ハーブ Herb

 

   ハーブの語源は「緑の草」を意味するラテン語からきており、ギリシャ,ローマ時代から栽培され、薬草,香草,香辛野菜などの総称でもある。世界的なハーブブームは1960年代の自然回帰を掲げたヒッピーの運動で、これが我が国には1980年代のバブル期にさしかかる頃に上陸する。そして花開いたグルメブーム、海外旅行ブームが普及の後押しをする。ここでは生で使えるフレッシュハーブを中心にまとめた。

 

1. アニス Anise

 

 ギリシャ,エジプトなどが原産のセリ科の一年草、実(み)の中に含まれているアニス油という揮発精油が甘味のもと。薬効としては消化,食欲増進効果や腸にたまったガスの排泄などがある。葉はパセリと同じように料理に添えたりサラダの中に入れたり、チーズにあう。芳香のある種子はクッキー,ケーキ,キャンディ,スープの中に入れる。

 

選び方と保存  若葉は使うつどに摘み取って、種子はよく熟したものを収穫する。

旬  6~10月。

 

2. オレガノOregano

 

 ヨーロッパから西アジアが原産のシソ科の多年草、別名ワイルドマジョラム。初夏に長く伸びた茎の先に紫紅色の花を付け、美しいドライフラワーになる。強い芳香に刺激的な辛味と苦味をもち、薬効としては健胃,鎮咳(ちんがい),鎮静,消化作用などがある。古くからイタリア料理に使われ、チーズやトマトとよくあうことからパスタ,肉や魚介類の料理、とくにピザには欠かせない。

 

選び方と保存 若葉は使うつどに摘み取って、保存には開花前に刈り取って陰干しにする。乾燥した方が風味が強くなる。

旬 5~10月。

 

3. カモミールCamomile

 

 ヨーロッパが原産のキク科、別名カミツレ。りんごに似た甘い香りで、ひき始めの風邪や不眠などのトラブルに効果があり、花の部分を生のままか乾燥させたものをハーブティーとしたり、肌をなめらかにするので入浴用に用いる。また、ポプリ,染め物とする。一般的なのは一年草のジャーマンカモミールで、菊の花に似て中央が白,外側が黄色の花を付ける。一度植えると次からはこぼれ種子からよく育つ。ほかに多年草で横に這(は)うので芝生状に使われるローマンカモミール…芝生にするためには花芽をみたら摘み取り伸びてきたら刈り込んで株分けをよくするとよい,黄色の鮮やかな花で染め物に使われるダイヤーズカモミール,白の八重咲きの花をつけるダブルフラワーカモミールがある。

 

選び方と保存  草丈40㎝前後、花芯が盛り上がったもの。保存は晴天で朝露が乾いたころに花が開きすぎないものを摘み取って陰干しにして乾燥させる。

旬  4~10月。

 

4. セージ Sage

 

 地中海沿岸が原産のシソ科、学名には「救う,治す」という意味があり、ローマ人が各地に薬用として広めた。赤や紫の花のサルビアの仲間で、別名薬用サルビア。初夏に紫のきれいな花を咲かせ、ハーブ畑の中で銀灰色の葉との対比が美しい。強い香りとほろ苦さが特長で、肉の脂肪分を中和しくさみを消すのでハンバーグ,ソーセージ,ミートソース,シチューなどの肉料理に使われ、また、筋肉の痛みをやわらげたり、消化,強壮,精神安定,解熱に効くといわれ、ハーブティー,入浴用,ポプリ,染め物と用途が広い。

 

選び方と保存  葉を使うつどに摘み取る。保存は開花前に陰干しにする。

旬  5~10月。

 

5. セボリー Savory

 

 ヨーロッパ南部が原産のシソ科の一年草、古くギリシャ・ローマ時代から食用,薬用にされていた。一般的なのはサマーセボリーで、別名キダチハッカ。辛味と強い芳香があり、小さい葉のついた小枝ごと使う。夏に薄紫色の小花を咲かせる。昔から消化,整腸作用があり、サラダやスープにいれたり、「ビーンハーブ」とも呼ばれるように豆,肉料理によく合う。ほかに多年草のウインターセボリーがあり、冬でも使えるが香りが強いので控えめに使うこと。

