170. モロヘイヤ  Molokhiya

 

   原産地はインド西部で、麻に近い仲間のシナノキ科。現在ではエジプトを中心に、中近東,アフリカ,フィリピンなどで広く栽培されている。その昔、エジプトのある王様が病気で苦しんでいたときに、医者はモロヘイヤのスープを飲むように勧めた。そのおかげで王様はめでたく全快、それ以来「王様の野菜」といわれてきた。わが国へは1980年ころから導入が始まり産地化が進められている。

 

   発芽適温は28℃,生育適温は25~30℃程度と高温を好み、耐暑性は強いが5℃以下では生育が止まる。高温では非常に生育が早い。葉を収穫するときには伸びている枝を15cmくらいの長さで切り取っていくとわき芽がたくさん出て枝分かれをしていく。昔から栄養豊富な野菜といわれており、従来の緑黄色野菜をはるかにしのぎ、これから普及が見込まれる。ほうれんそうと比べた時に、骨粗鬆(こつそしょう)症に効果のあるカルシウムが9倍,老化防止に欠かせないビタミンEが5,6倍,Cが2,6倍,ガンや成人病を予防すると注目されているAが4,7倍、さらに食物繊維も多い。但し、シュウ酸も多いので料理にはゆでるなどの注意が必要となる。実(み)には強心作用があり牛などに飼料として与えると中毒死の危険がある。

   クセのある香りや味はなく、刻んだり加熱すると強い粘りがでてくる。エジプトではスープに入れることが多いが、わが国ではみそ汁やさっとゆでてお浸しやごま和え、酢みそ和えに,オムレツや春巻き,ギョウザの具,炒め物,天ぷらにしてもおいしい。コロッケやハンバーグ,クッキーやパンの中に、そして白玉だんごの粉に入れても鮮やかな緑色のだんごとなる。また、葉を洗って乾燥させ細かく砕いてふりかけにする。

2020年の収穫量は1,090t、構成比は、①群馬26.4%,②沖縄16.1%、そして岐阜,神奈川,宮城,佐賀,兵庫,長崎,宮崎,三重,香川…と続く。

選び方と保存   シソの葉に似たきれいな緑色が特長。保存はポリ袋に入れて冷蔵庫へ。

旬   7~9月。

 

モロヘイヤの毒性

 

 モロヘイヤの種、成熟した種子の莢さやには強心配糖体(強心作用・心筋の収縮力を高める)が含まれていて、めまいや嘔吐おうとなどの中毒を起こすので、絶対に食べてはいけない。長崎県で1996年、実の付いた枝を食べた3頭の牛が命を落としたことで種子に強い毒成分が含まれていることが判明した。ただ、収穫期の葉には含まれない。家庭菜園などでモロヘイヤを栽培するときには、収穫時期に十分留意し、種子や莢が混入しないよう注意が必要です。