164. ミニトマ

 

 トマトは南アメリカアンデス山脈の、ペルー,エクアドル,ボリビア地方が原産のナス科の野菜。最初に栽培を始めたのはメキシコの原住民で、メキシコを征服したスペイン人によってヨーロッパに導入されたが、野菜として作られるようになったのは、18世紀にイタリアで加工栽培として、ついで、19世紀にアメリカで実用栽培が大々的に行なわれてからである。わが国ヘは「大和本草」(1709年)に、唐がき,珊瑚(さんご)茄子(なす)として記載され、その後、明治初年に再導入され赤なすと呼ばれていた。しかし日本人になじめず、昭和になってポンテローザという桃色系品種の導入によって消費が一般化し、栽培も急速に広まった。

 

 ミニトマトはヨーロッパで分化発達したものと思われ、わが国では昭和50年代初めから生産が始まり、消費が増加したのは60年(1985年)頃からである。これは糖度8~10度と甘く肉質が緻密で、しかも完熟させて出荷するので食味がよいことに加えて、鮮やかな色と見た目のかわいらしさが消費者に受けている。フルーツ感覚でサラダや弁当、おやつとして人気があり、年々消費の拡大が図られている。


 2022年の収穫量は157,300t、構成比は、①熊本26.3%,②愛知10.1%,③北海道9.4%,④宮崎5.8%,⑤茨城5.3%、そして,福島,静岡,千葉,長崎,長野,広島,山形,青森…と続く。トマト全体の収穫量が707,900tに対して22.2%を占めるまでに定着している。

 種類には①ペティトマト系,②ペアートマト系(洋ナシ型で、赤いレッドペアーと黄色のイエローペアーがある),③チェリートマト系。ほとんどがこのチェリー系で、食味がよく収量の高い品種が各社から開発されている。タキイ種苗からは千果,ピコ,イエローピコ,小桃、サカタのタネからはアイコ,イエローアイコ,キャロル7,キャロル10,キャロルパッション,キャロルスター,オレンジキャロル,ミニキャロル,キャロルロゼなど。

 

選び方と保存  1個15~20gで鮮やかな赤色がよく、柔らかいものは過熟なので注意。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬  4~5月。

 

アイコ

 

 サカタのタネが2004年に発表した品種で、これは{(ちびまるこ×オランダ系品種)×Santa}×ヨーロッパの中玉トマトの組み合わせ。果実中のゼリー分が少なく果肉が厚く、甘味が強く、多くのガンなどに予防効果があるといわれる抗酸化物質のリコピン含量を既存品種の約2倍含むプラム型ミニトマトである。形状がプラム型のため口に入れやすく、食べた際に果汁が飛び散りにくい。うまみ成分のグルタミン酸含量が高く、生食以外にも煮る,焼くといった加熱調理などにも幅広く対応できる。黄色のイエローアイコも発売されている。

   

千果 ちか

 

 タキイ種苗が1999年に発表した品種、これはココ×(ココ×ペペ)の組み合わせで、果実は15~20gのきれいな球形。濃い赤色で美しい光沢があり、糖度は8~10度と高く安定して、果肉は厚く緻密で食味がとくにすぐれる。リコピン含量は大玉トマトの3~4倍と多く含まれている。

 

*ココ…タキイ種苗がアメリカから導入のSweet100×{(ぺぺ×桃太郎)×ぺぺ}として、1996年に発表した品種。

*ぺぺ…タキイ種苗が(L.pimpinellifolium×Vemone)×アメリカから導入のSweet100として、1987年に発表した品種。

 

キャロル10

 

 サカタのタネが2000年に発表した品種で、これは(ちびまるこ×オランダ系品種)×{(ハッピーロード×Oregon Spring)×キャロル7}の組み合わせ。果実は10~15g、果色が鮮やかで見栄えがよく果皮が薄いので口に残らず食べやすい。果肉は厚く高糖度で食味がよく、日持ちもよい。

 

*ハッピーロード…サカタのタネが{{(OhioMR×FloridaMH)×LS89}×愛知ファースト}×(米国系品種×ファーストメモリー)として、1992年に発表した品種。

*キャロル7…サカタのタネが{(チェルシーミニ×ジョイント)×ミニキャロル}×{(チェルシーミニ×ジョイント)×レッドペア×ミニキャロル}として、1990年に発表した品種。

 

シシリアンルージュ Sicilian rouge

 

 加熱調理用のミニトマトで、パイオニアエコサイエンス社とイタリアの育種家マウロ氏が、トマトの本場,地中海に浮かぶシシリア島南部のパッキーノ地方で育種開発をし、2005年より国内で販売している。シシリア島(Sicilian)の女神・ビーナスの口紅(Rouge)から連想し、その名前がつけられた。果形は縦長で果重は20~30g、果色は鮮やかな赤色で果肉が程よくやわらかく、ゼリー部分が少ないために煮込みや味付けが短時間で出来る。旨み成分のグルタミン酸が豊富で、しかもオリーブオイルを果肉の中に取り込むと濃厚な味わいになる、湯むきをしたシシリアンルージュをフライパンで塩とオリーブオイルで炒めるだけで、おいしい一品となる。もちろん、糖度(8度前後)と酸味のバランスがよく、生食でも美味しい。2010年に生食,調理兼用のロッソナポリタン、生食用のピッコラルージュ,ピッコラカナリア,ルージュドボルドー,トスカーナバイオレットなどのアイテムが追加発表された。

 

サンマルツァーノ Sun Marzano

 

 イタリア,ヴェスヴィオ火山の麓(ふもと)にあるサンマルツァーノ村は、ミネラルと有機物を豊富に含んだ土壌と海に近い塩気を含んだ温暖な気候で、ここで生まれた加工用のトマト。果重は80~100gで細長く肉厚で、甘みと酸味のバランスのとれた水分が少ない優良な品種で、イタリア料理のパスタソースなど加熱すると独特のうまみが出てこの上なく美味しい。

 

戦後、このトマトの疫病が広がり生産量が激減、加えて、病気に強くて機械化に適したハイブリッド種の登場によって、ほどんど消滅しかける。その後 長い時をかけて復活への試行錯誤が繰り返され、サン・マルツァーノ・ディ・アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノの管理組合が出来たのは、1999年のことでした。