 

選び方と保存  柔らかい葉を使うつどに摘み取る。保存は開花前に陰干しにする。

旬  5~7月。

 

6. ゼラニウムScented geranium

 

 南アフリカが原産のフウロソウ科、夏の高温には弱いが、挿し木で容易に栽培できる。葉や茎には強い香りがあり、その香りはさまざまで、それぞれにその香りに似た植物の名前がついている。一般的なのは、ばらの香りで小さなピンクの花を咲かせるローズゼラニウム、ほかにレモンゼラニウム,ライムゼラニウム,ストロベリーゼラニウム,アップルゼラニウム,ミントゼラニウム,アーモンドゼラニウムなど多くの種類がある。菊の葉に似た葉をクッキーやホットケーキに焼き込んだり、ジャムや飲み物の香りづけ,入浴剤,ポプリ,押し花にしても香りがよい。

 

選び方と保存  明るい緑色の葉を使うつどに摘み取る。保存は9~10月に茎葉を乾燥させるが、花はほとんど香りがない。

旬  5~10月。

 

7. セルバチコ

 

 地中海沿岸原産のアブラナ科の宿根草。ルッコラ(ロケットサラダ)の野生種で,別名ワイルドルッコラ。水菜のように葉に刻みがあり、土耕のルッコラよりさらに強烈な風味、強いゴマの香り、辛みを持っている。サラダやお浸し,鍋物にも向くが、茎の太い部分は固いので除くこと。宿根草なので株は抜き取らず、必要なときに茎葉を摘み取って利用する。

 

選び方と保存 葉がみずみずしいものを選び、なるべく早く調理する。保存は水洗い後、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。保存は冷蔵庫へ。

旬 4~11月。

 

8. タイム Thymus

 

 地中海沿岸が原産のシソ科の常緑性小低木、別名タチジャコウソウ。一般的なのはコモンタイムでほかに数百種あるといわれる。栽培しやすくすがすがしい香りとほろ苦さが身上、乾燥させるとマイルドな香りに変化する。肉や魚のくさみを消すので、ソーセージやコロッケの風味づけ,トンカツソースに使われ、とくにブーケガルニ(パセリ,セロリ,タイム,月桂樹の葉などを小束にしたもので、ソースや煮込み料理,燻製のピックル液などに香りをつけ肉のくさみを消すために使う)には欠かせないが、どんな食品とも相性がよい。また、ハーブティーはのどの痛み,せき止めに効果がある。

 

選び方と保存  生葉は使うつどに摘み取る。保存は開花前に枝付きのまま陰干しにして乾燥させ、容器に入れる。

旬  5~10月。

 

9. タラゴンTarragon

 

 西アジアが原産のキク科、仏名エストラゴンは「小さな竜」の意で、根がとぐろを巻いた形をしていることによる。一般的なのはフレンチタラゴンで、葉を利用し甘い個性的な芳香とかすかな苦みを持ち、フランス料理のエスカルゴには欠かせない。暑さには弱く、株分けで増やす。食欲増進,健胃効果があり、肉や魚料理,サラダやシチュー,ドレッシングの香りづけに使われる。ほかにシベリア原産のロシアンタラゴンがあるが、香りが乏しいのであまり利用されない。

 

選び方と保存  つやのある緑色の細長い葉を使うつどに摘み取る。保存は乾燥か冷凍、オイル,酢に漬けても香り,色がきれいでいつでも使える。

旬  4~10月。

10. チャイブ Chives

 

 ヨーロッパが原産のユリ科、フランス名はシブレットCiboulette でネギの仲間だがネギ臭さがなく柔らかく、上品な香りとピリッとした辛味が特長。寒さには強いが霜に当たる前に、早目に室内におくと冬でも利用できる。薬効として風邪,頭痛,整腸などがあり、あさつきを細くしたような感じで、みじん切りにして焼魚,焼肉,スープ,オムレツ,シチュー,マリネなどに用いる。また、初夏にピンクの花を咲かせることから花壇のふちどりにしたり、エディブルフラワーとしてサラダやスープの浮かしとする。ドライフラワー,観賞用には花を咲かせるが、花をつけた株は葉が固くなり香りも落ちる。

 

