセニア現象

 

 とうもろこしはススキの穂を太くしたような雄花が先に開花し、包葉(実)の先にのぞくヒゲ(絹糸状のメシベ)がでるのを待つ。花粉は風によって飛散し、めしべについて受精し粒を完成させる。1本1本の絹糸の根元に一粒ずつ実ができるが、花粉が平均につかないと歯の抜けたとうもろこしになる。家庭菜園などで植える本数が少ないと人工授粉を行い確実に受粉させる必要がある。このとき、品種によっては異なった品種の花粉がかかるとかかった品種の粒や色,味になってしまうことがあり、これを花粉直感という。ピーターコーン,ハニーバンタムなどのスーパースイート系にはこの性質があり、甘さが抜群であるだけに注意が必要で、他品種と300m以上離して栽培しなければならない。

 

ピュアホワイト・雪印種苗

 

 真っ白いとうもろこし、光沢のある白い実で見た目にも美しいことから「Pure White」と名付けられた。栽培には、他の品種(イエロー・バイカラー系)の花粉が風に運ばれて受粉しないように300m以上隔離して栽培しなければならないこと、くわえて、収穫適期が一般のトウモロコシより非常に短かいことから、生産に高いリスクを伴ない収穫量が少ない。夏の北海道は日照時間が長く、太陽の光をいっぱいに受けて育つことから糖度が高く、多い時で19度くらいにもなる。最初は、生で食べて「サクサク」とした食感とやわらかさと甘さを味わって、あとは電子レンジでチンが簡単。

 

電子レンジで簡単調理

 

 とうもろこしは6~9月が最盛期、キッチンは蒸し暑い季節です。この時に電子レンジを使うことで,暑さから解放される。①電子レンジ…皮は直前にむき水で洗って、ビニール袋の中にひとつまみの塩をまぶして入れ、1本当たりレンジで4分で出来上がり。②お湯の場合…皮はゆでる直前にむき、鍋にとうもろこしがかぶるぐらいの水を入れ、沸騰してから強火で5~6分を目安にゆで上げる。そのあと冷えた塩水(水500ccに塩大さじ1杯と氷適量)につけるとしわにならない。

光合成と呼吸

 

 緑色植物は、太陽エネルギーと水 H2Oと空気中の二酸化炭素 CO2を、光合成によって糖分 CH2Oと酸素 O2に変える。夜間は、この糖類(ブドウ糖がたくさん結合したものがでん粉である)が分解してエネルギーとして放出され、これを呼吸作用という。

 

 夜間の冷涼な地方ではこの呼吸作用が抑制されて、昼間に蓄積された養分が無駄なく実となりおいしい野菜,果実となる。当然に、この野菜,果実は収穫したあとも呼吸をして生命を保っており、このときは体内に蓄えた糖類をエネルギーとしている。このため水分がなくなったり、甘味が減ずるといったことになる。スーパースイート系のとうもろこしは、光合成によって蓄積された養分の糖類からでん粉ヘの移行が少ない性質があり、そのため一昔前のとうもろこしに比べ甘い品種となっている。