163. ミツバ 三葉

 

 日本原産のセリ科の野菜で、現在では韓国から中国大陸にまで幅広く分布している。元来、森陰や湿地に自生していた野草で、今でも各地に自生している。春の訪れを知らせてくれる芳香が人々を魅了して、野菜化されたもの。栽培が始まったのは江戸時代初期(17~18世紀初)に、東京都葛飾区からである。生育適温は10~20℃で、低温には強いが高温乾燥には弱い。

 

 栄養としてはビタミンA,Cが多く、芳香の成分は炭化水素で熱により失われやすい、調理にはさっと熱を加えて芳香を逃さないようにする。

 

 栽培の仕方によって次のように分かれる。

①糸みつば…青みつばともいい、密まきして茎葉が30㎝程度に伸び、葉も葉柄も緑色の状態で収穫する。かつては関西が栽培の中心であったが、昭和57年(1982年,東京市場の入荷量)を境に関東の切りみつばが労力のかかることから減少したこと。また、ガラス室やハウスを利用した水耕栽培での糸みつばの栽培の確立が拍車をかけ、いまや主流となっている。播種から収穫まで露地で3~4カ月,水耕で50~60日で、周年栽培されている。料理には香りを生かして、吸い物,みそ汁,茶碗蒸しなどにする。

②切りみつば…軟化栽培をしたもので、養成した根株を溝や穴ぐらで遮光(しゃこう)して芽を伸ばし、30㎝位に伸びたころに日光に当て緑化して、切りとって出荷する。こうしてできた切りみつばは、純白の細い軸の頭に鮮緑色の葉をつけ、野菜の芸術品といった品格を備えている。料理には青みつばともども香りを生かして、吸い物,みそ汁,茶碗蒸しなどにする。

③根みつば…養成した根株を、翌春の芽の伸び出すころに土寄 せ軟化をして、新しい芽が広がったとき根ごと掘り取って出荷するもの。このとき、根元から刈りとったものを刈りみつばという。露地栽培が中心で、出回りは春3~5月である。料理はお浸しや和え物のほか、根を天ぷら,きんぴらにする。

 2022年の収穫量は13,400t、構成比は、①千葉20.9%,②愛知14.4%,③茨城12.2%,④埼玉9.6%,⑤静岡9.1%、そして大分,大阪,群馬,福島…と続く。

選び方と保存  葉はみずみずしく緑色の濃いもので黄ばみや枯れ葉がなく、切り口がきれいなもの。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬  糸みつばは10~5月,切りみつばは12~1月,根みつばは3~4月。 

 

ガラス葉

 

 軟白栽培された切りみつばは、葉がすき透る通称「ガラス葉」といわれる状態になることがあり、凍結,凍傷と間違われやすい。とくに北海道などの冬期間の軟白栽培はハウス内の温度を維持するために加湿になりやすく、湿度が昼夜とも90%を超えると発生が増加する。凍結とは違い、葉の細胞の崩壊はないので商品上の問題はない。