選び方と保存  普通は春から初夏に草丈20㎝前後の若い葉を収穫する。保存は自然乾燥すると香りが飛ぶが千切りにして冷凍、または凍結乾燥法で乾燥されて販売され消費が伸びている。

旬  4~6月。

 

エディブルフラワー

 

 料理を飾るとともに食べられる素材として、パンジー,ビオラ,プリムラ,ナスタチウム,カーネーション,ナデシコ,ホウセンカ,コスモス,トレニア,ペチュニア,ベルローズなどがある。がくを取って薄い食塩水で水洗いをして料理やデザート、菓子などに添える。

 

11. チャービルChervil

 

 ヨーロッパ東部が原産のセリ科、パセリに似た葉は柔らかな香りと甘さがあり、フランス人が好んで使うことから「グルメのパセリ」とも呼ばれる。春に小さな白い花を咲かせ、寒さには強いが暑さには弱いので真夏は半日陰で育てる。弱い光線の中でもよく育ち、冬は室内やキッチンの窓辺に鉢上げしておくといつでも利用できる。消化,健胃作用、そして発汗作用があり風邪や解熱に効果がある。白身魚,卵,サラダ,ドレッシング,スープ料理にパセリと同じように使われるが、香りが繊細なので料理の最後に使う。

 

選び方と保存  柔らかな若草色の葉を使うつどに摘み取る。保存は冷凍か、陰干しにして乾燥をする。

旬  5~7月。

 

12. ディル Dill

 

 地中海沿岸,ロシアが原産のセリ科、語源はスカンジナビア語の「静める」の意味で、糸のような柔らかい葉をして、初夏にパラソル状に黄色の小花をたくさん咲かせる。葉にはキャラウェイに似た香りと軽い辛味があり、乾燥保存した褐色の種子は風味が強い。ミネラル,カリウム,ナトリウムなどに富み、神経を穏やかにする作用があり、安眠,健胃,整腸,頭痛などに効果がある。ピクルスや魚料理,サラダ,スープ,ハーブティー,枕に入れる。種はカレー料理,パンや菓子,ソースの香りづけにする。

 

選び方と保存  糸のような葉を使うつどに摘み取る。保存は種ができたら刈りとって乾燥させる。

旬  3~7月。

 

13. ナスタチウムNasturtium

 

 ペルーが原産のノウゼンハレン科、ヨーロッパでは16世紀から食用とされ、わが国へは江戸時代に観賞用として入っている。別名キンレンカ。つる性の茎にハスのような丸い葉をつけ夏の高温には弱い、冬は霜に当たる前に早目に室内におくと花が見られる。伸びている芽をとって挿すとよく増える。葉にはクレソンのような辛味と香りがあり、サンドイッチやサラダに入れると味がしまる。花色も赤,黄,オレンジ,クリーム,ブロンズとカラフルで、砂糖菓子やエディブルフラワー(食用花)とする。

 

選び方と保存  肉厚の丸い葉を使うつどに摘み取る。保存はコップに水を入れ、挿しておく。

旬  5~10月、ただし盛夏の8月は除く。

 

14. バジル Basil

 

 インド,マレーシアが原産のシソ科、一般的なのはスイートバジルで別名バジリコ。ほかに葉が赤紫のダークオパールバジル,ブッシユバジル,レモンバジル,シナモンバジルなど多くの種類がある。フランスやイタリアでは「ハーブの王様」と呼び、葉はシソ科特有のさわやかな香りと強い強壮作用と殺菌力がある。栽培には20℃以上の温度が必要。サラダ,スープ,肉料理と何にでも合い、とくにトマトを使ったスパゲッティなどのイタリア料理には欠かせない。入浴時に入れると身体が温まり、ハーブティーもおいしい。

種を水につけるとすぐにプヨプヨしたゼリー状の粘膜で包まれ、味はないがつるりとした舌ざわりと見た目の食感が受けている。東南アジアや中国で健康食品としてフルーツポンチやゼリーとする。

 

選び方と保存  若い葉を使うつどに摘み取る。保存は開花前に刈り取って陰干しか冷凍、そしてオイル,酢に漬ける。

旬  6~10月。

 

15. ヒソップHyssop

 

 地中海沿岸から中央アジアが原産のシソ科の多年草、葉は柳のように細くてつやがありハッカに似た香りとほろ苦さがあるので、和名をヤナギハッカという。中世のころまでは花や葉を室内の床にまいて防虫を兼ねた芳香剤としていた。やや苦味のある葉は脂肪分の多い肉や魚、内臓料理,ソーセージやミートパイ,シチュー,スープによく合う。花は青やピンク,白の可愛いい色あいで花壇の彩りやドライフラワー,ポプリに使う。

 

選び方と保存  若い柔らかい葉を使うつどに摘み取る。保存は開花直前に陰干しにする。

旬  5~10月。

 

16. フェンネルFennel

 

 ヨーロッパ南部から地中海沿岸が原産のセリ科の多年草、和名ウイキョウ。一般的なのはスイートフェンネルで、ほかに肥大したセロリのような葉柄を食べるフローレンスフェンネル(これは一年草)と、葉茎が青銅色のブロンズフェンネルがある。草丈は2mと大株になるので庭のうしろに植えると黄色のパラソル状の花がいつでも楽しめる。古くから薬用とされ、鎮痛,鎮咳,消化,利尿,肥満防止に効果がある。若い葉はサラダやスープ,シチュー,グラタンに使われ、とくに魚料理に合う。種子は三日月形をして、ハーブティー,パンや菓子,ピクルスに使う。

 

選び方と保存  柔らかい葉,花,茎,種子。保存は開花後に、陰干しにして乾燥させる。

旬 5~10月。  写真は鹿児島・吉井有機農園

 

17. ベルガモット Bergamot

 

 北アメリカ原産のシソ科の多年草、別名のビーバームはみつばち(ビー)が好んで蜜(バーム)を吸いにくることから付けられた。栽培は簡単でどこでもよく育ち、冬場は地上部が枯れるが地下茎は越冬して春になると芽がでてくる。ピリッとした軽い辛味のある若葉は、サラダや詰め物料理の風味づけ,ワインやゼリーの香りづけに利用する。心身の疲れをやわらげ、疲労回復に効果があり、葉と花をハーブティーに、夏に燃えたつような緋紅色の花を咲かせ、変種に白,ピンク,紫などのカラフルな花色がありポプリ,染め物,ドライフラワーに最適。

 

選び方と保存  若い柔らかい葉。保存は開花前の葉を乾燥し、花は開花直後に陰干しにするが、乾燥するにつれて香りに甘味が加わっていく。

旬  5~10月。

 

18. ボリジ Borage

 

 地中海沿岸原産のムラサキ科、ミネラルやカリウムを豊富に含み、強壮,せき,気管支炎に効果がある。若い葉はきゅうりに似た香りがあり、サラダ,天ぷらにする。またハーブティーは熱さましや呼吸器系のトラブルによく効く。青い星型の美しい花をつけ、エデイブルフラワー(食用花・ほかにサフラン,ハイビスカス,プリムラ,ナスタチウム,コーンフラワーなどの花もフレンチドレッシングで食べる。ヘルシーさと、視覚的なぜいたくが味わえて好評)として、サラダにいれたり砂糖漬けにしてケーキに飾る。

 

選び方と保存  小さいとげのような毛で覆われた新鮮な若葉を使うつどに摘み取る。保存はゆでて冷凍をする。

旬  4~7月。

 

19. マジョラムMarjoram

 

 地中海沿岸原産のシソ科の宿根草、別名スイートマジョラム,ハナハッカ。同じ仲間に南フランス原産のオレガノがある。作りやすいハーブだが、根が浅いので乾燥に弱い。薬効として防腐,去(きょ)痰(たん),降血圧作用など。葉,茎は甘い香りで、少し苦みがあるが、オレガノやタイムより穏やかである。肉の臭いを消すので、肉料理や豆やじゃが芋の煮込みや卵料理,サラダ,ドレッシング,スープによく用いられる。またドライハーブにも向く。

 

選び方と保存  葉は細かい毛が生え、灰色がかった緑色のもの。保存は開花直前に刈り取り陰干しにする。

旬  5~10月。

 

20.ミント Mint

 

 地中海沿岸が原産のシソ科、ミントの仲間は世界中に数え切れないほどあり、わが国では「薄荷(はっか)」とも呼ばれる。どれもさわやかな清涼感が特長で、その中でも料理によく使われるのがスペアミントで、甘味のあるソフトな清涼感を持つ。また、ペパーミントはピリッとする強い清涼感、アップルミントはフルーティでまろやかな風味が特長。ほかに、クールミント,ペニーロイヤルミント,コルシカミントなど。精油の主成分はメントールで鎮静,防腐,解熱殺菌,消化不良や不眠などに効果がある。サラダやヨーグルト,ハーブティー,ガムやチョコレートの菓子類,化粧品,入浴剤などに使う。

 

選び方と保存  斑点のないきれいな葉。保存は乾燥や、ハッカ油に加工される。

旬  6~9月。

 

ペパーミントティー

 

 ハーブティーに、清涼感のあるさわやかな味と香りが好まれている。腸の壁は平滑筋という自分の意志では動かせない筋肉でできているが、ペパーミントに含まれるメントールはこの平滑筋の緊張を抑え、腹痛の原因となる筋肉の過度な収縮を起きにくくさせることから胃腸の調子を整え胃痛・腹痛を抑え、また、鎮静作用にすぐれているためイライラしているときや、不安なときにも心を落ち着けリフレッシュさせてくれる。食後にも口の中をさわやかにしてくれる、そのほか、不眠解消,花粉症の緩和,鼻づまりやせきを鎮(しず)め風邪予防,眠気を覚ます作用などがある。ただ、妊娠中の方は、飲み過ぎないこと。

 

北海道北見の薄荷(はっか)

 

 和種・薄荷(はっか)(ジャパニーズミント)はヨーロッパ種のペパーミント,スペアミントと比べると、精油に含まれるメントール(ハッカの主成分)の量が多い、ただし、香料としての品質は劣る。

 

 北見の薄荷は、明治34年ごろ持ち込まれ、自然条件によく合ったことから急速に広まった。昭和9年にはアメリカへ初輸出され、最盛期の昭和14年ごろには、栽培面積約2万ha,世界市場の70%を占めて、主に医薬品,化学薬品,香料工業などの原料となった。しかし、第2次世界大戦が始まってハッカの輸出が停止,そして戦争が終わって復興へと動き始めたが、ブラジル産などの安いハッカや合成ハッカの出現により、日の目を見ることはなかった。北見ハッカ記念館では、こうした歴史と蒸溜器の数々が展示されると共に、5月から10月の間はハッカ蒸溜実演もしている。また、近郊の滝上町では現在でも約10haほどのハッカ栽培が産業ベースで行われている。  

  

水稲のカメムシ防除

 

 カメムシは成虫,幼虫ともに籾(もみ)に口針を刺して吸引するので、籾はそこが斑点米となり、米粒に黒い模様をつける害虫。猛暑で大発生するが、水田のあぜに繁殖力の強いスペアミント,ペパーミント,アップルミント,パイナップルミントなどを植えると、カメムシの繁殖源となるイネ科雑草を駆除する効果があり、減農薬,生産コストの低減につながる。北海道・JA 峰延(みねのぶ)で栽培に取り組んでおり、環境にも優しい米作りを推進中。

21. ヤロウ  Yarrow

 

  地中海沿岸原産のキク科の多年草、丈夫なハーブで暑さ,寒さに強く土質を選ばず繁殖力も旺盛である。殺菌作用や止血作用があるのでかつては傷を直す特効薬とされた。ビタミンやミネラルをたっぷりと含むので、若葉をサラダやお浸しにする。初夏から秋に可愛いい花を付け切り花や観賞用,ポプリ,ドライフラワーに用いられる。

選び方と保存  若葉は使うつど刈り取る。保存は開花直後に刈り取り陰干しにする。

旬  4~10月。

 

22. ラベンダーLavender

 

 地中海沿岸が原産のシソ科の常緑小低木、ギリシャ,ローマ時代からラベンダー色といわれる紫色の美しい花とすばらしい香りが愛されてきた。一般的なのがイングリッシュラベンダーで、ほかにフレンチラベンダー,ラバンジンラベンダー,スパイクラベンダー,フリンジドラベンダーなどがある。精油には鎮静作用があり、気分をさわやかにしたり心地よい眠りに誘うほか、頭痛,腹痛,消化不良,疲労回復,殺菌作用などの効果がある。香水やオーデコロン,ポプリ,入浴剤,ドライフラワー,リース(飾り)などにする。

 

選び方と保存  花穂の4~5輪が咲き始めたもの。保存は陰干しにして乾燥させる。

旬  6~7月。


23. ルッコラRuccola ロケット

 

 地中海沿岸原産のアブラナ科、英名ロケット,和名はキバナスズシロ。イタリアではルッコラと呼ばれて好まれて栽培され、日本ではイタリア料理の普及と共に広がっている。大根に似た葉をもっぱらサラダ用ハーブとして利用している。茎は70㎝位の大きさとなり、小松菜と同様に盛夏を除いて春から秋まで種子をまいて、約60日で収穫できる。初夏には大根に似た淡黄白色の花を咲かせ、みずみずしい葉をかむとゴマの香りとクレソンに似た辛味が広がる。サラダや肉料理の付け合わせ,スープ,みそ汁の実,お浸しとする。2018年の収穫量は150t、構成比は、①静岡22.0%,②茨城10.7%,③愛知9.3%、そして千葉,奈良,福岡,埼玉,神奈川,群馬…と続く。

 

選び方と保存  花が咲くと味が落ちるのでその前に収穫する。保存は冷蔵庫へ。

旬  4~11月。 

 

24. レモングラス Lemon grass

 

 インド南部原産のイネ科、原産地の気候から高温多湿を好み、10℃以下の低温には弱く、株分けで増やすので、越冬には鉢上げして暖かい室内に置く必要がある。見かけはすすきにそっくりだが、葉と茎をこするとレモンそっくりの香り(シトロネラールという芳香成分)がある。葉がよく茂った夏以降は、使う都度根元から切り取って利用する。消化機能を高め貧血に効く。葉をスープやカレーの香りづけにしたり、ハーブティー,ポプリ,入浴剤とする。また、香水の原料としても栽培される。

 

選び方と保存  淡緑色の細い葉でしみのないもの。保存は秋に葉の部分を乾燥させる。

旬  8~10月。

25. レモンバームLemon balm

 

 ヨーロッパ南部から西アジアが原産のシソ科、レモンのようなさわやかな芳香があり、葉はのこぎり状で、初夏に小さな白または淡紅色の花を咲かせる。名前はレモン+はちみつ(バーム)の意味で、みつをとるための植物として、古くギリシャ神話にもでてくる。鎮静,健胃,強壮作用がある。また、生の葉をもんで傷口に当てると、解毒作用があるので感染予防になるといわれる。サラダ,料理のツマ,ハーブティー,ポプリ(好みのハーブ,花びらを乾燥させて袋につめ、匂い袋とするもの),入浴剤,染め物などにする。

 

選び方と保存  生葉は使うつど摘み取る。保存は開花直前に根元から刈って乾燥させる。

旬  5~7月。  

26. ローズマリーRosemary

 

 地中海沿岸が原産のシソ科の常緑性低木、語源はラテン語の「海のしずく」という説と、聖母マリアが幼子イエスの青いマントをローズマリーの茂みに広げて乾かしていたところ、花の色が青くなったといわれ、この木をマリアのバラ Rose of Maryと呼ぶようになったとの説がある。こうしたことから昔から悪魔よけの魔力があるといわれ、結婚式に花嫁にローズマリーの花束を贈る習慣があり、欧米では庭などに植えて日常的に利用されている。寒さに弱く、関東以北では冬に枯れてしまう。秋から翌夏にかけて青い花を咲かせる。

強心,強壮,鎮静,消化,利尿,美容に効果があり、香りが強く肉のくさみを消すので羊肉,魚のマリネ,バーベキュー,ポテト,シチューなどに小枝のまま使って後に取り除く、使い過ぎに注意が必要。入浴剤として疲労回復にも効果があり、乾燥した葉はポプリにも使う。

 

選び方と旬  松の葉のように細長くて表は深緑色で裏側は銀灰色をしている。固いものを使うつど摘み取る。保存は開花直前に刈り取って乾燥か、オイル,酢に漬ける。

旬  5~9月。